[奈文研コラム] 文化財とPCR

文化財分野でのDNA解析

 2019年末から続くコロナ禍の中で、「PCR」という言葉をよく耳にするようになったのではないでしょうか。鼻の粘膜や唾液などを採取し新型コロナウイルスへの感染の有無を判断する、いわゆる「PCR検査」として聞き覚えのある方も多いと思います。実はこの「PCR」と呼ばれる技術は、文化財分野でも利用されています。

 PCRとは、正式には「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」といい、目的とするDNA断片だけを短時間で指数関数的に増幅させることができる反応または技術を指します。DNAを構成するヌクレオチド鎖は、加熱されると二本鎖から一本鎖に分かれ、冷却されると結合するという特性を持っており、PCRはこの特性を利用しています。具体的には、次のようなサイクルによって行われています。

① DNAを加熱(95℃程度)し、二本鎖を一本鎖に分離する。
② 一本鎖DNAを冷却(60℃程度)し、プライマー(DNAの合成に必要となる短いヌクレオチド鎖)と結合させる。
③ 再度加熱(72℃程度)し、DNAポリメラーゼと呼ばれる酵素の働きによってプライマーから先のDNAを合成する。

 以上の①~③までのサイクルを30回程度繰り返すことで、目的のDNA断片を増幅させることができます。PCRの開発によって、ごく微量なDNAであっても分析が可能となる十分な量まで増幅させることができるようになり、現在では医学や分子生物学など様々な分野で応用されています。文化財分野もそのひとつとなります。

DNA解析の結果
DNA解析の結果

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