鎮静下内視鏡のリスク軽減に向けた研修を実施 ライセンス化で医師の意識・技術の向上へ

近畿大学医学部附属病院(大阪狭山市)は、平成30年(2018年)6月5日(火)より鎮静下内視鏡施行研修を開始し、当院が発行するライセンスを持つ医師のみが院内で鎮静下内視鏡を行える独自のシステムを構築しました。平成31年(2019年)1月現在で、46名の医師がライセンスを取得しています。本件の成果について、平成31年(2019年)2月9日(土)に東京で開催される日本医療安全学会にて、安全管理部医療安全対策室 室長・教授 辰巳 陽一のチームが発表します。

【本件のポイント】
●医師だけでなく看護師や薬剤師など多職種の専門知識を結集し、鎮静下内視鏡施行研修を考案
●これまでに消化器内科・腫瘍内科・呼吸器内科の医師計46名がライセンスを取得
●ライセンスを発行された医師が鎮静下内視鏡を施行することで、患者のリスクを軽減

【本件の概要】
近年、消化管や気管支内視鏡検査時に苦痛や不安を取り除くことを目的として、鎮静下内視鏡検査の希望が増加しています。内視鏡検査で使用する鎮静剤は麻酔薬の一種で、受け答えができる程度に意識を朦朧とさせ(中等度鎮静)、検査による苦痛や不快感などを緩和します。その際の鎮静は、全身麻酔と比較して危険性が低いと軽く考えられる傾向にありますが、心血管・呼吸器などへの重篤な副作用のリスクが存在し、国内でも死亡事故が発生しています。日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは、検査中の呼吸循環動態の適切なモニタリングが強く推奨されています。当院では、鎮静下内視鏡検査を安全に施行するためには、術者の鎮静薬の作用機序(※)、鎮静薬投与時の手順、合併症、そしてモニタリングの基本的知識の習得が必要不可欠と考えました。そこで、医師、看護師、薬剤師など多職種が集まる医療安全対策室と麻酔科チームがそれぞれの専門知識を持ち寄って、鎮静下内視鏡検査を施行する医師全員を対象に鎮静下内視鏡に関する講習会と2日間の実地研修を開催し、認定された医師にのみライセンスを交付し鎮静下内視鏡施行を可能としました。
このような病院全体での安全管理のための取り組みは全国の医療機関でも非常に珍しく、当院ではこのシステムの構築により、より安全な内視鏡検査を目指してまいります。
(※)薬物が生体に何らかの効果を及ぼす仕組み、メカニズムなどを意味する

【講習について】
(1)講習
・鎮静下内視鏡施行医療者対象の麻酔講習を受講
・内容:静脈鎮静薬の基礎知識と合併症・モニター管理、静脈鎮静が難しい患者の見分け方、静脈鎮静時の危機的状況での対応など

(2)申込
・手術室実習希望を麻酔科指導医担当者、安全対策室担当者へ申込

(3)実習
・「導入の手順=急変の手順」と認識を統一。麻酔導入と覚醒の過程を体験実習
・内容:手術部での鎮静下気管内挿管の手順、鎮静薬・鎮痛薬の使用法など
・手術室での実習日数は2日間(合否判定あり)

(4)認定
・「修了証書」と「鎮静下内視鏡施行講習修了認定証」(職員証明書カードケースに常時携帯)の発行
・有効期間は3年間

(1)~(4)
・有効期間終了後、再度(1)~(4)を実施

【発表学会】
第5回 日本医療安全学会学術総会

■日時:平成31年(2019年)2月9日(土)10:00~10:50
■場所:(第6会場)東京大学法文1号館3階27番講堂(東京都文京区本郷7-3-1)

・近畿大学医学部附属病院における鎮静下内視鏡ライセンスプログラム導入について
吉田和恵 1),栁江正嗣 1),西川三恵子 1),冬田昌樹 2),大田典之 2),中尾慎一 2),辰巳陽一 1)
1)近畿大学医学部附属病院安全管理部,2)近畿大学医学部附属病院麻酔科

【関連リンク】
医学部附属病院医療安全対策室 教授 辰巳 陽一(タツミ ヨウイチ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/586-tatsumi-youichi.html

医学部附属病院 准教授 大田 典之(オオタ ノリユキ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2184-ohta-noriyuki.html

医学部医学科 教授 中尾 慎一(ナカオ シンイチ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/591-nakao-shinichi.html

鎮静下内視鏡施行研修の様子
鎮静下内視鏡施行研修の様子

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