手術器具管理ソリューション 「Eirthemis(エルテミス)」を発表
ローランド ディー.ジー.株式会社の子会社で、3次元切削加工機や彫刻機などのデジタルものづくりツールを製造・販売するDGSHAPE(ディージーシェイプ)株式会社は、この度、手術器具の保全・管理を包括的に支援するソリューションブランド「Eirthemis(エルテミス)」を立ち上げ、ソリューションシステムを構成する中核ソフトウェアとして、「Eirthemis MD」、「Eirthemis KT」、「Eirthemis BI Manager」の三点を発表いたしますのでお知らせいたします。
Eirthemisはローランド ディー.ジー.の生産現場で活用している「デジタル屋台」(*1)の技術・ノウハウを応用し、全国の病院が直面している手術器具の使用履歴管理や保全作業品質の向上、効率化といった課題解決を目的に国立大学法人浜松医科大学医学部附属病院と共同で開発した手術器具管理ソリューションです。
今回製品化するのは以下の3つのソフトウェアです。各ソフトウェアの詳細は別添の資料をご参照ください。
〇Eirthemis MD(Master file Data base)
作業指示書をデータ化し検索・表示を可能とする基本データベースソフトウェアです。
〇Eirthemis KT(KumiTate)
医療器具個々に刻印された2次元バーコードを利用して個品管理を実現するソフトウェアです。
〇Eirthemis BIManager(Business Intelligence Manager)
Eirthemis MD/KTを運用して得られた様々なデータを見やすく表示するソフトウェアです。
システム運用イメージ
Eirthemis資料
病院での手術器具の保全・管理の現状
現在、手術器具の保全・管理は、手術に必要な器具を「手術セット」として準備し、管理する方法が主流です。しかし、準備すべき「手術セット」は数百種にのぼります。さらに「手術セット」に必要な手術器具は非常に種類が多く、ほとんどの手術器具には型番や製造業者などの器具を識別する標記がありません。そのため、手術器具の特定は作業者の目視判定に頼っています。さらに、それぞれの手術器具には取り扱い方法が細かく規定されていますが、作業の指示は曖昧な標記の紙のマニュアルが主流であり作業品質は作業者の習熟度合いに大きく影響されます。その結果、“作業品質のばらつき”や“取扱不良”により手術器具が正常に使用出来ない、必要な手術器具が準備されていない“セット組間違い”などが日常的に発生しています。これらの事象が手術中に発生すると“手術停止”や最悪の場合“感染事故”につながる可能性もあり手術セットの準備作業は安全な手術を行う上で非常に重要です。器具の特定と取り扱い方法を熟知し全ての作業を安定的に実施出来るようになるためには、最低でも二年程度の習熟期間が必要と言われています。また管理すべき手術器具には識別表記がほとんどないため、病院内で使用されている器具の総数はもちろん使用回数や履歴などの管理がほとんど出来ていません。
手術器具管理ソリューションEirthemisの導入効果
Eirthemisは紙の作業指示書をデジタル化し作業内容の詳細も記載出来るようにしました。世界的に広がるUDI(Unique Device Identification)規制に対応させるため、当社マーキングマシンMPX-95を使用して手術器具に2次元バーコードをマーキングし、自動認識技術を利用して器具の識別と作業指示書の表示を可能とします。デジタル化した作業指示書には手術器具の取り扱い方法を表示させる工夫をしました。これにより作業習熟に依存せず、器具の選別とセット組に必要な作業指示書を表示し、間違いの発生しない作業環境の構築を可能としました。また、Eirthemis導入時にはすべての手術器具にマーキングを実施することで既存在庫の棚卸を行います。これにより、今まで不明確であった病院内の手術器具の在庫総数の把握はもちろん運用を通じて手術器具や手術セットの稼働率などを把握することが可能となり、データを蓄積することで手術器具の在庫最適化を実現し、新規購入器具の削減など経費の削減効果が期待できます。
Eirthemisは、手術器具の管理・保全を作業習熟に依存しない作業環境の実現に貢献します。
病院内 材料部について
Eirthemis開発背景について
近年、国内外の多くの医療機関では、手術器具の使用履歴管理(トレーサビリティ管理)や保全作業品質の向上、効率化といった課題に直面し、解決方法を模索しています。他方、手術器具の流通経路の特定、病院内での使用履歴管理を徹底させようとする規制当局の動きも世界的に顕在化しています。米国では、2014年9月から段階的に全ての手術器具を対象に、手術器具の本体に固有の識別子の表示を義務化するUDI規制が施行されました。米国は2022年までにすべての手術器具・機器にUDI表示が義務化され、表示のない手術器具・機器は流通が出来なくなります。欧州でも2017年に義務化が決定され2027年までにすべての手術器具・機器への表示が義務化されています。日本を含むアジア諸国地域でも数年以内に表示が義務化される見通しです。
今後、手術器具の使用履歴管理や保全作業品質の向上を目的とした手術器具管理は義務化され、手術器具の管理を行うシステムの普及は世界的に拡大していくことが想定されます。
