NY名門パーソンズ美術大学×JFW理事による 「ファッションの未来とサステナビリティ」特別講演を開催しました
即戦力人材を育成するスクール運営事業を行っている株式会社バンタン(本部:東京都渋谷区 代表取締役会長:石川広己 以下、バンタン)は、ニューヨークの名門美術大学「Parsons School of Design(パーソンズ美術大学 以下、パーソンズ)」のファッション学部学長 Burak Cakmak(バラク・チャクマク)氏と、日本ファッションウィーク推進機構理事 太田伸之氏による特別講演を1月12日(日)に開催いたしました。
(写真左から、日本ファッションウィーク推進機構理事 太田伸之氏、株式会社バンタン代表取締役会長 石川広己、パーソンズ美術大学ファッション学部学部長 バラク チャクマク氏)
開催背景
バンタンが運営するファッション、ヘアメイク、グラフィックデザイン、映像のスクール「バンタンデザイン研究所」は、世界3大デザインスクールのひとつと言われている「パーソンズ美術大学」とアジアで唯一の提携プログラムを持っています。「単位互換認定校」であるバンタンは、これまでに約100名のパーソンズ留学を実現。従来のデザイン教育とは一線を画し、実践的な知識とともに最先端の技術、語学力を吸収しながらデザインを国際的なビジネスで生かすことのできる人材の育成に力をいれています。
開催概要
日時: 2019年1月12日(日) 15:00~16:00
場所: AOYAMA TERRACE
(東京都港区北青山2ー3ー1 ITOCHU GARDEN 2F-B号)
登壇者: パーソンズ美術大学 ファッション学部学部長 Burak Cakmak氏
日本ファッションウィーク推進機構理事 太田伸之氏
講演内容: 【ニューヨーク×東京】ファッションの未来 とサスティナビリティ
登壇者
講演内容
ファッション市場動向 -ニューヨーク-
Burak Cakmak氏
昨今のニューヨークのファッション市場は、商品とブランドの2つのトレンドがあります。
まず、商品のトレンドについてお話します。今、顧客は「珍しく・特別な」アイテムを求めており、「ブランドが何を主張しているのか」、「その商品がどのような価値をもたらしてくれるか」を相対的に評価する傾向にあります。それに伴い、商品に対する想いよりも顧客の価値観に対してアプローチしているブランドが増えてきています。
続いてブランドのトレンドについてですが、昨今ではストリートウェアブランドがラグジュアリーブランド化してきています。それに伴い、ラグジュアリーブランドが慣用的になってきているように感じます。間接的ではありますが、カジュアルブランドがラグジュアリーブランドの構造を変えているのではないでしょうか。小規模なブランドは、SNSなどソーシャルメディアを上手く活用しながら顧客と新しい関係を築き、スピーディーに成長を重ねています。これからラグジュアリーブランドは、一般消費者に向けてセカンドラインを立ち上げたり、アクセスしやすい環境を整えるなど、マスマーケットを意識したアプローチの施策を検討する必要がでてくるでしょう。
ファッション市場動向 -東京-
太田伸之氏
東京都心では、インバウンド観光客による売上が全体の30~40%を占めており、インバウンドによる売上が確保できている企業が成長を遂げています。これからのファッション業界には、これまで以上に日本人のお客様と信頼を築くこと、そしてインバウンドのニーズも獲得することが重要になっています。また、今後数年は生活の中にスポーツがどんどん入ってくるでしょう。若いクリエーションとスポーツと大企業の三者が様々なコラボレーションを見せてくれるのではないでしょうか。
市場におけるサステナビリティとは
Burak Cakmak氏
サステナビリティの定義には、ビジネス、デザイナー、顧客の視点がありす。
ビジネスの視点から見ると企業は、バリューチェーンに関わる関係者に対して尊厳を持ち、フェアトレードの意識や就労環境を整えるなどの、持続的・継続的な環境を作ることが求められています。それらは、ビジネスの規模が大きいほど、社会に対して与える価値も影響も大きいのです。顧客に対して購買の必要性を問い、 “買わない”ことを提案するメッセージを発信することで、無駄な消費を削減しようとする企業もあります。そうすることで、サステナビリティの考え方や環境への配慮を彼らに教育し、環境問題に対してどのような意識を持つべきなのかを顧客と一緒に考えているのです。
