「Future Computed:人工知能とその社会における役割」 日本語版の提供開始  AIが雇用に与える影響に関する調査結果を公開

 日本マイクロソフト株式会社は、本日より、AIの方向性と、倫理など社会的な課題に対する見解を述べた書籍「Future Computed:人工知能とその社会における役割」日本語版を、当社サイトから無料で提供開始したことを発表します。
(こちら: https://news.microsoft.com/uploads/prod/sites/47/2018/05/The-Future-Computed.pdf )

 あわせて、2018年2月に、アジア太平洋の15ヵ国・地域、1,560人のビジネスリーダーに対して実施した調査から、今後3年間で85%の雇用がAIなどにより変化するとの結果を公開しました。

「Future Computed:人工知能とその社会における役割」

 人工知能(AI)が普及することで、企業の生産性向上とイノベーションの加速を促し、社会における最も難しく長期的な課題である、疾病、飢饉、気候変動、自然災害の解決につながることが期待されています。

 既にアジア太平洋地域の多くの組織において、AIは明確な経済的な恩恵をもたらしています。

 たとえば、グローバルな海運業大手OOCLは、AIを自社のビジネスに適用することで年間1,000万ドルのコスト削減を実現(※1)しています。また、インドのApollo Hospitalsは患者における心臓病の発生の予測のためにAIを活用(※2)しています。

 AIがもたらす恩恵について驚嘆するのは当然として、その破壊的影響、特に雇用の減少に対する影響についても考慮しなければなりません。実際、アジア太平洋地域のCEOや政府機関のリーダーの皆様との議論で常に挙げられる重要議題はAIのワークフォースに対する影響です。

 メーデーがある今週は、AIが労働にもたらす広範な影響を検討し、AIがもたらす社会への悪影響がその恩恵を上回ることがないかを自らに問うための良いタイミングになるでしょう。

AIが作る未来における雇用

 まず大局的視点から見てみましょう。いかなる産業の革新においても大規模な破壊的変化が課題になります。250年間にわたるテクノロジの変化から明らかになったことは、テクノロジが雇用の創出、減少、進化に大きな影響を与えるということです。たとえば、私が初めて就職した時、オフィスにはたくさんのタイピストがいることが通常でした。明らかに、パーソナルコンピューティングの普及により今日のオフィスではタイピストは必要なくなりました。AIの発展も同様に雇用の形を変えていくでしょう。

 最近、マイクロソフトは大手テクノロジアドバイザリ企業であるIDCの協力により、アジア太平洋地域におけるデジタルトランスフォーメーションの影響を評価しました。“Unlocking the Economic Impact of Digital Transformation in Asia Pacific(※3)(アジア太平洋地域のデジタルトランスフォーメーションの経済的影響を最大化する)”というタイトルの報告書では、アジア太平洋地域の15の経済圏の1,560人のビジネスとITのリーダーへの調査を行っています。これにより、今後3年間にアジア太平洋地域の雇用の85パーセントが変革の影響を受けることが示されています(下図参照)。

グラフ

 調査結果をさらに詳しく見てみると、回答者は雇用の50パーセント以上が新たなポジションに再展開されるか、デジタルトランスフォーメーションに向けて再教育されることになると回答しています。本調査で興味深い点は、雇用の26パーセントがデジタルトランスフォーメーションによって創出されることで、アウトソースまたは自動化されるであろう27パーセントの雇用が相殺されているということです。すなわち、ワークフォースに対する全体的影響は概ね中立的です。

 企業の組織作り、人々の求職の方法、求められるスキルが劇的に変化していくという明らかな兆候があります。おそらく、今後10年間にこの変化はさらに加速していくでしょう。

 AIによる仕事の特性の変化が続く中で、人々が将来の職業に向けた準備を行い、企業が成功のために必要な人材にアクセスできるようにするために、私たちは教育、スキル、研修について再考していく必要があります。そして、従来型の雇用モデルが変化する中で、新しい働き方に備えて法的枠組みを最新化し、労働者への適切な保護と社会的セーフティネットを提供していく必要があります。

共により良い未来を創る

 AIがもたらすこの難題を政府そして企業のリーダーが理解するために、プレジデント兼最高法務責任者のブラッド スミス(Brad Smith)とMicrosoft AI and Research Group担当エグゼクティブバイスプレジデントのハリー シャム(Harry Shum)の監修により最近出版された“Future Computed:AIとその社会における役割”を一読されることをおすすめします。
今般、同書の日本語版の無料ダウンロード提供を開始しました(※4)。

 同書は、AIとその仕事と雇用への影響について以下の3つの結論を述べています。

 第一に、AIの競争で最も有利になる組織や国家は初期導入者です。その理由は単純です。AIは知性が求められるあらゆる領域で有用であり、ほぼすべての人間の営みにおいて生産性を向上してくれ、経済成長をもたらすからです。簡単に言えば、新たな雇用や経済成長はこのテクノロジを取り入れる者にもたらされるのであって、それを拒絶する者にもたらされるのではありません。

 第二に、AIが多くの点で日々の生活を向上し、重大な社会的問題の解決を支援してくれると考えられる一方で、それがもたらす課題を無批判に見ることはできません。AIの展開と同様に重要なのは、強力な倫理基準、法制度の改定、新スキルの教育、さらには、労働市場の改革などによって、社会とワークフォースを差し迫る変化に対して準備させることです。この新たなテクノロジを最大限に活用するためには、これらの要素すべてが必要です。

 第三に、AIの恩恵を最大化し、その好ましくない影響を最小化するためには、テクノロジ企業、そして、官民の組織の共同責任による対応が必要です。マイクロソフトは、AIの民主化が必要と考えています。これは、マイクロソフト創業時における、あらゆる人がPCにアクセスできるようになるべきという信念と同様です。

 コンピュータービジョン、音声認識、推論といったマイクロソフトが提供するAIの構成要素があらゆる人に提供され、独自のAIソリューションを構築可能にすべきであると考えています。AIは少数の企業のみによってコントロールされるべきではありません。AIの未来は、AIが社会と経済にもたらす恩恵についてのビジョン、そして、課題への対応方法を理解しているあらゆる人によって構築されるべきです。

 AIの未来は明るくなることも暗くなることもあり得ます。私は、破壊的変化は常に起こるものであり、それに対応していくことを当然ととらえるべきと考えています。そして、急速に変化するAIの未来に適合するためには、労働者、企業、政府といったあらゆる利害関係者が、より多くの時間をかけて互いの意見に耳を傾け、共に新たな知識とスキルを継続的に学んでいく必要があります。

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