片麻痺歩行の定量的評価手法を開発 リハビリテーション医療に新しい一手 近畿大学理工学部

近畿大学(大阪府東大阪市)理工学部社会環境工学科教授 米田昌弘は、リハビリテーションをはじめとする医療分野で、歩行特性を定量的に評価できる手法を開発しました。現在、片麻痺患者の歩行診断法の確立ならびに測定機器のコンパクト化に向けて、本学医学部および東大阪生協病院(東大阪市)と共同研究を実施中です。

【本件のポイント】
●従来は主観で判断していた歩行診断を、定量的に評価する新手法を開発
●リハビリテーション用の杖や装具はもちろん、靴の開発などへの適応も期待
●モデルの歩行評価や理想的な歩き方など、美容・健康分野にも応用の可能性

【本件の概要】
高齢化が進行している現代社会においては、歩行リハビリテーションの重要性がますます高まっています。一方で、医療の現場において、患者の歩行状態を定量的に評価する簡単な方法は確立されていませんでした。

米田の研究グループは、健常者と片麻痺患者の歩行実験を行い、両者を比較しました。方法としては、歩行者の腰部に加速度計を取り付け、進行方向の加速度波形を周波数分析しました。

健常者の歩行は左右のバランスが揃っているため、腰の動きも両足の動きである足並み(歩調)に連動し、リズミカルに動きます。この規則正しい速度変化が、歩行者の進行方向において、きれいな加速度波形として計測されます。一方で、片麻痺患者の歩行は左右がアンバランスになっており、どちらかの足をつっぱるようにして歩きます。それゆえ、腰の動きがリズミカルではなくなり、不規則な速度変化をもたらします。この不規則な速度変化が、加速度を計測したときに「片足の動き成分」(健常者が歩行した時の半分に相当する成分)として検出されることが確認されました。この成分の大きさを測定することで、歩行の状態を定量的に診断することが可能になります。

【今後の展望について】
今回の研究を活用することで、医療現場において片麻痺の度合いや、リハビリテーションの効果を定量的に評価することが可能になります。また、患者にフィットした杖や装具に加え、健常者用の靴の開発にも適応できることが期待されます。さらには、モデルの歩行評価や理想的な歩き方など、美容・健康分野への寄与の可能性も秘めています。

なお、本研究成果は、科学技術振興機構が主催した関西10私大新技術説明会(平成28年3月3日開催)で発表されました。また、日本リハビリテーション医学会の学術集会(平成28年6月9日~11日開催)でも発表を予定しています。

【研究結果の詳細について】
本研究において計測した加速度波形に特別な処理を施すと、健常者の方はきれいな波形を示す(図1)のに対し、片麻痺患者の方では大きな波と小さな波が合わさったような波形となります(図2)。元々の波形を周波数分析すると、健常者の方は歩調の成分が卓越している(図3)のに対し、片麻痺患者では歩調の成分に加え、歩調の半分(0.5倍)の成分が大きく検出されました(図4)。歩行時に歩調の半分の成分がどのくらい含まれているかを計測することで、歩行の状態を定量的に診断することが可能になります。

【関連リンク】
理工学部 社会環境工学科 教授 米田 昌弘
http://www.kindai.ac.jp/meikan/533-yoneda-masahiro.html

研究結果の詳細
研究結果の詳細

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