キウイが皮膚を介してアレルギー関連抗体を産生することを発見 原因物質「キウェリン」を同定、発症リスク低減法の開発に期待

キウイが皮膚を介してアレルギー関連抗体を産生することを発見
キウイが皮膚を介してアレルギー関連抗体を産生することを発見

近畿大学農学部(奈良県奈良市)応用生命化学科 応用細胞生物学研究室(教授 森山 達哉、教授 財満 信宏)の博士前期課程2年生 衣笠 芹菜らの研究グループは、キウイを口から摂取した場合だけでなく、皮膚に付着した場合にもアレルギー関連抗体が産生され、アレルギー発症の原因となる(経皮感作)可能性があることを、マウスを用いて明らかにしました。また、原因となるアレルギー物質が、「キウェリン」というタンパク質であることも明らかにしました。今後、本研究成果を生かした、キウイが原因で発症するアレルギーのリスクを低減する方法の開発が期待されます。なお、本研究成果はキウイの経皮感作の可能性を示すもので、必ずしも全ての人がキウイに触れることでアレルギーを発症するわけではありません。
本件に関する論文が、令和3年(2021年)10月15日(金)に、食品に関する国際専門誌である“Food & Nutrition Research”に掲載されました。

【本件のポイント】
●キウイを口から摂取した場合だけでなく、皮膚に付着した場合もアレルギー関連抗体が産生され、アレルギー発症の原因となる(経皮感作)可能性があることを発見
●キウイの経皮感作の原因となるアレルギー物質を、「キウェリン」と同定
●今後キウイが原因で発症するアレルギーのリスク低減を目指した手法開発に、研究成果を生かすことを期待

【本件の内容】
アレルギーは、体内に侵入したアレルギー原因物質(アレルゲン)に対して抗体が産生され(感作)、再度アレルゲンが侵入した際に、体内で作られた抗体と反応することで発症すると言われています。これまで食物アレルギーは、口から食物を摂取した場合のみ、感作すると考えられていました。しかし近年、バリア機能が失われた部位の皮膚からアレルゲンが侵入することでも感作するケースが明らかとなり、「経皮感作」として注目されています。これまで、経皮感作が起こりうる食品について様々な研究がされてきましたが、果物については皮膚に触れる機会が多いにも関わらず、あまり知見がありませんでした。
近畿大学農学部の研究チームでは、これまでにマウスを用いてチェリーが経皮感作する可能性があることを明らかにし、アレルゲンについても同定しています(泉 愛理ほか, 2021, Foods, 10(1), 134)。
今回の研究では、食品表示法の「アレルゲンを含む食品に関する表示」において表示を推奨する「特定原材料に準ずるもの」(21種)の一つでもあるキウイについて、マウスを用いて経皮感作の検証とアレルゲンの同定を行いました。まず、マウスの後頭部にキウイの抽出液を塗布したところ、4週間時点でキウイのタンパク質に対する2種類のアレルギー関連抗体が産生されました。さらに、その抗体が認識するアレルゲンを精製したところ、「キウェリン」というタンパク質であることが分かりました。キウェリンは、これまで知られていたキウイの主要アレルゲンとは異なるため、今後キウイが原因で発症するアレルギーのリスク低減を目指した新たな手法の開発が期待されます。

【論文掲載】
掲載誌:Food & Nutrition Research(インパクトファクター:3.89 @2020)
論文名:
Kiwifruit defense protein, kiwellin (Act d 5) percutaneously sensitizes mouse models through the epidermal application of crude kiwifruit extract.
(キウイフルーツの防御タンパク質であるキウェリン(Act d 5)は、キウイフルーツの粗抽出物を表皮に塗布することで、モデルマウスにおいて経皮感作を誘発する)
著 者:衣笠 芹菜1、日高 翔太1、田中 芹奈2、泉 愛理1、矢野 えりか1、
    財満 信宏1,2,3、森山 達哉1,2,3 (責任著者:森山 達哉)
所 属:1 近畿大学大学院農学研究科、2 近畿大学農学部、
    3 近畿大学アグリ技術革新研究所

