『保護猫×宿泊業』で社会問題の解決策を提案!! コロナ禍だからこそ生まれた逆転の発想。地方創生担当大臣賞を受賞した安藤さんにインタビュー!
地方創生☆政策アイデアコンテストは、地域経済分析システム(RESAS:リーサス)やV-RESASを活用した課題分析に基づくさまざまな政策アイデアを募集しています。
2021年度の高校生・中学生以下の部において地方創生担当大臣賞を受賞したのは、愛知高等学校2年生の安藤愛菜さんです。
不動産業や宿泊業の需要低迷によって生じた空き部屋を保護猫のデモ・トライアル の場として活用するアイデアを提案した安藤さんに、当コンテストへの応募のきっかけや受賞後の活動についてお話を伺いました。
地方創生☆政策アイデアコンテスト2021へ応募したきっかけ
安藤さんは現在2匹の猫を飼われており、猫を通じて保護猫団体とも出会いました。保護猫を飼う選択肢を広めて殺処分をゼロにしたいという強い思いが、当コンテストへ応募するきっかけになったそうです。
弟も受賞したコンテストを父から勧められて応募
安藤「実は去年、弟がこのコンテストで同じ賞を受賞しているんです。」
――弟の大翔さんは、昨年度の中学生・高校生以下の部において、放置自転車を活用した「水上のサイクルツーリズム」で名古屋の観光を活発化するアイデアを提案し、地方創生担当大臣賞を受賞されていますね。(地方創生☆政策アイデアコンテスト2020:https://contest.resas-portal.go.jp/2020/prize.html)
安藤「はい。保護猫に関わるボランティアを始めた頃に、父からこのコンテストへの応募を提案され、やってみようと決意しました。」
――RESASを通して知った愛知県の人口減少や宿泊業の需要低迷といった課題に、保護猫という課題をかけあわせたのが安藤さんのテーマでした。安藤さんのなかではどちらの課題をより重要視していますか?
安藤「私が重要視したのは保護猫に関する課題ですが、ニュースなどで宿泊業の低迷が問題に挙げられているのもよく見ていました。それらを掛け合わせて、猫も幸せになれたら一番いいなと思いました。実は、今回応募したことでほかのコンテストにも興味を持つようになりました。いろんなコンテストに応募することで、保護猫を飼うという選択肢を日本中に広めていきたいです。」
保護猫団体との出会い
――安藤さんは現在、猫を2匹飼われていますが、もともと「猫を飼いたい」という気持ちは強かったのでしょうか?
安藤「昔から猫を飼いたいと思っていましたが、以前はウサギを飼っていました。友達のところにウサギの赤ちゃんが生まれて、そこから飼い始めた子です。その子をお世話しているところを見て、両親が『猫も飼っていいよ』と許してくれたんだと思います。」
――幼い頃から動物に触れる環境があったのですね。ペットショップからではなく保護猫を飼い始めた経緯を教えてください。
安藤「1匹目は、母が働いている職場の方から『近くにいた野良猫のお母さんが亡くなり、子猫だけが残ってしまった』という情報をいただき、飼うことになりました。まだ猫がすごく小さいときでした。2匹目は保護猫団体からです。両親と弟が『2匹目を飼う』と話していて、まずはトライアルとしてうちに来たんですが、私としては偶然出会ったという感じです。」
保護猫団体を通して「自分事」としてとらえた課題をアイデアに生かす
保護猫を引き取ったことで保護猫団体に興味を持ち、ボランティア活動を始めた安藤さんは、保護猫にまつわる課題を目の当たりにしました。プレゼン資料をまとめるにあたっては学校の授業での経験が役立ち、ご家族にも助けられたそうです。
保護猫団体でのボランティアを通して感じた課題
――実際に保護猫を引き取ってみて、保護団体にも興味を持たれたのですね。
安藤「はい。保護猫団体ってどういうことをしているのか、譲渡会ってどういう雰囲気なんだろうかと気になり、実際に行ってみました。保護猫団体の負担を減らせればと思い、ボランティアを始めました。」
――すばらしい行動力ですね。今回、審査員の方たちからは「安藤さんは保護猫に対する課題を自分の問題としてとらえて取り組んでいた」という講評もありました。自分事として強く思えたきっかけは何でしたか?
