新型コロナウイルスワクチン職域接種 近大東大阪キャンパス会場で約23,500人に2回接種が完了
近畿大学(大阪府東大阪市)は、令和3年(2021年)6月21日(月)から東大阪キャンパスにおいて新型コロナウイルスワクチンの職域接種を実施しました。8月6日(金)で2回目の接種が終了し、接種者数が確定しましたのでご報告します。学生・教職員や外部団体等を合わせて約23,500人が2回の接種を完了しました。1回目接種者の2回目接種割合は98.3%でした。
今後、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた学生・教職員の希望者を対象に定期的な抗体検査を実施し、ワクチンの効果や持続期間を検証します。約1年間にわたり、継続した調査を実施することで、ワクチンの追加接種の必要性など今後の感染対策に寄与することをめざします。
【本件のポイント】
●東大阪キャンパスでのワクチン職域接種において、約23,500人に2回の接種を完了
●1回目接種者23,925人のうち、23,529人(98.3%)が2回目を接種
●今後はワクチン接種者に対して継続的に抗体検査を実施し、ウイルスに対する抗体価を測定
【本件の内容】
近畿大学は、感染拡大の早期終息をめざす政府の方針に協力するとともに、地域自治体の負担軽減や国民全体のワクチン接種の加速化に貢献するため、令和3年(2021年)6月21日(月)から東大阪キャンパスにおいて新型コロナウイルスワクチンの職域接種を実施しました。2回目の接種期間が8月6日(金)で終了し、最終的に学生・教職員等を合わせて19,621人が2回の接種を受けました。また、大学周辺の長瀬駅前商店街振興組合、東大阪市内の私立保育所の保育士、大阪樟蔭女子大学および大阪教育大学の学生のほか、文部科学省「留学予定者ワクチン接種支援事業」の要請を受け留学予定者にも接種を実施し、3,908人が接種を受けました。
今後、学生・教職員に実施したワクチン接種の効果を検証するため、希望者を対象として1年間にわたり継続した調査を行います。3カ月に1回、採血による抗体検査を実施して、抗体価(抗体の量や強さ)を測定し、その推移を観察します。費用は大学が負担し、調査対象者は無料です。ワクチンの効果や持続期間を検証することで、ワクチンの追加接種の必要性など今後の感染対策に寄与するとともに、学生がキャンパスライフや研究活動等に安心して取り組める環境を整えます。
【職域接種の実施結果(2021年8月6日現在)】
(1)近畿大学
・大学の学生(東大阪・奈良キャンパスの通学課程(大学院生含む)) 16,678人
・大学の学生(通信教育課程) 215人
・教職員等(委託業者等も含む) 2,602人
・高等専門学校の学生 126人
(2)学外団体
・長瀬駅前商店街振興組合関係者 184人
・東大阪市内の私立保育所の保育士等 995人
・大阪樟蔭女子大学の学生 1,050人
・大阪教育大学の学生 1,593人
(3)文部科学省「留学予定者ワクチン接種支援事業」
・留学予定者 86人
総合計 23,529人
【2回目接種終了時の通学課程の学生接種率(大学院生を含む)】
東大阪キャンパス 59.7%(接種済:14,913人/対象者:24,980人)
奈良キャンパス 60.4%(接種済:1,765人/対象者:2,921人)
合計 59.8%(接種済:16,678人/対象者:27,901人)
【職域接種の実施概要】
日 程:1回目…令和3年(2021年)6月21日(月)~7月9日(金)
2回目…令和3年(2021年)7月19日(月)~8月6日(金)
会 場:近畿大学東大阪キャンパス 記念会館(大阪府東大阪市新上小阪3-4)
対象人数:<学内>東大阪・奈良キャンパス、
通信教育部の学生・大学院生と教職員(非常勤含む)
約34,000人 ※ 希望者のみ
<学外>長瀬駅前商店街振興組合、東大阪市内の私立保育所の保育士、
大阪樟蔭女子大学および大阪教育大学の学生
約4,000人
規 模:1日 最大2,000人
【接種状況に関する医学部免疫学教室教授 宮澤 正顯のコメント】
27,000人以上を対象とした通学課程の学生への接種では1回目・2回目とも対象者に対する接種率は約60%で、1回目接種を受けた人の大半は2回目の接種を受けています。わが国の1日当たり接種回数は、7月上旬の約140万回をピークとして8月に入ると減少し、全国の65歳未満の2回接種率は8月15日時点で2割未満、大阪府でも13%程度と見積もられていることから、本学における通学生のワクチン接種率は高いと言えます。
