<自転車の安全利用促進委員会レポート> 中高生の自転車事故撲滅を目指し、 奈良全県から73名の教職員が参加 奈良県教育委員会主催 交通安全教室講習会に遠藤まさ子氏が登壇
~自転車通学指導のポイントは周囲を巻き込み継続すること~
自転車のルール・マナー等の正しい利用方法と、メンテナンスの重要性を啓発する「自転車の安全利用促進委員会」のメンバーである遠藤まさ子氏が、2017年8月16日(水)奈良県社会福祉総合センター大ホールで行われた奈良県教育委員会主催「交通安全教室講習会」に登壇し、自転車通学指導についての講演を行いましたので、ご報告いたします。
昨今の自転車事故では、中高生が被害者になるケースだけでなく、信号無視や学校へ急ぐなかでのスピードの出しすぎなどが原因で加害者となり、大きな賠償問題につながる事故も発生しており、自転車通学指導の重要性がますます高まっています。当委員会が全国の中学校・高等学校約500校を対象に行った調査では、教職員の多くは「教育する頻度を増やし、きちんと教育したい」という高い意識を持ちながらも、「知識や人手が足りない」「どんな教育をすればいいかわからない」などといった悩みを抱えていることが浮き彫りになっており、自転車利用に関する教育の理想と現実の間に大きなギャップがあることが明らかになっています。
今回の「交通安全教室講習会」には、奈良県内の幼稚園~高等学校の教職員が73名参加。「中高生の事故件数が増加する奈良県の現状」や、「自転車通学の安全性を向上させるにはどのような視点が必要なのか」について、教職員視点に立ち“学校で導入しやすい”指導方法を自転車の安全利用促進委員会メンバーの遠藤氏が解説いたしました。
遠藤氏は、「事故の起きやすい時期を把握したうえで、そのタイミングにあった基本的なルール・マナー指導などをしっかりと行っていくことが重要。また、自転車のメンテナンスを意識したハード面の通学指導も欠かせません。実施までの負荷はあるものの、まずは一歩踏み出して、指導方法をマニュアル化・システム化することで、恒常的な取り組みを行っていきましょう。さらに、警察や自治体などまわりの団体を巻き込むことで、先生の負担を減らしながらも専門性を担保することができます。これらを自転車通学指導のポイントとして覚えていただきたい。」と、奈良県内から集まった教職員を前にコメントしました。
参加者の声
中学校教諭
・資料の活用方法や実践方法が良く理解できた。年間指導計画の提示や実施時期、関係機関への依頼時期などの情報があってよかった。
・保護者・地域からの自転車通学の希望が強くあるが、許可をしていない現状。事故という言葉がストップをかけているが、本日の話を聞いてうまく指導していけば許可できるのではないかと思った。
小学校教諭
小学校なので自転車通学児童はいないが、子どもたちに普段から自転車の乗り方やマナー・ルール・メンテナンスの仕方などを指導していく必要性はあるため、本日の話や資料を役立てたい。
【講演内容:全国の事例から見る、自転車通学指導のススメ】
登壇者:遠藤まさ子氏(自転車ジャーナリスト)
講演では当委員会が全国の中学・高校を対象(回答数517校)に実施した調査をもとに、中高生の事故の大半が自身の法令違反が原因となっている(中学生の72.0%、高校生の68.9%)という現状や、被害者・加害者になりうる可能性についてデータや事例をもとに遠藤氏が解説。
また、「何から、どうやって指導していけばいいのだろう?」「他校はどのような取り組みをしているの?」など、教職員の悩みがあることから、自転車事故が起きやすい時期(5・6月および10月)に合わせた、『全国の自転車通学指導実例』を発表し、自転車通学指導のポイントはまわりの団体(警察や自治体)を巻き込むこと、そして実施した取り組みを継続させていくことだと解説しました。
他にも、ルール・マナーなどのソフト面の対策だけでなく、まだまだ十分浸透しているとは言いづらいメンテナンスなどの自転車自体の安全性について考える“ハード面”の指導も重要であることを説き、ブレーキがきかない、ライトがつかないなど、自転車の安全性の欠如はヒヤリハットの原因となり、ひいては大きな事故につながる恐れがあることも説明しました。また、定期メンテナンスを奨励している学校が28.6%にとどまっている現状をふまえ、メンテナンスをすることで防げる事故についてや、自転車協会が設けた「自転車安全基準」をクリアしたことを表すBAAマークを自転車購入の際の参考にすると安心であることなども紹介しました。
参考データ
危険行為の62%は安全運転義務違反
調査した中学、高校の半数以上で生徒が自転車事故を起こしている!!
“BAAマーク”とは
ブレーキ性能比較実験
遠藤 まさ子(えんどう・まさこ)
自転車ジャーナリスト。自転車業界新聞の記者や自転車専門誌の編集などを経てフリーランスへ転向。自転車・育児用品を中心に取材を行い、各誌に寄稿している。テレビ・新聞・雑誌などの各種メディアでコメンテーターとして登場する機会も多い。