安藤「きっかけは保護猫団体を主催している方のお話を聞いたことです。また、譲渡会に来てくださる方たちにもお話を聞いて、実際に保護猫を飼うにはいろいろなハードルがあると知りました。それも含めて、保護猫の良さを知ってほしいです。」
――実際に保護猫団体の活動に参加して、どんなことが課題だと知り、今回の提案に至ったのでしょうか?
安藤「その保護猫団体では沖縄で保護された猫たちを名古屋で引き取り、譲渡会を行っていますが、猫の数がどんどん増えていることもあり負担は大きくなっています。譲渡会に来ているほかの団体さんにお話を聞いても、同じような課題があるとわかりました。これが解決できたら保護猫団体さんのためにもなるし、猫のためにもなると思いました。」
データの活用に苦労した
――プレゼン資料には海外の事例なども掲載されていましたが、アイデアを資料としてまとめるうえで大変だったことはありますか?
安藤「海外の情報は、父が保護猫に関する記事を教えてくれるので、そこから引っ張り出してきました。あと、収支計算は初めてで難しかったので、両親に助けてもらいながらやりました。」
――当コンテストはRESASのデータを活用することが応募条件のひとつですが、RESASは有効に使えましたか?
安藤「資料の導入部分ではうまく使えましたが、アイデアを深掘りするうえでもう少しうまく活用できればよかったなと思います。高校の総合探究という授業でも野良猫に関するテーマを取り上げたのですが、データのまとめ方やプレゼン資料の作り方は同じ感じだったのでスムーズに作れました。」
――学校生活とコンテストへの応募を両立するのは大変ではありませんでしたか?
安藤「あまり大変だったイメージはないです。逆に、息抜きになって良かったかもしれません。」
――プレゼン資料を作るにあたって、心がけたことはありますか?
安藤「最初に書きたいことを全部書いてしまったので、できるだけ短くしてわかりやすくすること、口頭で話すのを前提に文章量を削減することを意識しました。家族に助けてもらいながら『ここは減らして、ここは口頭で言って』という感じで大事なところだけをまとめました。」
受賞後の反響やご自身の変化
――地方創生担当大臣賞を受賞したときのお気持ちはいかがでしたか?
安藤「まさか本当に取れると思っていなくて。自分のやりたいことを題材にしていたので、受賞できて家で大喜びしました。」
――受賞したことで、学校や周囲の方からはどのような反響がありましたか?
安藤「学校では理事長から声をかけてもらって、今やっている活動や受賞の報告、これからどういう活動をしていきたいかなどをお話しました。学校の広報やホームページにも載せてもらっています。あとは保護団体の方にも受賞を報告したら、みんなに『すごい!』と言ってもらいました。」
――大きな反響があったんですね。安藤さんご自身のなかで何か変化はありましたか?
安藤「このアイデアを考えながら、『起業するのも楽しそうだな』と思っていました。大学はもともと心理系に行きたいと思っていましたが、起業や経営を学べる大学もいいなと思うようになり、自分でも変化があったなと感じています。」
受賞後の活動やこれからの課題
――アイデアの実現に向けて、受賞後に取り組み始めた活動はありますか?
安藤「今は環境省の方にお話を聞く機会が持てればと思っています。譲渡会のお手伝いも継続していて、そこでアンケートを取らせてもらうなど、起業を見据えた活動にも取り組んでいます。」
――実現に向けて、課題だと感じていることはありますか?
安藤「アイデアを提案した時点では、実際に宿泊業をしている方にはお話を聞けていなかったので、今後はそういう不足していた情報を埋めていきたいですね。法改正だけでなく、野良猫の情報を開示して数を減らしたり、去勢手術や避妊手術を広めたりするには官公庁も含めいろんな方の支援が必要です。そのあたりの課題をどんどんクリアしていきたいです。」
受賞者からのメッセージ
――最後に、地方創生☆政策アイデアコンテスト2022への応募を検討されている方に向けてメッセージをいただけますか?
安藤「私は自分のやりたいことを提案しました。将来の夢につなげようと決心したのも、このコンテストがきっかけでした。自分が将来やりたいことを発揮してそこにつなげたいと考えている人は、ぜひ応募してもらいたいです。」
――ありがとうございました。