しかしながら、変異株の感染が拡大している現在、この接種率で学生たちの間で感染が拡がるのを防げると安心することはできません。ファイザー社のmRNAワクチンはこれまで感染の主流であったアルファ株に対して、2回接種で93%以上、その後急速に流行の主流に置き換わったデルタ株に対しても88%の発症阻止効果を示すとの報告があり(※1)、モデルナ社のmRNAワクチンも、デルタ株流行後でもファイザー社のワクチンと同程度以上の重症化阻止(入院回避)効果を示していると言われますが、一方でデルタ株は鼻や喉でのウイルス量が多く、いずれのワクチンを接種していても、無症状のまま他の人たちに感染を拡げる可能性があるとも指摘されています。つまり、「2回のワクチン接種を受けていれば、自分自身が発症し、重症化する可能性は相当低くなる、しかし、知らないうちに感染して、周囲の人たちにウイルスを拡げてしまい、もしもその人たちがワクチンを受けていなければ、発症し重症化する可能性はある」ということになります。このため、米国のCDCもこれまでの方針を変更し、ワクチン接種を受けた人たちに対しても、感染者の多い地域の屋内ではマスクを着用するよう推奨しています。ワクチン接種を受けたからと安心せず、これまで通り集団での会食や会話は避け、マスクの着用を続けていただきたいと思います。
なお、3回目接種の可能性ですが、ファイザー社やモデルナ社も、新たな変異株に対応した追加接種用ワクチンを開発しています。しかし、現時点では上記の通り、これまでのワクチンの2回接種でデルタ株に対しても十分高い発症阻止効果が認められていますので、今すぐ3回目接種を考える必要はありません。しかし、免疫抑制薬などを使っている患者の方々に対しては、3回目接種を検討する動きがあります。抗体価の持続を心配する声もありますが、2回接種後には多くの例で高い中和抗体価が得られており、これは記憶細胞が形成されていることを示します。たとえ抗体価が低下してきても、記憶細胞は長く生き残っていますので、もしも感染しても、ウイルスを素早く排除し、発症を防げるはずです。
(※1)(Bernal et al. New Engl. J. Med.385:585-594, 2021)
(※2)(Puranik et al. https://doi.org/10.1101/2021.08.06.21261707)
宮澤 正顯(みやざわ まさあき)
医師/医学博士/近畿大学医学部免疫学教室教授/近畿大学大学院医学研究科長
昭和57年(1982年)東北大学医学部を卒業。東北大学助手、アメリカ合衆国国立保健研究所(NIH)客員共同研究員、三重大学医学部助教授(生体防御医学講座)を経て、平成8年(1996年)より近畿大学医学部免疫学教室教授。現在、近畿大学遺伝子組換え実験安全主任者、バイオセーフティー委員長、医学部共同研究施設長、大学院医学研究科長などを兼務。死体解剖資格(厚生労働省)を持つ元・病理医で、厚生労働科学研究費エイズ対策研究事業の研究代表者なども務め、平成14年(2002年)にはノバルティス・リウマチ医学賞受賞している。専門はウイルス感染免疫学。
【定期的な抗体検査の実施概要】
調査期間:令和3年(2021年)10月~令和4年12月(予定)
対 象:ワクチンを接種した近畿大学の学生・教職員のうち希望者に実施予定
調査方法:メディカルサポートセンターにおいて、調査対象者に対し、1年間、3カ月に1回採血による抗体検査を実施し、抗体価の推移を観察
【ワクチン接種推進の取り組み】
(1)学長から学生へのメッセージと、本学の職域接種実施に向けた取り組みをまとめた動画を、公式ホームページで公開
https://www.youtube.com/watch?v=X8_nvSUQaNc
(2)近畿大学医学部免疫学教室教授 宮澤 正顯による、ワクチンが働く仕組みと効果についての解説動画を、公式ホームページで公開
https://www.youtube.com/watch?v=E-utEiob-b4
(3)ワクチン接種に向けた学長メッセージ(テキスト)を公式ホームページで紹介
https://www.kindai.ac.jp/news-pr/topics/2021/06/032795.html
【関連リンク】
医学博士 医学部 医学科 宮澤 正顯(ミヤザワ マサアキ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/490-miyazawa-masaaki.html