アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2020年4月~6月
世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2020年第2四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1)自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/219845/att_219845_1.pdf
サマリー
・2020年第2四半期は主に新型コロナウイルスの影響により、全てのアジアの国々で昨年同期比で求人減。
・いち早く新型コロナウイルスの収束の兆しが見えた中国では、対前四半期比で求人が149%と大幅増。
・アジア各国の新型コロナウイルスの影響は国により状況が異なるものの、インドを除き全体的に経済活動が回復基調にあるため、第3四半期以降は転職マーケットも徐々に回復が見込まれる。
■マレーシア■■
第2四半期は求人凍結、面接の延期等の影響が出たものの、求人は回復傾向に
求人数
対前年四半期比 56%
対前四半期比 53%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
3月18日の移動制限令(Movement Control Order)に基づき移動制限や事業の操業停止など多くの制限が実施されました。その後段階的に緩和され、8月31日までは回復期間(Recovery MCO)に入っています。総額2,600億リンギの給与補助金制度経済刺激策もスムーズに実施され、政府の一連の対応は概ね良好な評価を得ています。一方で、1990年以降で最悪の水準となった4月の失業率5.0%(マレーシア統計局)が今後悪化する可能性があり、中銀は7月以降の景気刺激策として、政策金利を過去最低の1.75%に引き下げました。
企業の採用動向
移動制限令(MCO)期間中、企業から受託済みの求人は、第2四半期に入り25%が採用凍結、または最終面接の延期となりました。回復期間(RMCO)に入り経済セクターにおける制限が大幅に解除された結果、採用凍結の案件はほぼなくなり、また企業からの新規求人も直近では増加基調にありますが、求人総数では前年同期間比で44%の減少となりました。採用に積極的なのは、医療機器・製薬、化学、FA(ファクトリーオートメーション)、ロジスティクス、SSC(シェアードサービスセンター)/BPOなどです。職種では業界を問わず営業や事業開拓、ロボティクスのエンジニア、デジタルマーケティング、ITではJavaデベロッパーやブロックチェーンなどの要請が強まっています。一方で新卒を含む若手人材は需要が減速しています。基本給別求人数では7000リンギ以上のいわゆるマネジャー職が前年同四半期では全体の25%でしたが、今期はほぼ50%となるなど、コア人材への採用シフトが顕著です。
求職者の動向
移動制限令(MCO)に入ってもマレーシア人、日本人の転職希望登録者の動向に大きな変化は見られません。各企業の業績が悪化している中、現職に留まる保守層がいる一方で、これを機会に新たな展望を開こうとする求職者が拮抗している状況と言えます。ITやeコマース業界の求職者は、より一層市場での需要が高まっていることもあり転職意欲が高くなっています。日本在住のマレーシアでの就業希望者については、現在マレーシアへの入国が出来ない状態が続いており、転職先を日本国内に切り替える方も出てきています。内定者については、まず日本の本社で勤務もしくは渡航前研修を実施する等の対応を取る企業も増えています。
■シンガポール■■
新型コロナウイルスの影響を大きく受けるも求人は緩やかに回復の兆し
求人数
対前年四半期比 52%
対前四半期比 55%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 イルマス 純
新型コロナウイルスの影響は4月に入ってから顕著に表れ、シンガポール貿易産業省(MTI)は2020年の経済成長率をマイナス4~7%の見通しと予想しました。4月初旬のサーキットブレーカー(外出禁止令)の発令により、生活必需産業以外のすべての業種は特別な許可が無い限り在宅勤務を余儀なくされ、小売業や飲食業を含むサービス業界は営業制限により売上に深刻な影響を受けました。建設業界では作業員の宿舎でクラスター感染が起こり、感染拡大防止のため作業員に自宅待機命令が出され全ての工事が見合わせとなるなど、影響が出ています。失業率に関しては今後大幅な悪化が予想されます。政府は雇用確保を政策の第一に掲げておりますが、いまだ先行きの不透明感はぬぐえません。
企業の採用動向
