公立小学校としては国内初のイマージョン学級設置校の取り組み リポート記事を公開!

なぜ、英語力がまだ不十分な子どもたちでも、英語を使って算数を学べるのか?

「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所」(※以下、IBS)では、グローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信しています。

 2020年度から公立小学校としては国内初のイマージョン学級を設置した愛知県の豊橋市立八町小学校(以下、八町小)が、2022年10月24日(月)、「1年生の算数科を対象に研究授業・協議会」を実施しました。今回IBSは、5回目となる視察・意見交換に加え、初の試みとして授業案に対する助言を行いました。授業案や児童の英語力、学習状況などの情報を八町小よりご提供いただいたことで、英語力が不十分な子どもが学べるようにするための授業づくりについて理解を深める貴重な機会となりました。「なぜ、英語力がまだ不十分な子どもたちでも、英語を使って教科を学べるのか?」の理由や授業づくりの課題について考察した記事を前編・後編で公開しました。

記事の概要

1)八町小のイマージョン授業は、学習指導要領に沿った「教科の目標」と「言語の目標」を両方設定して計画されている。
2)具体的操作や視覚的支援などの計画により、1年生の子どもたちがイマージョン授業で繰り上がりのある計算の仕方を考えたり表現したり(算数の目標)、そのときに使う英語を理解したり(英語の目標)できるようになっていく様子が見られた。
3)教科内容を理解するために必須のことばに加えて、学習活動を行うときに必要なことば、学習のなかで偶然発見することばにも意識を向けて計画することが重要。
4)ことばに意識を向けて授業を計画することは、イマージョン授業だけではなく、通常学級の授業の質も向上させる可能性がある。
    
記事CONTENTS
[前編] ・はじめに:視察の経緯
・研究授業の対象は、1年生の算数科 
・八町小のイマージョン授業は、どのように計画されているか?
・算数と英語をどのように組み合わせて教えるか?
 (1)数図ブロックの動かし方を考えながら英語で説明する
 (2)計算の仕方を考えながら英語で説明する
[後編] ・研究協議会からの考察:目標の立て方は効果的か?
・おわりに:ことばに意識を向けることが「誰でもわかる」につながる

八町小学校 授業風景

「低年齢の子どもが英語で算数を学ぶなんて無理」という誤解を払拭する授業づくり

八町小は、2020年度より、国語と道徳以外の教科は主に英語を使って学ぶイマージョン学級を開設し、2年半が経過しています。八町小イマージョン学級の目標は、「子どもたちがイマージョン授業を通じて学習指導要領の内容を習得すること」。イマージョン教育とは、バイリンガル教育の一つの形態で、学校の教科を二つの言語(母語ともう一つの言語)で指導し、両方の言語を読み書きレベルまで育て、さらに二つの社会文化を受容できることを目的にしています。
しかしながら、イマージョン教育には、様々な誤解がつきまといます。例えば、「低年齢の子どもが英語で算数を学ぶなんて無理」「学力や思考力が犠牲になる」といった誤解です。
IBSは、公立である八町小のイマージョン教育の取り組みについて、イマージョン教育の研究を行う原田哲男教授(早稲田大学教育・総合科学学術院/IBS学術アドバイザー)と共に、研究活動および社会貢献活動の一環として、2021年度から計4回の授業視察や意見交換を実施してきました。  

IBSは原田教授を中心に、授業案に対する助言、研究授業の視察、意見交換を実施

 2022年10月24日には、「豊橋版イマージョン教育」の質を高めるべく、1年生を対象とした算数の研究授業および研究協議会が行われました。授業案からは、算数の目標「繰り上がりのある計算の仕方を考えたり説明したりできるようになる」と英語の目標「繰り上がりのある計算で使用する算数用語や表現に英語で慣れ親しむ」の両方が立てられていることがわかりました。
そして、授業中に使う単語や文、それらを理解・使用させるための支援が事前に計画されていることがわかりました。さらに、授業中の教師と児童のやり取りでは、この計画が効果的である様子が観察されました。
協議会では、八町小教職員とのディスカッション、原田教授からの知見共有、および、特に低学年を対象とした授業計画で意識するべきポイントについての助言を行いました。

八町小教職員と早稲田大学原田教授との意見交換会

【まとめ】  ことばに意識を向けた「誰でもわかる授業」づくりが成功のカギ
イマージョン授業を通じて、英語と算数の両方の力を伸ばしてきた1年生の子どもたち。この成功要因の一つは、ことばに意識を向けながら「誰でもわかる」を目指した授業案の計画であると考えられます。八町小は、イマージョン学級で「誰でもわかる授業」を追求することで、通常学級(日本語のみを使って教える学級)の授業に還元することを目指しています。
    どのようなときにどのようなことばが使われるか、ことばはどのような役割を果たすか、ことばを理解させるためにはどのような支援が必要か、思考しながらことばを使わせるためにはどのようやタスクや学習活動が必要か、教師が使うことばはわかりやすいか、というように、さまざまな観点から「ことば」を意識したイマージョン授業づくりは、日本語で教える授業にも応用できると考えられます。
(レポート記事執筆者/IBS研究員 佐藤 有里)  

※詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。  
前編  https://bilingualscience.com/english/2023011801/
後編  https://bilingualscience.com/english/2023012001/     

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     パシフィックマークス新宿パークサイド1階
設   立:2016年10 月

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