続いて、デザイナーの視点です。これからのデザイナーは自分たちのデザインや仕事が消費者に対してのみならず、地球環境に対してどのような影響を与えるのか考えていかなければいけません。パーソンズでは今、サステナビリティをテーマに掲げ、未来を見据えて様々な課題に真摯に向き合っています。物が溢れ、需要と供給のバランスが保たれていない現代の社会で、デザイナーが生産者としてこの課題に向き合い、顧客に対して問題提起することが彼らには求められているのではないでしょうか。
そして顧客の視点として私たちは、自身が着ている洋服の製造背景を知り、社会や環境に対してどのような影響を与えているのか考慮しながらファッションを楽しむことも大事になってくるでしょう。
太田伸之氏
日本はまだ、サステナブルの考えに対して国民の意識が高くはないと感じています。化学合成繊維のような土に返らない繊維は、最終的にゴミとなり地球環境を荒らしているのです。現代は服を作りすぎ、捨てすぎています。国民ひとりひとりが、地球を破壊しているということを認識しなければいけません。環境配慮の観点からも、洋服1着1着を大事にしなければいけないのです。
サステナビリティにとってバイオテクロノジーがビジネスの新たな切り口になるでしょう。世界中の企業が生物と技術を使った新しい繊維の開発に挑戦しています。山形県にある企業が、蜘蛛の糸のようなタンパク質繊維を作ることに世界で初めて成功しました。量産化に成功すれば、世界にも通用する日本の大きな技術になるのではないでしょうか。
また、サステナビリティに通ずる企業の新たな動きとして、米国のアパレルブランドの中に洋服の原価や製造工場を公開して注目を集める企業があります。生産工程で発生する材料費、縫製費、関税、輸送費などの具体的な金額をの情報開示をして商品を販売しているのです。このような生産過程の透明性も、今後消費者からアパレル業界に求められることではないでしょうか。
ファッション業界の未来
太田伸之氏
例えば音楽業界において、ITの進歩によりダウンロードで曲を買う時代に、カセットやレコードが再流行しています。ITが進めば進むほど原始的なものが流行ってくる。これはファッション業界においても同じです。通信販売による売上が伸びる一方で、実店舗の接客を通した原始的な販売方法が注目を集めるのではないかと思います。
Burak Cakmak氏
大企業はITを活用した改革を進めており、より早く、より低価格な商品を作り出しています。そして、ECの拡大により顧客と商品との距離が近くなり、製造工程も簡略化されました。仲介業を介さずとも、顧客がデザイン~生産オーダー、受け取りまでをワンストップで行う新しい取り組みも始まっています。
今後のファッション業界は、これまで以上にオーダーメイドのニーズが高まってくるのではないかと考えています。テクノロジーの進歩により、オーダーメイドが容易になることで、カスタマイゼーションの需要が高まり、購入されてから製造される(フルオーダーメード) が増えてくるのではないでしょうか。商品を売る時代からデザインを売る時代になるかもしれません。サステナビリティをイノベーションに活用する時代になるのではないでしょうか。
Parsons School of Design(パーソンズ美術大学)
https://www.newschool.edu/parsons/
Parsons School of Designは、1896年に創設されたニューヨーク・マンハッタンにある名門私立大学です。米国で最初にファッションデザインやインテリアデザインの教育を始めて以来、常に最先端のデザイン教育を目指した実践力重視の指導を行い、世界3大ファッションスクールの一つとして世界で絶対的な知名度を誇っています。リベラルかつ自主性を重んじる校風の中で、これまでにマーク・ジェイコブス、アナ・スイ、トム・フォード、アレキサンダー・ワン、ダナ・キャランなどの大御所デザイナーを多数輩出。700名以上の講師陣の多くは、ニューヨークはもちろん、世界で成功を収めた現役のアーティストやデザイナーが務めます。約5,000名の学生のうち32%が留学生という、国際色豊かな総合デザインスクールです。
■ Vantan (バンタン) http://www.vantan.jp/
1965 年の創立以来、クリエイティブ分野に特化して人材の育成を行っている専門スクール。現役のプロクリエイターを講師に迎え、ファッション、ヘアメイク、ビューティ、グラフィックデザイン、映画、映像、フォト、ゲーム、アニメ、マンガ、パティシエ、カフェ、フードコーディネーターなどのクリエイティブ分野において、業界と連携した「実践教育」で即戦力となる人材を育成する教育事業を東京・大阪で展開、これまでに 19 万人以上の卒業生を輩出しています。