コロナ禍において女子高校生の約30%が孤独を感じている孤独感と関連する4つの因子を明らかに

近畿大学東洋医学研究所(大阪府大阪狭山市)所長 武田 卓を中心とする研究チームは、コロナ禍において日本の女子高校生の約30%が孤独を感じており、孤独感の因子として「高校2年生」「インターネット使用時間」「心理的苦痛※1」「月経前症候群※2重症度」の4つが関連していることを明らかにしました。
本件に関する論文が、令和5年(2023年)4月27日(木)AM0:00(日本時間)に、女性ヘルスケア領域のトップレベルの学術誌である"International journal of women’s health"にオンライン掲載されました。

【本件のポイント】
●コロナ禍初期に入学した高校2年生は、他学年よりも孤独を感じる率が高い
●孤独を感じている人は、深刻な心理的苦痛の有病率も高い
●「高校2年生」「インターネット使用時間」「心理的苦痛」「月経前症候群重症度」が、孤独感の関連因子であることが判明

【本件の背景】
新型コロナウイルス感染症は、世界中の人々の身体面・心理面に大きな影響を及ぼしてきました。なかでも、感染予防による社会活動の制限によって、以前よりも孤独感が増していると想定されます。孤独感は心理的な苦痛をもたらし、うつ病等の精神疾患のリスクを高め、高齢化社会や社会不適合と関連して世界的な問題となっています。パンデミック初期の調査からは、孤独感と自殺念慮※3 との関連性が報告されており、深刻な心理的苦痛は自殺の明らかなリスクとなります。
特に、思春期女性は、子供から大人への移行期であり、ストレスに対して脆弱であることが知られています。コロナ禍における心理的ストレスについて、精神面への影響は注目されていましたが、思春期女性における孤独感の実態とその関連因子はこれまで検討されていませんでした。そこで本研究では、思春期女性における孤独感と心理的苦痛、月経前症候群症状、新型コロナウイルス感染症に対する恐怖感の関連について調査しました。

【本件の内容】
新型コロナウイルス感染症オミクロン株による第5波に続き、第6波が起こり始めた令和3年(2021年)12月中旬、仙台市内の2つ高等学校の協力のもと、女子高校生1,450人を対象として、心理的苦痛尺度、月経前症候群症状評価尺度、孤独感尺度※4、新型コロナウイルス恐怖尺度※5 を評価する調査を実施しました。なお、調査時には、高校では通常の対面授業が行われており、社会生活の大きな制限もありませんでした。
調査に回答し、かつ月経周期が規則正しい907人を解析したところ、以下3点が明らかとなりました。
(1)29.0%が孤独であり、特に高校2年生が35.1%とより高率である。
(2)深刻な心理的苦痛の有病率が8.2%と高く、特に孤独群※4 では16.0%と高率である。
(3)孤独感の関連因子として、「高校2年生」「インターネット使用時間」「心理的苦痛」「月経前症候群重症度」があげられる。
孤独の有病率が特に高率であった高校2年生は、コロナ禍初期の令和2年(2020年)4月に入学した学年であり、高校入学という社会的変化の大きな時期に緊急事態宣言等による休校が重なり、新たな人間関係形成がうまくいかず、その後も継続して孤独感を感じている可能性が考えられます。思春期女性は特にストレスに対して脆弱であることを考えると、今回の調査で明らかとなった、高率の孤独感や心理的苦痛が持続していることに対して、医療従事者や学校保健関係者は特別な注意をはらう必要があるといえます。

【論文掲載】
掲載誌:International journal of women’s health
(インパクトファクター:2.59@2022)
論文名:Association between loneliness, premenstrual symptoms, and other factors during the COVID-19 pandemic: A cross-sectional study with Japanese high school students
(COVID-19パンデミック時の孤独感、月経前症状、その他要因との関連性:日本の高校生を対象とした横断的研究)
著者 :近畿大学東洋医学研究所 所長 武田 卓

【用語解説】
※1 心理的苦痛:外的なストレスとストレスに対する脆弱性により心理的苦痛が引き起こされ、うつや不安のリスクを増大させる。K6(米国のKesslerらによって、うつ病・不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることを目的として開発された調査票)が広く評価に使用されており、本研究でも使用した。13点以上が深刻な心理的苦痛として定義される。
※2 月経前症候群:月経前、3~10日のあいだ続く精神的あるいは身体的症状で、月経とともに減少または消失する。イライラ・おちこみ・不安感といった精神症状と、腹部膨満感・乳房症状といった身体症状が認められる。評価には、PSQ(武田らが開発した月経前症候群症状11項目と社会生活3項目を評価する調査票)を使用した。
※3 自殺念慮:死にたい気持ち。自殺願望。
※4 孤独感尺度:UCLA孤独感尺度(第3版)短縮版3項目(Russellが開発した白記式孤独感尺度の改訂第3版)を用いて評価した。6点以上が孤独とされ、今回の研究では「孤独群」に分類した。
※5 新型コロナウイルス恐怖尺度:FCV-19S(Ahorsu DKらが開発した、新型コロナウイルスに対する恐怖感を定量化する調査票)を用いて評価した。

【関連リンク】
東洋医学研究所 教授 武田 卓(タケダ タカシ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/818-takeda-takashi.html

近畿大学東洋医学研究所
https://www.med.kindai.ac.jp/toyo/


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