多くの企業が採用活動を一時保留としたため、転職市場は大幅に鈍化しました。また、サーキットブレーカー発令中は政府の方針により国外からのビザ取得が一旦停止され、採用に逼迫した一部企業は国内人材の採用へと方針を切り替えるなど対応に追われました。新着求人数はサーキットブレーカー解除後、6月上旬から徐々に回復しています。経済活動も段階的に緩和へと向かっており、停滞の遅れを取り戻すべく多くの企業が採用活動を再開し始めています。また、国外の候補者のビザ取得の制限も解除されたことから、企業の採用温度も徐々に戻りつつあります。
求職者の動向
シンガポール人候補者の多くが、4~5月は積極的な転職を控えていた影響から登録者数は前年同時期に比べ1-2割ほど減少したもの、6月のサーキットブレーカー緩和後に徐々に回復しています。日本人候補者の登録は第2四半期前半は減少傾向でしたが、後半にシンガポール国内在住者も含め増加しました。登録の動機としては、新型コロナウイルスの影響により属している業界の将来性の不安や、この時期にさまざまなことを考えた結果、これを機にキャリアチェンジ、キャリアアップを図るために登録した求職者などの意見が多くありました。オンライン面接が浸透し、現職中でも柔軟なスケジュール調整が可能となったことも特徴的な変化です。
■タイ■■
新型コロナウイルスの影響により、求人数は感染拡大前と比べ約半減に
対前年四半期比 62%
対前四半期比 56%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
タイ王国は、新型コロナウイルスの累計感染者数が約3000人と比較的少なく、経済を犠牲にして感染拡大を抑え込む取り組みを行ったと言えます。第2四半期は感染者があまり出ない日が続いたものの、未だに非常事態宣言は解除されず日本より厳しい規制が継続されています。この判断による内需の落ち込みに加え、世界経済の影響や移動の制限により打撃を被りやすい主要産業(自動車産業、観光産業など)の大きな落ち込みは、年内には回復しないと各産業界では予想されています。結果として、各種経済指標の落ち込みはリーマンショック時を超えている状況です。
企業の採用動向
6月の中旬から在宅勤務が解除され徐々にオフィス勤務が増えたものの、企業の採用意欲は様子見の状態が続いています。また、在タイの欧米系の企業の採用活動は本社所在国政府のコロナ対策による影響を強く受けており、日系以上に鈍化状態が続いています。一方で、5G対応のためのエンジニアなど引き合いの強い一部の職種もあり、オンラインで全ての面接等の採用プロセスを完了させる動きも一部の企業で出始めています。
求職者の動向
新型コロナウイルスの影響により、転職はしばらく様子見する意識が依然として高く、多くの転職希望者の意欲は低い状態です。また、日本在住の日本人など、タイへの入国を伴う転職がビザ取得関連手続きの関係で、7月に入っても事実上難しい状態が継続しています。日本からタイに駐在勤務する前提で採用された人材は、一時的に日本国内で勤務を始めたり、入社直後から在宅勤務などの例も少しずつ出始めており、通常とは異なる柔軟な発想を企業・転職者共に持つ、ニューノーマルと言える状況が生まれています。
■インドネシア■■
新型コロナウイルスの影響で、日系企業の求人数が大幅減
求人数
対前年四半期比 37%
対前四半期比 25%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵
3月にインドネシアで新型コロナウイルスの感染者が出たことが報じられ、交通機関、オフィスやレストラン、ショッピングモールなどで、PSBB(大規模な社会的制限)という営業規制が敷かれましたが、6月半ばより基本閉鎖規制されていたオフィスも、人員を半分にすることを条件に活動が許可されました。しかし、規制緩和と共に感染者数は再び増加し、7月初旬現在、状況を見守りながら経済を徐々に活性化している状況です。
就労ビザ・滞在ビザ保持者の入国はPCR検査等を条件に許可されていますが、外国人のVisa On Arrival(到着ビザ)の発行はいまだ停止状態です。新規ビザの発行は投資調整庁のレター(推薦状)があれば申請可能ですが、発行までに時間を要するため外資系企業の活動に影響を与えています。
企業の採用動向
第2四半期は、インドネシアの日系企業の主要産業である自動車会社が工場を閉鎖し、国内外需要の減少も受け、関連業界各社が影響を受け人材の採用を停止する動きが続きました。6月にJETROが行った調査によると50%の日系企業が駐在員を帰国させる動きがあった他、内定を出した候補者の入社日がそれにより延期される、またはビジネスの見通しが立たないことを理由に採用活動の停止も相次いだ一方で、現地ローカル企業や韓国企業の採用は続きました。求人数も日系企業では25%まで減少しましたが、非日系企業では半減にとどまりました。前述のJETROの調査では、帰国させていた駐在員は3ヵ月後にインドネシアに再度赴任させると回答する企業が6割あり、また7割の企業がインドネシアへの投資戦略を変更する予定はく、1割は拡張すると回答しました。6月末より徐々に求人数の増加が見られますが、今後の新型コロナウイルスの状況に応じ、採用活動は臨機応変に行うことが考えられます。
