機能性セラミックス薄膜複合フレキシブル基板の開発に関するお知らせ

フレキシブルPb(Zr,Ti)O3単結晶薄膜/FPC
フレキシブルPb(Zr,Ti)O3単結晶薄膜/FPC

太洋工業株式会社(和歌山県和歌山市)研究開発部と近畿大学生物理工学部(和歌山県紀の川市)医用工学科教授・西川 博昭の研究グループは、共同研究により、「機能性セラミックス薄膜複合フレキシブル基板」を開発しました。
太洋工業株式会社はこれまでも、任意形状伸縮・ねじれに対応可能な高柔軟FPC(フレキシブルプリント配線板)や総厚20㎛以下の超極薄FPC等、小型かつ高機能な電子機器向けに欠かせない基板加工技術を開発しており、西川教授が保有するナノメートルレベルの厚さで機能性単結晶セラミックス極薄膜を作製する技術と、その薄膜を変質させずにフィルムに転写する独自技術により、硬くて脆いセラミックスを高い機能性を維持したままで屈曲させることが可能となります。

【本件のポイント】
●近畿大学生物理工学部の研究グループ独自のセラミックス単結晶薄膜転写技術と、太洋工業株式会社のFPC開発技術を組み合わせることに成功した。
●電極を備えたFPCに、本来は硬くて脆いセラミックス単結晶薄膜を直接接合でき、機能性を維持したまま柔軟性のあるシート状のデバイスを開発することができる。
●人体、交通・水道など各種インフラの表面に沿った非侵襲超音波画像診断、指紋・静脈認証等の入力用センサ、柔軟性を生かしたIoTデバイス向け発電等の応用等を通して社会実装をめざす。

【本研究の内容】
今回の共同研究において、機能性セラミックス薄膜とFPCとを複合化するプロセスを開発しました。
一般的に電子機器は、製造された基板にセラミックス等からなる電子部品を半田で実装し、通電することで電子機器としての機能性を示します。セラミックス等からなる電子部品は一般に硬くて脆いことから、屈曲性の必要な部位や、曲面に沿わせる状態の使用は不可能でした。それと共に、セラミックスの製造時には数百から1000℃程度の加熱・焼成が必要となることから、耐熱性の劣る樹脂フィルム、及び樹脂を使用する基板材料上に直接形成することは不可能です。
FPCなど樹脂を使用する基板材料上に機能性セラミックス薄膜を転写する従来技術では剥離・ひび割れが深刻だったのに対し、機能性セラミックス薄膜を電極とともに転写する西川教授の独自技術では、現状用いられている機能性セラミックスの性能はそのままに、剥離・ひび割れなく機能性部品と基板全体を柔軟性のあるシート状のデバイスにすることが可能となります。
開発した機能性セラミックス薄膜複合FPCでは、近畿大学の研究グループの単結晶薄膜転写技術と、太洋工業株式会社のFPC加工技術を組み合わせて応用することにより、FPCに形成した電極上に直接、機能性を有するセラミックス薄膜を接合し、通電により機能性を発現させることに成功しました。
現段階ではフレキシブルPb(Zr,Ti)O3単結晶薄膜とFPCの複合化を実施しており、柔軟性かつ強誘電性を示し、圧電素子として機能することが確認できており、従来のセラミックスの塊を実装する技術では成し得なかった活用が可能になると考えています。具体的な使用用途としては、全体がフレキシブル化されたシート状の超音波素子を想定しており、人体をはじめ交通・水道など各種インフラの形状に沿った非侵襲の超音波画像診断装置の応用や、指紋・静脈認証等の各種デバイスの入力用センサとしての応用、柔軟な性状を生かしたIoTデバイス向け発電素子としての応用等を見据えて社会実装を目指していきます。
今後、2023年度中のサンプル出荷を目指し、詳細なスペック調査や最適化等、更に開発を進める予定です。

【研究資金】
本研究開発の一部は、公益財団法人わかやま産業振興財団 未来企業育成事業の補助を受けて実施しました。

【関連リンク】
生物理工学部 医用工学科 教授 西川 博昭(ニシカワ ヒロアキ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/355-nishikawa-hiroaki.html

生物理工学部
https://www.kindai.ac.jp/bost/


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