青酸化合物を高感度で迅速・簡便に検出できる装置を開発 手のひらサイズで持ち運び可能、捜査や医療現場への導入に期待

開発した分析装置のイメージ(四角内は装置の中を横から見た図)
開発した分析装置のイメージ(四角内は装置の中を横から見た図)

近畿大学薬学部(大阪府東大阪市)創薬科学科教授 鈴木 茂生(当時)らの研究グループは、毒物である青酸化合物※1 を高感度で、迅速かつ簡便に検出できる分析装置を開発しました。本装置では、大型の装置を用いることなく、また事件・事故現場で用いられる簡易検査キットよりも精度よく、分析することが可能です。さらに、検出の際に使用する試薬を変更することで、青酸化合物以外の薬毒物にも応用できます。この装置は安価に製造でき、小型であるため、今後の捜査や医療現場への導入が期待されます。
本件に関する論文が、令和4年(2022年)3月22日(火)に、分析化学の国際的な学術雑誌"Analytical Sciences"に掲載、表紙にも採用されました。

【本件のポイント】
●青酸化合物を高感度で、迅速かつ簡便に分析できる装置を開発
●従来の検査方法では検出できなかった、極微量の青酸化合物を検出可能
●開発した分析装置は安価に製造でき、サイズも小さいため、捜査や医療現場への導入に期待

【本件の背景】
青酸化合物は、人体や環境に対して非常に有害な物質です。例えば青酸カリは、殺人事件や自殺などで用いられる毒物であり、火災事故においても青酸ガスが発生して中毒の原因となることがあります。事件や事故の場合は、原因究明や捜査方針決定に関係するため、迅速に測定する必要があります。また、青酸化合物の毒性は急速に発現するため、救命医療の分野でも解毒剤投与や治療方針決定のために、速く正確な定量分析※2 が求められます。しかし、従来の検出方法では、高価で使用コストもかかる大型装置が必要であり、キットを用いた簡易的な検出方法も用いられてはいるものの、検出感度の面で課題があります。

【本件の内容】
研究チームは、高感度で迅速・簡便に青酸化合物を検出できる新たな分析装置を開発しました。まず、青酸化合物を含む溶液を、酸で処理して青酸ガスにします。次に、NDA-タウリン-ホウ酸混合溶液をガラス繊維ろ紙に浸透させた試験紙を作り、青酸ガスと反応させて、試験紙上に蛍光物質を生成させます。
この試験紙を分析するための装置を、安価なマイコンボードとレーザーを組み合わせて開発し、蛍光強度によって青酸化合物の濃度を測定できることを確認しました。この装置を用いることで、青酸化合物の濃度を1~100μM以上の広範囲で検出することができます。
今回開発した測定装置は、2万円以下と安価に製造できるうえ、手のひらサイズで携行も可能であり、事件・事故現場で青酸化合物を検出するために広く普及することが期待されます。

【論文掲載】
掲載誌:Analytical Sciences(インパクトファクター:2.081@2020)
論文名:
Development of a cost-effective laser diode-induced fluorescence detection instrument for cyanide detection
(青酸化合物を検出するためのコストパフォーマンスに優れたレーザーダイオード誘起蛍光検出器の開発)
著 者:森川 泰裕、西脇 敬二 *、鈴木 茂生 *、木下 充弘 *、仲西 功 *
    *近畿大学薬学部
    ※ 所属は執筆当時

【研究詳細】
研究グループはまず、青酸化合物とNDA-タウリン-ホウ酸混合溶液とが反応した蛍光物質について、蛍光分光光度計を用いて、詳細な定量性を明らかにしました。次に、蛍光検出高速液体クロマトグラフィーを用いた蛍光物質の分析によって、生成物が単一でかつ定量性があり、繰り返し操作しても再現性が充分であることを明らかにし、分析法として信頼できることを証明しました。
それを踏まえて試験紙を用いる分析法へと展開し、安価なArduino※3 を用いて新たな測定装置を開発し、分析に適するように光の照射時間などを工夫しました。分析操作としては、マイクロチューブの蓋の内側にNDA-タウリン-ホウ酸混合溶液を浸透させた試験紙を貼り、マイクロチューブ内に青酸化合物を含む溶液と、アスコルビン酸を含む5%リン酸溶液を加え、ブロックヒータを使って中部の底を加温して10分間放置します。生成した青酸ガスと試験紙を反応させ、それを装置に装着して蛍光強度を測定。さらに、試験紙の材質、サイズの最適化を行いました。また、同様の方法によって、血中の青酸化合物の定量性を明らかにし、実際の現場でも使えることを証明しました。

学術雑誌 "Analytical Sciences" の表紙
学術雑誌 "Analytical Sciences" の表紙

【用語解説】
※1 青酸化合物:金属の精製・加工、メッキ、害虫駆除、分析試薬等に利用される。強い毒性(青酸カリの場合、経口致死量は0.15~0.3g)があり、法科学分野では重要な分析対象の一つ。
※2 定量分析:化学分析の一種で、試料中に含まれる特定の成分の量を求めるための分析法。
※3 Arduino:マイコンボードの一種。安価で入手でき、プログラミング初心者でも利用可能。

【関連リンク】
薬学部 創薬科学科 講師 西脇 敬二(ニシワキ ケイジ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/370-nishiwaki-keiji.html
薬学部 創薬科学科 教授 木下 充弘(キノシタ ミツヒロ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/810-kinoshita-mitsuhiro.html
薬学部 創薬科学科 教授 仲西 功(ナカニシ イサオ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/797-nakanishi-isao.html

薬学部
https://www.kindai.ac.jp/pharmacy/