求職者の動向
新型コロナウイルスの影響で事業の閉鎖により離職、または雇用契約終了となった登録者が増える一方、インドネシア人候補者は転職のリスクを避け、現在の会社にとどまる意向を見せています。
■ベトナム■■
経済が活性化し始め再び成長の兆しを見せるが、未だ求人数の回復には至らず
求人数
対前年四半期比 69%
対前四半期比 54%
JAC Recruitment ベトナム法人 ディレクター 桑田 聡
新型コロナウイルス発生後、世界銀行は今年のベトナムのGDP成長率を2.8%と予想し、ベトナムのフック首相は今年のGDP目標成長率5%を掲げました。2019年のベトナムのGDP成長率は7.0%と、今年は昨年を下回るものの、世界経済のマイナス成長が見込まれる中でも引き続き成長を予想しています。新型コロナウイルスの感染拡大は収束を見せ、ベトナムの街には日常が戻っており、経済の早期回復に向けて動き出しています。
企業の採用動向
経済は回復基調にあるものの、採用数はまだ新型コロナウイルスが発生する前の状態には回復していない状態で、特に採用が停滞しているのが製造業とサービス業です。製造業では特に自動車関連や縫製系の工場は稼働率を下げざるを得ない状況でした。また、サービス業ではホテル、旅行、飲食を中心に大きな打撃を受け、中には人員整理を行う会社もあるなど、製造とサービス業界では採用のニーズが停滞しています。一方でIT業界では比較的人材の採用に積極的です。コロナ流行前後で、採用動向に大きな変化がありませんが、第3四半期以降はビジネスの減速を予想するIT企業もあり、今後の動向を注視する必要があります。
求職者の動向
ベトナム人の求職者の動向は、職種・業界によって異なります。新型コロナウイルス発生後、やや慎重な姿勢を見せているのは主に営業従事者です。以前よりも先行きの見通し立たないことから、今後も商材が売れ続けるのか、という点を気にする求職者が一定数存在します。一方で、ITエンジニアは活発に活動をしています。
現地在住の日本人の求職者については、コロナ発生前よりも増加しています。一方で日本在住のベトナムでの就業を希望する日本人は、新規の労働ビザが取得できない状況が続いており、内定を得てもベトナムに渡航できないため、渡航の時期を延期するケースも発生しています。
■中国■■
新型コロナウイルスからいち早く収束しつつある中、対前期比で求人数が急速に回復
求人数
対前年四半期比 52%
対前四半期比 149%
JAC Recruitment 上海法人総経理 小梁川 舞香
北京で新型コロナウイルスの第2波拡大が懸念されつつも、中国全土での感染状況は抑えられている状況です。一方、全体的な経済活動は自動車販売を除き消費の戻りはやや鈍く、年間の成長率はゼロに近いと予測されています。一方、依然継続している中国への入国管理強化策により、およそ1300人の日系企業駐在員が華東地域に入国が出来ない状況です。「緊急ビザ」の申請は可能であるものの「中国の産業に貢献できる」と判断された人物のみに発給可能と限定的です。政府による「放水養魚(企業負担軽減)」は、継続して適用しています。
企業の採用動向
企業の採用動向は依然慎重な状態が続いています。全体を通して欠員補充以外の求人は非常に少なく、外資系企業では依然として採用凍結の状態が続いています。一方で、民営企業(特にゲームなどのIT業界)での採用意欲は日系企業と比較すると堅調です。求人数の減少に加え、採用コストの削減により採用の基準が高くなっている企業が多い状況です。職種では、営業等の売上に直結するポジションでのニーズが多くみられます。日本人向けの求人については、就労ビザ取得の見通しが立たない、対面面接が不可であることを理由に、既に中国にて就業中であり就労ビザ保持者である事を条件とする、もしくは採用スケジュールを後ろ倒しにする企業が散見されます。
求職者の動向
通常、毎年旧正月明け(1月末)のボーナス後に転職活動を開始する方が多くなりますが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大中であったため転職希望者は減り、4月以降からに回復の傾向が見え始めました。
また、新型コロナウイルスの影響を受けた企業の撤退や縮小による人材の流出も出てきています。一方、企業の業績不振による将来性の不安から、情報収集目的も兼ねた求職者が増加傾向にあります。日本在住の日本人求職者については、渡航が出来ないためオンライン面接を通じて転職活動を行っています。また、本来中国での就業前提の方においては、入国規制の緩和がされるまで日本で就業し、リモートで中国チームと連携するといったケースが多いです。
■香港(中国香港特別行政区)■■
新型コロナウイルスの影響が継続
求人数
対前年四半期比 49%
対前四半期比 72%
JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾
香港内における新型コロナウイルス感染の状況が落ち着きを見せ、継続されていた公務員の在宅勤務が5月初旬に解除されるなど、社会活動が徐々に以前の状態を取り戻す一方、経済状況は非常に厳しく失業率は大幅に増加しています。外国人への入境制限が継続され、また、ビザ保持者の方でも2週間の強制隔離措置のため帰任者・新規赴任者・出張者の移動が困難となりビジネスが滞る企業もあります。政府からの各種助成金が発表されたものの、拠点閉鎖・縮小を検討する企業も出始めています。
企業の採用動向
求人数は前年同期比、前四半期比ともに減少となりました。企業活動の先行きが不透明な状況が続いており、欠員補充等の急ぎの求人以外は採用の延期や停止にする企業が増加しています。事業の効率化やコスト削減のため事業閉鎖を決定したり、製造業は深センや広州、金融機関はインド、シンガポール、東京へと、香港の従業員を削減して移転を進める企業もあります。日系金融機関のボーナス支給後に例年増加する欠員補充のニーズも目立って増加はしておらず、採用の際は人材要件の基準を上げています。また、採用意向はあっても、入境制限のため面接官・候補者のいずれかが移動できないことから採用活動が滞るケースも散見されます。
求職者の動向
現職に問題が無い場合は無理に転職活動をしない傾向が継続しています。その一方で、経済状況悪化の影響を受け、香港拠点の閉鎖や人員削減によって意に反して仕事を探さざるを得ない方、また、先行きを不安視して求人情報収集目的の候補者は一定数存在します。国外の日本人求職者に関しては、香港情勢を懸念しての応募の辞退やオファーを辞退する事例が増加しています。香港人の中には、英国・カナダなど、他国への移住を検討し始めるケースが出始めています。
■韓国■■
新型コロナウイルスが採用活動に甚大な影響を与えるが、欠員補充の採用需要は底堅い
求人数
対前年四半期比 53%
対前四半期比 82%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
韓国政府は新型コロナウイルス感染に対する防疫措置強化の無期限延長を発表しており、7月8日現在、毎日40~60人の新規感染が確認されています。新型コロナウイルスの影響は1月中旬以降経済に大きな影響を与えており、韓国銀行は2020年第1四半期(1月~3月)の実質GDP成長率は前期比マイナス1.4%と発表し、今年度のGDP成長率見通しをマイナス0.2%に下方修正しました。韓国政府はさまざまな支援策を表明しており、国内製造業に対しては事業資金の貸し出しや国内回帰企業への税制支援、物流コスト削減支援等を掲げています。また、2021年の最低賃金は今年度から1.5%増の8,720ウォンで確定されました。
企業の採用動向
第2四半期の企業求人状況は対前期比で18%減、対前年四半期比で47%減と大幅減となりました。事業拡大に向けた求人よりも欠員補充による求人の比率が増えており、募集職種は管理系や技術系より、営業系職種の減少幅が大きいです。また、雇用リスクから正社員採用を契約社員採用へ変更する事例も一部見られます。新型コロナウイルスの影響により、韓国財閥大手各社は需要の減少や生産停止を懸念し、慎重な事業運営を迫られており、今後の取引会社の採用動向に影響を及ぼすことが考えられます。最新の失業率(2020年5月)は4.5%となり、昨年対比で0.5ポイント悪化しました。
求職者の動向
新型コロナウイルスの影響で求人数が減少し、転職活動が難しくなっているため現職に留まる選択をする求職者が増えていると考えられることから、新規求職者は減少傾向です。また、20代や30代の求職者は希望の給与額を多少下げたり、離職中の方は正社員希望から契約社員に妥協して入社を検討するなど、一部の求職者に変化が見られます。ここ数年人気だった日本での就職は難易度が上がっており、計画や検討を取りやめる求職者も出ています。
■インド■■
新型コロナウイルスにより経済活動に大きな打撃を受けるが、
一時採用を停止したIT企業は採用再開の動きも
求人数
対前年四半期比 54%
対前四半期比 63%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄
新型コロナウイルスの感染拡大の予防策として3月末に全土封鎖を始め、経済活動が停止となりました。特に製造業では生産が低下し、サプライチェーンが寸断されるなど大きな打撃を受けました。これをきっかけにリスク分散のためサプライチェーンの見直し、IT分野への投資、素材調達ルートの変更など抜本的これまでの事業を見直し、改善に取り組んでいる企業が多くみられました。インド政府はこれ以上の経済への停滞を避けたいことから、5月下旬より製造業を中心に経済活動の再開に舵を切ったものの、7月7日現在の感染者数は約72万、1日当たりの感染者数は2万人超と急増しており、未だ感染のピークがいつになるか見通しがつかない状況です。州の規定によって異なりますが、従業員の安全確保のため、日系製造業各社の稼働率に制限があること、再度のロックダウンの可能性など先行きの見通しが不透明であることから、各社とも投資には慎重な姿勢を見せています。
