オックスフォード・ブルックス大学Crisfield氏へのインタビュー記事公開

「英語を使いたい」というモチベーションがカギ。家庭でできるインプット方法とは

「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所」(※以下、IBS)ではグローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信しています。
わが子を二つ以上の言語を話せる子どもを育てたい、という考え方は、世界中の親たちの間で広まってきています。そこで、IBSは子どもがバイリンガルに育つうえで親はどのような手助けをできるのかについてEowyn Crisfield氏(Oxford Brookes UniversityのTESOLシニア講師)にお話を伺い、記事として公開しました。

インタビューサマリー

●バイリンガル子育てにおいては、研究結果に裏打ちされた情報を十分に得ることが重要
●日本人は他の多くの国と比べ、母語である日本語を特別に大切にしており、だからこそ第二言語学習の導入が早すぎると日本語が損なわれるのではないか、と心配する親が多いのかもしれない
●日本語と英語のバイリンガルの脳の仕組みは、日本人のモノリンガルとは全く同じではない
●日本語と英語が互いに影響を与え合うのは両言語が十分に発達したときなので、早期英語学習が日本語に
悪影響を及ぼすと不安を感じる必要はない
●家庭で英語に触れる機会を設けるには、英語への感性を育む遊びを中心としたコミュニケーションがよい

Eowyn Crisfield氏

 バイリンガル子育てへの第一歩とは?

Crisfield氏はケニアのマルチリンガル家庭から国外に住む日本人家庭まで、幅広く関わってきたとのこと。その経験から、どの家庭にとってもバイリンガル子育てへの第一歩は、バイリンガリズム(二言語使用)に関するしっかりとした情報を得ること、と考えているそうです。
「私たちは、しっかりとした情報がどれほど親御さんの役に立つか、ということを軽視しています。バイリンガルの子どもを育てるのは簡単だという神話がありますが、例えばケニアのようにさまざまな状況で複数の異なる言語を使用するといった特定の状況下ではそれは正しいかもしれません。一方、日本のようなモノリンガル社会では、家族が子どもに第二言語を教えるための計画を立てる必要があります。まずしっかりとした情報を得て、親が自分自身と子どもに対して正しい期待をもてるようにすることが大切です。」とCrisfield氏。  

バイリンガル子育てに取り組む日本人家庭から見えてきた親の姿勢と不安

Crisfield氏によると、日本国外に住んでいる日本人家庭は言語維持に対する考え方がほかの多くの国と比べると大きく異なるそうです。日本人家庭では日本語をしっかりと身につけることを第一に考えており、それに対しほかの国の人たちは、自分の子どもが英語さえ使えるようになればいいと考えていて、母国語を完全に使いこなせる力を維持する、ということにはあまり関心がないそうです。
バイリンガル子育てに取り組む日本人家庭から相談を受けてきた経験から、Crisfield氏は「おそらく、日本社会で能力を発揮して成功するためには、日本人は日本語を完全にマスターしている必要があり、英語を話せるということはおまけであって、必須ではないという認識からきているのでしょう。また、日本人は日本語を特別に大切にしていることもわかりました。だからこそ、第二言語学習の導入が早すぎると日本語が損なわれるのではないか、と心配する親御さんが多いのかもしれませんね。」と言います。  

バイリンガルの脳内は実際にどのような仕組みなのか?

 また、Crisfield氏はバイリンガルの脳内が実際にどのようになっているのかについても説明してくれました。多くの親たちが持っているバイリンガルの脳のイメージは二つの風船(図1)のように、英語の風船と日本語の風船が別々になっている、つまり、一つの脳内に二人のモノリンガルが存在している、というふうに見ているということです。「しかし、実際には私たちの脳の仕組みはそうなっていません。」とCrisfield氏は続けます。
「ジム・カミングスの「iceberg analogy」(氷山説、図2)(Baker 2011, 165-166ページ参照)をご存知の方もいるかもしれませんね。私たちが言語について知っているすべてのことは水面の下にあり、水面上に出てくるのは日本語か英語です。表面上は二つの別々の言語が見えていますが、水面下では根本的なメカニズムが多くの点で重なり合っています。だからこそ、バイリンガルの人は、モノリンガルの人とは違う言語の使い方を好むのです。言語の熟達度とは関係なく、使い方の違いです。」
                                                                                                           
さらにCrisfield氏によると「日本語と英語がお互いに影響を与え合うとしたら、それは、両方の言語が十分に発達したときです。ですから、英語学習を早くから始めると日本語に悪影響を与えるのではないか、と不安を感じている親御さんや先生には、何も心配する必要はない、ということを伝えたいです。なぜなら、日本の子どもたちは、英語学習にかける時間が十分にはないからです。」ということです。

図1:風船説
図2:氷山説

家庭で英語に触れる機会をつくり、インプットを増やす方法

 日本に住む子どもたちに英語のインプットを提供する方法は限られており、家庭で英語に触れる機会を上手に設けるには、どのような方法があるかをCrisfield氏に尋ねたところ、子どもが日本語にはないけれど英語にはある音に敏感になるように、音のレパートリーを増やし、楽しむこと、そうすれば、年齢が上がったときに英語力が向上するための土台ができると教えてくれました。「私の最もおすすめの英語活動は週に3回、1時間だけ10代のお兄さん・お姉さんにお願いして、英語で絵本を読んだり遊んだりしてもらうこと。重要なポイントは、子どもが英語を使いたいと感じられるような関わり方であることです。小さい子どもは、年上のお兄さん・お姉さんが大好きですから、一緒に英語で遊んでもらうことは、子どもにとって大きなモチベーションになります。」とCrisfield氏。
 
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。

オックスフォード・ブルックス大学 Crisfield氏へのインタビュー  

ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所

(World  Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所   長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
所 在 地:〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7 
     パシフィックマークス新宿パークサイド1階
設   立:2016年10 月
U R L:https://bilingualscience.com/  

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