【名城大学】ITの力でフードロス削減に貢献。オリジナルゲーム「ロスロス」を制作。

名城大学のチャレンジ支援プログラムから生まれたGmashのミッションは、ITを活用してフードロス削減のアイデアを形にすること。経済学部と農学部から集ったメンバー3人が、誰でも楽しめるゲーム制作を通して、社会課題解決にチャレンジしています。「大学SDGs ACTION! AWARD 2023」で準グランプリも獲得した取り組みについてお話を聞きました。

「ITで社会課題を解決する」と強い思いを胸に

2022年の春に、チャレンジ支援プログラムのアワープロジェクトのひとつとして結成されたGmash。経済学部経済学科4年の弘田真一さん、農学部生物資源学科4年の筆谷花さん、農学部生物環境科学科4年の弥永彩純さんのチームです。「ITを使ったアイデアで、フードロスを減らしたい」という目的意識を共有していたという3人。ITへの関心が高まった背景には、チャレンジ支援プログラムでの共通の経験があったといいます。

弘田さん:2年生の後期からチャレンジ支援プログラムに参加し、年度末頃に先輩たちの活動についてお話を聞く機会がありました。その中に、江崎さんというITスキルを活かした活動を起こしている先輩がいて。「これからITで人がつながるIdea×Techというコミュニティーを立ち上げる」という話に興味を持って、そこに参加しました。

弥永さん:江崎さんが「技術がなくても、アイデアがあればものづくりができる」と言っていたのがすごく印象的で。情報分野が専門ではない私にもなにかできるかもしれないとワクワクしました。農学部で得た知識とITのスキルと、ふたつの強みが得られると考えて、私もIdea×Techに入りました。

筆谷さん:プログラミングの経験はなく、どれくらい難しいかも分からないので、なんとなく遠ざけてきた世界でした。Idea×Techでは、スキルのある人たちにサポートもしてもらえると聞いて、最初の一歩を踏み出すきっかけをもらえました。

このようにITによるアイデア創造に興味を引かれていた3人が、「フードロス削減」というキーワードでつながり、アワープロジェクトがスタート。挑戦の方向性は自ずと「IT ×フードロス解決」へと向かっていきました。では、どんな方法で課題解決をするのか。AI、ゲーム、Webコンテンツなど、選択肢はいくつもあります。アドバイザーのひとりである情報工学科の先生やIdea×Techの先輩にも相談しながら検討を重ね、たくさんの人が楽しめるゲームを制作することになりました。

筆谷さん:どうすればフードロスを減らす行動や意識の変化を促せるか3人で話し合いました。ゲームなら、私たちも普段から遊んでいる身近なものであり、多くの人にとって親しみやすい入り口になると考えたんです。

弥永さん:最初は、食品を擬人化してメッセージを伝えるようなものを構想しました。ただ、情報工学部の先生と話すと、自分たちのアイデアは素人にはハードルの高いものだと分かって。いろいろなアドバイスをいただき、最終的には「テトリス」のようなブロックを消していくパズル形式のゲームをベースにしようと決めました。

パズルゲームを通して、フードロス削減のメッセージを発信する。Gmashの提案に対して、他のアドバイザーから「フードロスを解決したいならゲームでなくてもいいのでは?」という投げかけもあったそうです。けれど、「ITの活用とフードロス削減の両方にチャレンジしたい」という3人の意志は強く、自分たちの方針を貫きました。固い決意がプロジェクトを推し進める原動力に。

初めてのゲーム制作。トラブルも乗り越えてアイデアを実現。

こうして2022年7月頃から、プロジェクトが本格的に始まりました。とはいえ、ゲームを制作するのは3人とも初めて。弘田さんはプログラミング経験があったものの、ゲームの開発に用いる環境や言語をさわったことはなく、全員で一から学びました。

弘田:まずはYouTubeの動画を参考に、「テトリス」をつくってみました。参考になるコードを写していって、わからない部分は江崎さんたちに聞きながら理解していく。ほんのちょっとのミスでエラーが出て、自分の思い通りには動かなくなるので、プログラムを書いては直してを今でも繰り返しています。先輩たちのサポートがとても頼もしく、何度も助けてもらいました。

