みんなが都会の大学を目指す時代は終わった?

地方は学びの特色だけでなく、サポートの充実も魅力

2021-02-08 18:00

(執筆:林幸奈)

地方の学校と聞いて、思い浮かべる光景はどんなものだろう。のどかな自然に囲まれ、農業や伝統に触れる学習。少人数の学級は、大人の目が行き届くが、子どもに窮屈さがあるかもしれない。

地方の過疎化は、依然として問題だ。少子化が進み、廃校になる学校も増えている。平成14年度~29年度の間に、廃校になった公立学校の数は以下の通りだ。

廃校になった公立学校
小学校:5,005校
中学校:1,484校
高等学校:980校
特別支援学校:114校

都心の子どもが地方で学ぶためのプログラム

都心の子どもたちが、地方で学べる機会が増えている。移住を検討する中で、都心と地方の学校を比べるプログラムもある。徳島県教育委員会が推進するデュアルスクールは、都心と徳島の学校を行き来し、双方の教育を受けられる事業。三大都市圏および徳島県内の公立小中学校に通学する、小学1年生〜中学2年生が対象だ。

   

なぜ地方大学は就職率を伸ばしているか

「地域で学んでほしい」とは、「学んだことを地域で活かしてほしい」という思いでもある。大学や企業が集中するため、都心の方が就職に有利だと考えられてきたが、地方の特色を就職率に結びつける大学が増えている。

福井大学は地域と密着した人間力育成事業の実施により、地域とのネットワークと就職活動に必要な力を同時に養える。県内就職率は38.0%。満足度も高く、ほぼ100%の学生が希望の企業に就職、3年以内の離職率は7.1%。(全国平均は31.0%)

地方移住の需要が高まる理由とは

社会に出てから理想とのギャップや、地元のよさに気づくこともあるだろう。しかし就職する前に見極める機会があれば、理想に振り回されたり、進路に悩んだりことは少なくなる。「地方に若者を増やしたい」というだけでなく、「将来を考え決めていく場所」として地方での教育。やりたいことができる場所はそれぞれで、生まれ育った場所だけで、進路は決められない。教育の価値や、就職条件の多様化が、地方の特色とマッチしている。

この記事のまとめ

・都心の子どもが地方で学べる機会が増えている
・地方大学の就職率は高まっていて、地域に根づいた就職活動のサポートが充実している
・進学・就職に対する価値観の多様化に、地方が求められている

今回のコメンテーターからのご意見

・駒田 格知(こまだ・のりとも)
『長良川のアユ【電子書籍版】:40年間の現地調査から』 の著者。日本の魚類学者。医学博士。

“日本社会が経済の成長を目指し、安定を求めている時代は都会に人々が集まり、大学自ら都市に集中する傾向にあった。しかし、今新型コロナウイールス感染症による社会騒動を目の当たりにし、さらに高齢化や少子化が進行している現代では地方にこそ可能性があるのではないか。だからこそ自立が求められ、いまや都会中心の考えは主流とはいえなくなっていくと考える。

それぞれの大学には教育目標があり、その内容と立地条件等に共感して教員が集まり、その結果として大学の特徴や伝統が形成されている。加えて、最近の大学の周辺社会も地域文化の育成に力を入れて“産学連携”を推進していることが多い。

教育は教室における勉学だけではなく、学生時代を過したトータルな環境が人格形成にも大きく影響していることを思えば、都会だけではなく、自然も社会も多様性の豊かな地方にこそそれぞれに掛け替えのない魅力があるとも言えよう。地方の時代のさらなる進化が期待される。”

 

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