可変型の放射線遮蔽材(しゃへいざい)「シーラーSTR」を販売開始 産学連携で環境・患者に優しい放射線治療を実現
近畿大学医学部(大阪府大阪狭山市)放射線医学教室(放射線腫瘍学部門)准教授の門前 一を中心とした研究チームは、早川ゴム株式会社(本社:広島県福山市)の協力を得て、あらゆるがんの皮膚転移、皮膚直下の筋肉・組織への転移等の放射線治療の際に使用できる鉛フリー放射線遮蔽材「シーラー Soft Tungsten Rubber(以下、STR)」を開発しました。「シーラーSTR」は、鉛のような毒性がなく、加温することで柔らかくなり、常温では型を維持することが可能です。令和2年(2020年)12月1日(火)から、東洋メディック株式会社(東京都新宿区)が「シーラーSTR」の販売を開始します。
※ 「STR」は、早川ゴム株式会社の登録商標です。
【本件のポイント】
●鉛のような毒性がなく、自由自在に成型可能な放射線遮蔽材「シーラーSTR」を販売開始
●医療のニーズから考案された鉛フリーの環境や人体に優しい放射線遮蔽材
●「シーラーSTR」を使用することで、患者個人に合わせた放射線治療を実施することが可能
【本件の内容】
放射線を用いる医療・工学分野では、その遮蔽材として主に鉛が使用されています。しかし、鉛は加工が困難なこと、加熱時に有害なガスや悪臭が生じること、廃棄する際に環境への影響が懸念されることから、欧米などでは使用を原則禁止とする動きがあります。
近畿大学医学部と早川ゴム株式会社が令和元年(2019年)9月に世界で初めて開発した放射線遮蔽材「シーラーSTR」は、鉛を使用せずに放射線遮蔽能力を有するため、上記の課題を解決しています。また、早川ゴム株式会社の独自の特殊配合技術により、常温時は通常のゴムと同等の固さを保持しながらも加熱すると急激に柔らかくなり、60℃では粘土状となって手指で自由に形成することが可能です。さらに、加温・成形により繰り返し使用できます。
より多くの医療現場で患者や医療スタッフの負担を減らし、環境にも優しい放射線治療を提供するため、商品化に至りました。
【商品概要】
商品名 :「シーラーSTR」
用 途:放射線(電子線)治療において、放射線遮蔽材として使用
サイズ :100×100×10mm
重 量:730g
材 質:合成ゴム系
価 格:130,000円/100cc(税別) ※ 100cc単位での販売
お問合せ:東洋メディック株式会社 大阪支店 営業1部 TEL(06)6441-5741
【使用用途】
あらゆるがんの皮膚転移、皮膚直下の筋肉・組織への転移等の放射線(電子線)治療において、「シーラーSTR」を使用することで、皮膚の表面に直接装着した状態での照射や、照射範囲を患者の治療部位の大きさや形に合わせた患者の個別化治療も可能となります。これにより患者の呼吸によって放射線を当てたい腫瘍の部分が動く場合や、放射線を当てる範囲が小さい場合にも、合併症の少ない高精度な治療が期待できます。また、これまで使われていた低融点鉛合金(鉛、錫)に比べ、加工時間が大幅に短縮されるため、早期に治療することで再発率が低下するケロイドの治療などでは、本製品により治療の開始を早められる可能性があります。鉛のような毒性がなく、成型しやすいため、患者や医療スタッフの負担を減らし、安全かつ患者の個別化治療の提供が可能となります。
【今後の展望(東洋メディック株式会社コメント)】
販売にあたり、医療業界分野では2~10億円規模の市場があると思われ、数年で年間1億円規模の受注となると見込んでいます。
一般市場向けの販路を拡大しつつあり、今後さらに工業や産業向け遮蔽材として、また鉛に置き換わるものとして海外市場も含め展開を見込んでいます。
【早川ゴム株式会社概要】
所在地 :広島県福山市箕島町南丘5351番地(本社)
代表者 :代表取締役社長 横田 幸治
創 業:大正8年(1919年)3月
資本金 :(払込資本金)494,336,000円
従業員数 :363人 ※ 令和2年(2020年)4月現在
ホームページ:https://www.hrc.co.jp/
【東洋メディック株式会社概要】
所在地 :東京都新宿区東五軒町2-13
代表者 :代表取締役社長 竹内 靖治郎
創 業:昭和57年(1982年)7月
資本金 :67,000,000円
従業員数 :170人 ※ 令和2年(2020年)10月現在
ホームページ:https://www.toyo-medic.co.jp/
【関連リンク】
医学部 近畿大学病院 准教授 門前 一(モンゼン ハジメ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/1301-monzen-hajime.html