約1ヶ月かけてゲームの基盤となるプログラムが完成し、そこからはGmashオリジナル要素をプラスしていきました。そのまま真似できるお手本はなく、自分たちのやりたいことを表現するのは決して簡単ではなかったようです。

弥永:落ちてくるブロックにタイマーをつけて、食品の消費期限を表現しました。時間内とブロックを消さないと溜まっていくロスゲージをフードロスに見立て、きちんと消費しようというメッセージにつなげたんです。ただ、その機能をどう実装するかは自分たちで考えるしかなくて。あれこれ調べて、試行錯誤を重ねて、ひとつずつ形にしていきました。

筆谷:私たちの技術だけでなく、パソコンのスペック面でのトラブルもありました。ゲームをつくる想定で選んだパソコンではないので、酷使しすぎてみんな壊れてしまって。新しいものに買い換えました。これもひとつの経験ですね。

いくつものトラブルを乗り越え、実際にプレイできるゲーム「ロスロス」ができあがりました。11月の大学祭では、来場者が体験できるブースを出展。小さな子どもから50代の大人まで、多くの人に遊んでもらい、アンケートでは「楽しかった」との回答が96%でした。プレイを重ねるうちに見つかったバグもあり、体験した人たちのフィードバックも得られました。改善点を見つけたら修正を加え、今現在もブラッシュアップが続けられています。

「大学SDGs ACTION! AWARD 2023」で準グランプリを獲得

さらに、Gmashは「大学SDGs ACTION! AWARD 2023」にも出場しました。これはSDGsの達成を目指して活動する若い世代を応援する朝日新聞社主催のコンテスト。日本全国から企画やアイデアを募り、優秀な取り組みとして選ばれると賞金も得られます。「自分たちの活動の成果をなんらかの形で残したい」。そんな思いで、「ロスロス」をPRするための動画やプレゼン資料を作成し、応募しました。結果、全99団体の中で準グランプリ(ロッテ賞)を獲得。今後の活動のための資金も得られました。

2023年春に、チャレンジ支援プログラムとしては一区切りを迎えたGmash。4年生になっても活動は続いています。現在の目標は、2023年中に「ロスロス」のアプリケーションを完成させて、公開することです。もっとこのゲームを広め、子どもたちの食育などにも活用できればと考えています。
今回のチャレンジで、3人それぞれにどんな成長があったのでしょう。

弘田さん:今までは、自分がやりたいことにはひとりで取り組んできました。けれど、チャレンジ支援プログラムを通して、たくさんのすごい人と出会えて。Gmashの活動では、チームでひとつのものをつくり上げ、ひとりではできない挑戦ができました。この経験は、エジニアとして将来に必ず活かせるものだと思っています。

筆谷さん:農学部の枠にとどまっていた2年生の前半までと比べて、自分自身の世界がぐんと広がりました。プログラミングスキルを持つ人たちのロジックは、今まで関わってきた人たちと視点が異なり、すごく刺激的なものでした。意見を交わして触発される機会も多かったです。将来は食品業界で、このプロジェクトで得た知見を活かす仕事がしたいです。

弥永さん:私は生き物が好きなので、動物に関する研究がしたいと考えていましたが、チャレンジ支援プログラムを経て、ITを使い植物の3Dモデルを作成する研究室に入りました。卒業後も、AIによる自動発注で食品ロスを減らそうとしている物流企業で働くことになったんです。このプロジェクトは、私の人生を大きく変えるものになりました。

ITの力に心惹かれたのをきっかけに、オリジナルのゲームで社会課題解決に挑んだ弘田さん、筆谷さん、弥永さん。Gmashの活動は、一人ひとりの未来につながる大きなプラスを生みました。「ロスロス」の進化は今も続いています。完成したアプリケーションが世に出されるのが楽しみです。プレイした人たちに、フードロス削減へのメッセージを発信するとともに、未知の世界へ飛び込むことの大切さも伝えてくれると思います。

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