小学校英語教育、「音」を大切にした読み書き指導を

「英語のリタラシー指導」を専門とされる青山学院大学のアレン玉井光江教授

 新学習指導要領がスタートして1年。小学校3・4年生の子どもたちは「聞くこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」の3領域にフォーカスした音声面を中心に学んでいますが、5・6年生では「読むこと」「書くこと」を加えた教科として学ぶようになりました。
 ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)では、幼児期から小学校卒業までの効果的な読み書き指導のあり方について、青山学院大学のアレン玉井光江教授にインタビューを行った記事を公開しました。アレン玉井教授は「英語のリタラシー(読み書き)指導」がご専門です。

リタラシー指導とは?

アレン玉井光江教授の授業風景

 アメリカの大学でTESL(第二言語としての英語教授法)/TEFL(外国語としての英語教授法)の修士号を取得し、日本に帰国後は大学付属の子ども英語教育センターで英語を教え、当初は音声(リスニングやスピーキング)中心の授業をしていたというアレン玉井教授。英語圏で育った帰国子女の子どもたちに英語を教えたときに、海外滞在年数が長く発音が良くても、読み書き能力が低い子もいること、英語にふれる機会が少ない日本の環境では、「聞く・話す」という音声の力だけで英語力を保持していくのは限界があることを実感。また、日本育ちの子どもたちを教えるなかでも、小学校卒業までに身につけた「音」の力を中学校に入ってからどれだけ正しく評価してもらえるのか、という課題があり、「音を聞く力・話す力を適切に保持して次の学習につなげていくには、文字というものが絶対に必要だなと思うようになりました」と言います。
 
 「大切に育てた音声指導の結果を残せるかどうかは、効果的なリタラシー指導を行えるかどうかによります。文字を通して音を定着させていく、という考え方に代わっていきました」。いまでは「4技能統合」と呼ばれる考え方ですが、アレン玉井教授が唱える「文字教育」や「リタラシー指導」は、あくまでもしっかりとした音声指導のうえに成り立つものです。
 
 「リテラシー」は「情報リテラシー」など、いろいろな意味で使われていますが、アレン玉井教授は純粋に「読み書き」という意味を強調したいという思いから、英語の発音に近い「リタラシー」ということばを使うことにしたとのこと。また小学生を対象とすると、とかく文字指導のみが強調されますが、それ以上の読み書き能力を育てていきたいという意味もあるそうです。「それ以上」とは、例えば、アルファベットを読んだり書いたりするレベルではなく、さらに、英語の単語が読める、英語の文章が読めて理解できる、というレベルの読み書き能力で、リーディング、ライティングにつながる力を小学校で育てる、ということ。文部科学省の学習指導要領に書かれている指導目標「イ」に当たるものだと言います。

<小学校学習指導要領 外国語活動・外国語編>(文部科学省, 2017)
第2章 外国語科の目標及び内容
第2節 英語
1 目標
(2)読むこと
ア 活字体で書かれた文字を識別し、その読み方を発音することができるようにする。
イ 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする。

「多くの先生方が『ア』のレベルは指導していますし、教科書にも載っています。でも、『イ』の指導についてはどのように指導してよいのか明確に示されていないと思います。ややもすると文や単語の丸覚え、または写字で終わってしまいます。『ア』のレベルから『イ』のレベルに指導するには、教員としてのリーディング指導に関する知識、理論的バックグラウンド、訓練が必要です。」

リタラシー指導は「体型的」&「明示的」に行う

 アレン玉井教授は、「音声言語は5万年前から存在しているけれど、文字言語は5千年前からと言われています。音声言語は自然に生まれた言語ですが、文字言語はそうではありません。ですから、人が教えなければできるようになりません。だから、文字が読めない人たちは貧困に陥ってしまうんです。」とも話します。
 
「読み書きは、エンパワーメント(社会的地位の向上)になります。日本人は、いままでは、日本語の読み書きができればよかったのですが、これからは、きっと英語の読み書き力が経済格差を広げていくと思います。私は、そのようになってほしくない、という想いをもって、英語にふれる機会があまりない公立小学校の子どもたちに英語のリタラシー指導をしています。」
 
 「日本語の文字は、小学校6年間かけて学びますよね。でも、英語の場合は、5・6年生だけでアルファベットを読んで書けるようにして、さらに単語を読んで書ける力につなげなければならない。ちゃんとした指導プログラムを計画しなければ、子どもたちが英語を嫌いになるのは当たり前です。」と話し、適切な指導プログラムが必要だと説きます。
 
 そして「時間がゆっくりある小学校段階でていねいに指導することが大切だと思います。リタラシー指導を避けていたら、中学校で大量の英語を覚えなきゃいけない、となったときに、子どもたちはどうなるでしょうか。単語の文字がわからない、読み方がわからない、となると、文を理解するとか、文法を理解するということは到底できません。すると、子どもは、テストのために丸暗記するだけになってしまいます。」と警鐘を鳴らします。
 
「読み書きは、自分ができているかどうか、ということが確実にわかる。読めなかった英語が読めるようになってくるわけですから、達成感が強い。読み書きは学びに向かう態度をつくり、自律学習を促進していく大きな活動である」とアレン玉井教授は教えてくれています。
 
 小学校におけるリタラシー指導について、より詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。

 ■ワールド・ファミリーバイリンガル  サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual  Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所   長:大井静雄(脳神経外科医・発達脳科学研究者)
所 在 地:〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7 パシフィックマークス新宿パークサイド1階
設   立:2016年10 月              
URL:https://bilingualscience.com/  

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