ローランド ディー.ジー.ならびに当社は、これらの動きに対応して、2012年に世界初となるドットピン方式の手術器具への2次元バーコード専用マーキングマシンMPX-90Mを発売し、後継機種となるMPX-95を2016年に発売、日本をはじめ世界各国の医療機関、手術器具メーカーを中心に、2次元バーコードマーキング装置の提案をしてまいりました。当社は、MPXシリーズを提案する過程で、手術後の手術器具・機器の分解・洗浄・セット組・滅菌などの作業が、作業者の経験値に左右される属人的なものに留まっている事例を確認しました。煩雑な作業を伴う多種多様な手術器具の保全・管理に、ローランド ディー.ジー.が生産現場に導入している作業支援システム「デジタル屋台」を応用することで、作業品質および効率を向上させることが出来るのではないかと考えました。
そこで、ローランド ディー.ジー.ならびに当社は、新しい手術器具管理のニーズにこたえるため、2013年頃から国立大学法人浜松医科大学医学部附属病院と、医療現場が抱える手術器具の保全・管理に関する課題解決のため、デジタルマニュアルを活用して手術器具のトレーサビリティ管理を実現する作業支援システムの構築を共同で研究開発してまいりました。
今後の展開について
Eirthemisは300~500床程度の中規模病院へ提案を開始し2019年度からの導入を目指します。事業目標は今後3年間で10病院への導入を目指します。
当面は国内販売に限定して活動し今後、材料部業務だけでなく電子カルテや滅菌機、自動倉庫のほか手術部業務とも連携し、手術器具管理にかかわる幅広い業務の作業支援、管理ソフトを追加ラインナップしていく予定です。
新ブランド「Eirthemis(エルテミス)」について
EirthemisはEir(エイル:古ノルド語で「援助」や「慈悲」という意味を持ち、北欧神話では「最良の医者」でありのちに「医療従事者の後援者」になった女神)とThemis(テミス:古代ギリシア語で「不変なる掟」という意味を持ち、ギリシア神話の「法・秩序」の女神)を掛け合わせた当社が考えた造語です。
当社の企業理念でもある「イノベーションによって未来の暮らしを想像する」を実践するため、医療現場での作業を援助し、安定した作業環境の構築を当社の技術を用いて貢献したいとの思いから創り上げた新しいブランドです。
DGSHAPE株式会社について
DGSHAPE株式会社は、ローランド ディー.ジー.株式会社が30年超に亘って培ってきたデジタルものづくりの技術やノウハウを引き継ぎ、デンタル、メディカル、3Dものづくりの各分野で事業を展開しています。デンタル事業では、歯の詰め物や被せ物を製作する歯科用ミリングマシンや入れ歯の型などを製作する歯科用3Dプリンターが、歯科医療業界のデジタル化を牽引し、世界中の歯科技工市場で急速にシェアを拡大しています。また、メディカル事業では、手術器具のトレーサビリティを確保するためのマーキング装置や手術器具の保全作業を支援する独自開発のシステムを、国内外の医療機関に提案すべく体制構築を進めています。さらに、3Dものづくり事業では、3次元切削加工機や3Dプリンター、彫刻機などのデジタルものづくりツールを、試作品やオリジナルグッズ、ギフト品の製作、教育、デザイン、工作、ホビーなど、幅広い用途に提案すると同時に、IoTやAI、ロボティクスといった次世代デジタル技術を活用したものづくりのあり方を探り、新時代のニーズに適合したデジタルソリューションの開発を進めています。
ローランド ディー.ジー.株式会社について
ローランド ディー.ジー.株式会社は、業務用インクジェットプリンターやカッティングマシンを中心とするデジタルプリンティング事業を展開しています。1台のプリンターで、印刷と同時にイラストや文字などの輪郭を切り抜くことができる「Print&Cut」技術の先駆者であり、広告看板を製作するサイン業界などでインクジェットプリンターやカッティングマシンを展開し、世界トップブランドとして市場をリードしています。近年では、幅広い用途での印刷に対応するUV-LEDプリンターや、布地への印刷に特化した昇華転写方式のプリンターのラインナップも充実させ、デジタルプリンティングの可能性を広げています。一方、1986年から取り組んできた3D事業は、専業ブランドの下で、デジタル化の新たな潮流に対応したものづくりソリューションの可能性を追求すべく、2017年4月、新設子会社のDGSHAPE株式会社に移管しました。
(*1)デジタル屋台について
ローランド ディー.ジー.株式会社が独自に開発したデジタル方式のセル(一人一台)生産システムで、同社工場での生産に採用されています。作業者は、パソコンのディスプレイに表示されたデジタルマニュアルを確認しながら、工程ごとに必要な部品を自動供給する回転ラックから部品を取り出し、指示された電気ドライバーを選択して製品を組み立てていきます。間違った部品やドライバーを使用することがないよう工夫されているだけでなく、各工程で品質検査を実施することで、工程内で品質を作り込んでいます。デジタル技術を活用することで人間の記憶力や注意力をサポートし、高品質と高生産性を同時に達成していることが特長です。各屋台での作業ログデータはサーバ上に保存され、現場管理者が作業進捗を把握したり、データ解析を通じて改善活動につなげたりすることができるようになっており、個別の屋台の管理だけでなく、工場全体の生産を最適にコントロールできる点も大きな特長です。
お客様のお問い合わせ先
DGSHAPE株式会社 新事業企画室
〒431-2103 静岡県浜松市北区新都田1-6-4
担当 : 矢澤(やざわ)
TEL : 053-424-6062
E-Mail: eirthemis@dgshape.com