企業の採用動向
新型コロナウイルスの影響により今後の見通しがつかないこと、外出禁止命令を政府が発令したことで一時は8割~9割近くの企業が採用を保留にしました。比較的新型コロナウイルスの影響を受けにくかったIT業界については一時的に採用を保留にする企業があったものの、直ぐに採用を再開した企業も多くありました。一方で採用を保留とした割合の多かった製造業でも、リーダークラス以上の採用についてはウェブを活用し最終選考まで進め、最終面接を対面で実施する企業も散見されました。
また、日本人の採用についてはビザの申請を行ったとしても発給時期の見通しが立たないことから、日本で研修を実施してから新型コロナウイルスの状況を見て渡印するなど、企業も採用される側も入社時期を調整する柔軟な対応が求められています。
求職者の動向
新型コロナウイルスの影響で在宅勤務をする方が多いため、自身のキャリアを見つめ直し、日本では積むことができない経験を海外に求め海外での就業を希望される方が昨年よりも増加傾向にあります。また希少価値の高い人材になりたいという意志のある候補者の登録も増えています。一方で新型コロナウイルスの感染状況もあり、「今転職をするべきか」と慎重に構える人材も少なくありません。
インド人については長期間にわたる経済の縮小により、給与カットやリストラが実施されていることもあり、現職の業績を不安視して求職活動を行う人材も少なくありません。ただ、より好待遇の条件を求める傾向は変わらず、現職での昇給後の条件と転職先からのオファー条件を比較しながら転職活動を実施する求職者が散見されます。
■日本(日本企業の海外事業関連求人)■■
コロナショックによる影響は、今後本格化することが予想される
【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)
対前年四半期比 63%
対前四半期比 63%
JAC Recruitment(日本)
海外進出支援室 室長 佐原 賢治
コロナウイルス感染拡大に伴い、政府は4月7日付けで緊急事態宣言を発出し、それにより国内企業の事業活動に急ブレーキがかかりました。サービスや飲食、レジャー、観光などの業界各社は売上が大きく落ち込み、また、繊維・衣料や一部日用品でも急激に需要が減退。また、世界的な自動車の需要減少により、部品メーカーや工作機械メーカーから先行き不安の声が聞こえます。
内閣府と財務省が6月11日に発表した4~6月期の法人企業景気予測調査によると、大企業非製造業の景況判断指数(BSI)はマイナス45.3とリーマンショック後の2009年1~3月期(マイナス42.6)を下回り、1983年の調査開始以来の最低を記録しました。一方、多くの企業において事務部門を中心に在宅ワークが拡がり、オンラインコミュニケーションの急速な普及により、採用面接においてもオンラインで実施する企業が増えるなど人材市場にも影響を及ぼしています。
企業の採用動向
当社が5~6月に実施した企業の中途採用に関するアンケート調査の結果によると、感染拡大に伴いそれまでの求人募集を一部または全て休止した企業の割合が34%と全体の約3分の1に上りました。特に、中堅中小の自動車部品メーカーでは、足元では従来通りの受注が維持され現場は繁忙しているにもかかわらず、先行きの業績に対する不安から新規採用を手控える企業が目立ちます。一方、コロナショックの教訓から、事業ポートフォリオの偏りを脱する新規事業参入や販路開拓に伴う求人は活況です。中でも、医療分野への参入に不可欠な、業界内での経験や専門知識を持つ人材の募集が増加しています。また成長分野である自動車業界への参入を行うため、短期的な不振によって流出する人材を狙った募集も散見されます。
そして、感染拡大に関係なく募集が増え続けているのが高度IT人材で、自動車(CASE)のほか、金融、医薬品など幅広い分野でAI関連の人材が求められたほか、製造業では自動化や省力化を進めるための組込ソフトウエアのエンジニアに対する募集などは衰えていません。
求職者の動向
4~6月の新規求職者(海外事業経験者の登録者)数は、前四半期比166%、また前年同時期比でも124%と大幅に増えています。在宅勤務やオンラインコミュニケーションツールの普及により転職相談の時間と機会が増えたことが要因のひとつと考えられますが、各求職者の動きは慎重で、転職は状況次第という姿勢が目立ちます。また先述の高度専門分野や海外ビジネスなどの知見・経験を有する人材には選択肢も多いことから採用の難易度も高いままで、採用企業においては募集から入社までのリードタイムを長めに想定しておく必要があります。