超小型人工衛星「宇宙マグロ1号」プロジェクト! 国際宇宙ステーションからの放出をパブリックビューイング
近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)電気電子通信工学科准教授 前田 佳伸、同理学科物理学コース講師 信川 久実子らの研究グループは、同グループが開発した10cm角の超小型人工衛星「宇宙マグロ1号(SpaceTuna1)」が、国際宇宙ステーション(ISS)内にある日本の実験棟「きぼう」から放出されるのに合わせて、令和4年(2022年)12月2日(金)に東大阪キャンパスにて、放出の様子を見守るパブリックビューイングを行います。
【本件のポイント】
●超小型衛星「宇宙マグロ1号」が、国際宇宙ステーション内の日本の実験棟「きぼう」から宇宙空間へ放出
●放出の様子を衛星中継で繋ぎ、研究に関わる学生と関係者でパブリックビューイングを実施
●学生が組み立てて完成させた超小型衛星が、宇宙空間へ放出される瞬間をカウントダウンして見守るイベント
【本件の内容】
近畿大学理工学部電気電子通信工学科准教授 前田 佳伸、同理学科物理学コース講師の信川 久実子らの研究グループが開発した、10㎝角の超小型人工衛星「宇宙マグロ1号(SpaceTuna1)」は、三井物産エアロスペース株式会社提携の米国スペースフライト社のプログラムで、令和4年(2022年)11月7日(月)に打ち上げられました。現在、国際宇宙ステーション(ISS)内にある日本の実験棟「きぼう」にある「宇宙マグロ1号」が、このたび宇宙空間へ放出されることを受け、本プロジェクトに関わった学生・関係者で衛星中継を視聴し、その様子をカウントダウンして見守ります。
【パブリックビューイング実施概要】
日時 :令和4年(2022年)12月2日(金)16:00~17:00
場所 :近畿大学東大阪キャンパス6号館 THE GARAGE(ザ ガレージ)
(東大阪市小若江 3-4-1、近鉄大阪線「長瀬駅」から徒歩約10分)
参加予定:プロジェクトに関わる学生、株式会社エクセディ、日本カーバイド工業株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構の関係者ほか 約15人
JAXAによるライブ配信URL:https://youtu.be/oWabTGG4plc
【研究の詳細】
「宇宙マグロ1号」は、近畿大学と株式会社エクセディ(大阪府寝屋川市)、日本カーバイド工業株式会社(東京都港区)が共同開発した、反射特性を最適化した再帰性反射シートを装着した超小型人工衛星です。本衛星に、地上から約400㎞離れた地球周回軌道上の「宇宙マグロ1号」にレーザーを照射し、反射強度の基礎データを実測します。近畿大学と共同研究を行う国立研究開発法人情報通信研究機構(東京都小金井市、以下NICT(エヌアイシーティー))宇宙通信システム研究室協力の下、NICTの光地上局の大型望遠鏡から、衛星に向けてレーザーを照射し、望遠鏡の受光器で反射光を観測します。人工衛星は地上に対して秒速約8㎞で移動していますが、NICTの望遠鏡設備は高速追尾が可能です。
今後約1年間の運用期間中は、レーザー照射を定期的に行って反射光強度の経年変化を測定し、宇宙空間における再帰性反射材の劣化具合をモニターすることで、再帰性反射材の宇宙耐性を調査します。
また、レーザー照射のためには衛星の軌跡を知る必要があることから、「宇宙マグロ1号」には青色LEDを搭載し、その光を地上の望遠鏡で探索することで、衛星の位置を特定します。LEDの点灯周期はドミソの3和音の周波数に設定しており、周波数解析によって「宇宙マグロ1号」であることが特定しやすくなります。
【今後の展望】
本研究は、持続可能な宇宙事業開発への貢献を目指すもので、再帰性反射材によるレーザー反射の技術を応用すれば、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の回収に役立つことが期待されます。例えば、あらかじめ衛星に再帰性反射材を取り付けることで、衛星がデブリ化した場合も、地球や他の健全な衛星からレーザー照射をすることで、デブリ衛星の詳細な位置が測定でき、回収に役立つと考えられます。
「宇宙マグロ1号」は、学生の「超小型衛星を作りたい」という強い思いから始まったプロジェクトで、学生が自らの手で組み立てて衛星を完成させました。近畿大学における継続的な「宇宙人材」育成のため、2機目の超小型衛星の開発を目指しており、本学の工学分野の研究者と宇宙科学分野の研究者が協力し、地球大気の測定や天体観測を行える超小型衛星を開発・打ち上げることで、SDGsへの貢献や宇宙の謎の解明に寄与していきます。
【再帰性反射材】
再帰性反射とは、光源からの光が再び光源方向へ帰る現象です。「宇宙マグロ1号」には、プリズム型の再帰性反射材を取り付けています。これは、直角三角錐型のプリズムをシート表面に並べ接着したもので、入射光はプリズム面で高輝度の再帰性反射を起こします。近畿大学と日本カーバイド工業株式会社が開発した反射材は、高精度直角三角錐のサイズを市販品の5倍以上にすることで、長距離反射伝送を実現しました。
【関連リンク】
理工学部 電気電子通信工学科 准教授 前田 佳伸(マエダ ヨシノブ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/444-maeda-yoshinobu.html
理工学部 理学科 講師 信川 久実子(ノブカワ クミコ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2460-nobukawa-kumiko.html