【岡山理科大学】大規模土砂災害で迅速な対応を実現
航空レーザ計測利用し、従来比1/10の時間で流出土砂量把握 国内初の手法 生物地球学科の佐藤教授らが開発
岡山理科大学生物地球学部の佐藤丈晴教授らの研究グループは9月24日、同時多発的な土砂災害発生直後に迅速かつ効率的に土砂移動域を特定し、流出土砂量を把握する技術を開発し、特許出願したと発表しました。航空レーザ計測で取得できるDigital Surface Model(DSM)を活用し、従来の手法に比べて10分の1以下の期間で流出土砂量を算定する技術で、国内初の手法です。これにより、労力とコストを抑制することが可能で、復旧体制の迅速な整備に役立つことが期待されます。
この日、岡山理科大学で記者会見した佐藤教授によると、従来の手法では航空レーザを利用するものの、災害前後の標高値を比べると、樹木等の影響で実際の土砂と誤差が生じるため、技術者による目視判読が必要で、実際の土砂移動域を特定したうえで土砂量を算出しています。このため数日から数週間の時間を要します。
新しい手法では、AI(人工知能)を活用し、災害発生前の航空レーザ計測データと、発生後のデータのうち樹木等の部分を排除して比較し、土砂がえぐれた部分を特定。さらに航空写真と合わせて解析したうえで土砂量を算出します。
この手法を利用すると、被災範囲が40平方㌔㍍とした場合、現在は5人の技術者を投入して12日間程度かかっているのに、たったの1日で土砂量の把握が可能。従来の10分の1以下の期間で土砂量が把握できるため、人件費だけでなく、復旧作業に着手する時間も大幅に短縮することができると言います。
会見では、熊本地震および西日本豪雨で甚大な被害を受けた熊本県阿蘇市と広島県呉市を対象に、災害直後の航空レーザ計測によって生成されたDSMを基に、土砂移動分布と土砂量を迅速に把握する手法が報告されました。この二つの現場について、新手法で土砂量を計測してみたところ、目視判読する現手法の80~90%という正解率でした。
佐藤教授は「AIに数多くの土砂災害例を学習させて精度を上げていきたい。広い範囲であればAIが圧倒的に早く、被災地のいち早い復興に役立つはず」と話しています。