【研究詳細】
近年アレルギーの発症経路として注目される「経皮感作」ですが、特にその影響が大きいのは化粧品です。化粧品は保湿効果などの特性を高めるために、小麦や豆乳、果物など植物由来成分が多用されています。薬機法では、化粧品は人体に対する作用が緩和なものと定められているため、使用によって生じる健康被害も大きなものではないと考えられてきました。しかしながら、2010年頃に、加水分解小麦を含む石鹸の利用者が小麦アレルギーを発症する事例が相次ぎ、大きな社会問題となりました。この事例では、小麦成分が口ではなく皮膚や粘膜から侵入し、アレルギー関連抗体が産生され、小麦アレルギー発症の原因となったと考えられています。
近畿大学農学部の研究グループは、これまでにマウスを用いて大豆やチェリーといった、様々な食品の経皮感作について検証を行い、経皮感作しうるアレルゲン物質の同定を行ってきました。今回も同様にマウスを用い、キウイについて検証を行いました。
まず、マウスの後頭部に界面活性剤(洗剤成分の一種)とともにキウイの抽出液を週に4回塗布したところ、4週間目でキウイのタンパク質に対する特異的IgE抗体※1、IgG₁抗体※2 が産生されました。その抗体が認識するタンパク質(経皮感作アレルゲン候補)を精製したところ、「キウェリン」と呼ばれるタンパク質がアレルゲンであることが判明しました。この物質は、病害虫被害などのストレスに対抗するためにキウイ等の植物が産生する新規の生体防御タンパク質として、近年報告されているものです。またキウェリンは、キウイのマイナーアレルゲンとして知られており、キウイの主要なアレルゲンであるアクチニジンとは異なることが判明しました。さらに、グリーンキウイとゴールドキウイには共にこの分子が存在し、それぞれ交差反応※3 しうることも示されました。

研究詳細
研究詳細

【今後の展望】
今回の結果によって、キウイから抽出した成分を含む化粧品を皮膚に塗布することで、キウイに対して経皮感作し、アレルギーが発症する可能性が示唆されました。今後、ヒトにおいてもキウェリンが経皮感作アレルゲンとして機能しうるかどうかを検証することで、キウイが原因で発症するアレルギーのリスク低減を目指した手法開発が期待されます。
一方、研究グループの先行研究で明らかになったチェリーの経皮感作のアレルゲンについても、キウイ同様に生体防御タンパク質の一種であることが分かっていますが、なぜこのような生体防御タンパク質がアレルゲンになりやすいのかはまだ明らかになっていません。また今回はキウイに着目しましたが、多くの食品タンパク質が経皮感作しうると考えており、今後他の農作物に関しても広く検証し、経皮感作を引き起こすアレルゲンの同定や特性の解明にも取り組む予定です。

【研究支援】
本研究は、日本学術振興会の科研費基盤研究C(JP25450187およびJP16K07756)の支援を受け、実施しました。

【用語解説】
※1 IgE抗体:抗体のなかでも特にアレルギーに関連する抗体。アレルゲンが体内に入ると、この抗体と結合し、その結果、マスト細胞からヒスタミンなど化学物質を放出させ、鼻水、くしゃみ、かゆみ、咳といったアレルギー症状を引き起こす。
※2 IgG₁抗体:血液中に多く存在する抗体で、ヒトの場合はウイルスや細菌などに対して強い中和作用を持つ。マウスの場合はアレルギーに関連すると考えられている。
※3 交差反応:抗原に対して産生された特異的な抗体が、よく似た構造を持つその他の抗原に対しても結合し、反応することを指す。

【関連リンク】
農学部 応用生命化学科 教授 森山 達哉(モリヤマ タツヤ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/1060-moriyama-tatsuya.html
農学部 応用生命化学科 教授 財満 信宏(ザイマ ノブヒロ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/811-zaima-nobuhiro.html

農学部・大学院農学研究科
https://www.kindai.ac.jp/agriculture/
アグリ技術革新研究所
https://www.kindai.ac.jp/atiri/


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