簡単に紙おむつにはさせたくない!トイレ排せつ復活にかける信念ある取組みを公開

福島原発22km特別養護老人ホーム(福島県双葉郡広野町)における排せつの自立支援の実践と効果

花ぶさ苑の看護師渡邉さん(写真左)とユニットリーダー原中さん(写真右)

株式会社クララケア・サポート(所在地:宮城県仙台市 代表取締役 館 亜美)は、介護福祉業界における排せつケアの改善を目指して、全国的にも東北としても先進的な取り組みをされている特別養護老人ホーム「花ぶさ苑」(福島県双葉郡広野町)の活動を紹介するインタビュー記事をサイト上で公開いたしました。
(公開URL: https://newscast.jp/news/4326347 )

■背景

2010年4月に開所した特別養護老人ホーム花ぶさ苑(定員40名)は、福島県双葉郡広野町にある、特養である。
しかし、開所後1年経たずして、2011年3月11日、東日本大震災が発生。
東京電力福島第一原子力発電所事故から22km離れた同施設は、放射能汚染を避けるために全入居者全職員退去を余儀なくされ、入居者十数名が職員、自衛隊員とともに宇都宮にある特養に移り、その後1年間生活を余儀なくされた。
しかし、高齢となるまで長年暮らし続けた故郷を忘れられないと、入居者はつぎつぎ、「戻りたい」「帰りたい」言って亡くなられた方もいらっしゃった。そのような状況を憂慮し、1年後の2012年4月17日、入居者と職員が元の広野町の場所に戻り、花ぶさ苑が再開することとなった。

特別養護老人ホーム花ぶさ苑外観

■福島県双葉郡広野町にある唯一の特養

取材当日、当方はいわき市中心部から車で40分、初めての道を車のナビづたいに運転して、花ぶさ苑に向かう。あと、3分で到着の距離に安堵したころ、突然右折マークがナビで指示されるが、道がない。当惑して苑に連絡をしたところ、別の迂回路を教えていただき、予定時刻より10分過ぎて到着となった。
震災時この地域では一部避難指示が出され、施設でも一時撤退を余儀なくされた道なき特養では、働き手の人員が慢性不足する悪条件が揃っている。しかしながらこの施設で、都市部の施設でもなかなか出来ない、排せつの自立に向けた個別ケアが無理なく行われていると聞いて大変驚いた。
それには、どんな理由とどんな実践があるのだろうと、関心をもち、半年以上も前から取材をお願いし、今回の承諾に至ったのである。

■内容

2012年4月、再開当時から、特養花ぶさ苑には、病院から退院して容態がある程度落ち着き、元の「生活」に主軸を置きたいご利用者が沢山入ってこられたという、そのほとんどが、紙おむつを終日つけて、寝たきりに近い状態の高齢者であった。
よくよくコミュニケーションをとってみると、自らトイレの訴えがなくても、なんとなく、便意尿意が促せそう、と思ったらまず、トイレにお連れしてみることが、この苑の方針だった。
寝たきりにならないよう覚醒の時間をつくる、トイレ動作の問題の有無、できない部分のお手伝い等、その方の身体状況に合わせて、問題の把握とどうずれば解決につながるか一人一人考え実施する日々であった、という。

ある時、某紙おむつメーカーが、昨今の人員不足による紙おむつ交換の時間と手間を削減するために、一日三回交換可能な商品を提案しに同苑を訪れたという。三回交換でもムレないモレない、サラサラして品質もよい、1枚単価は安いものではなかったが、三回交換に交換回数を減らせば、一日トータルのおむつ代は削減できる、それはよい方法だと話に乗った。
しかし、おむつの種類を変えてみてすぐ分かった。
皮膚の状態により、発赤が出る方や、排尿間隔が短く何度も排尿してしまう方には、もっとその方に適切なタイミングで交換してあげたい、私たち自身のことを考えると日中6、7回排尿がでるのは普通のことで、一日三回の交換回数が合わない方が多くいる、また利用者の身体状況が変わってもケアを簡単には変えることができない。ましてや、その三回の交換時間は、メーカーの指示に従った時間で行ってくださいと言われる始末であった。
決められた時間でなければ、おむつ代が高くなってしまうという苦悩、しかしながら、「現場は現場が知っている」という自負もあった。
そのような経緯で、他者に決められるのではなく、私たちが思う最善のケアをしていこうと、昨年、再度紙おむつを見直し、様々な排せつ用具の情報を収集し施設内での勉強会や外部研修に出かけた。そこで、紙おむつに代わる下着左右開閉式パッドホルダーパンツ「LaSiQu(ラシク)」(※1)に出会った。

紙おむつ不要な方へ紙製パンツから布製パッドホルダーパンツへ

同時期、2018年4月からの介護報酬改定により「排せつの支援加算」が始まった。
国からのマニュアルが無い状態であったが、それ以前より、一人一人排せつアセスメントを行い、個別対応の支援計画を検討実施してきていたので、今までどおりの支援計画書を作成し、同4月からスタートさせた。(※2)
「苑への入所段階では、病院を退院してすぐ来られる方がほとんどで、紙おむつで寝たきり状態の方がほとんど、この状態から多くの方が、トイレにお連れし、日中紙おむつが取れる方が多いです」と看護師の渡邉さん。「排せつの自立を考えるときには、同時に飲んでいるお薬、下剤や眠剤等の量と種類、服薬の時間も見直します。日中、おむつを外してトイレに行っていただくことにより、すべての身体機能がアップするのが日に日に目に見えます。トイレ動作もリハビリの一環となり、会話や笑顔も増えます」とのこと。
ユニットリーダー原中さんも、「いま(の時代)は、紙パッドを入れられる左右開閉の専用下着(※1)があるので、以前よりはどのような方もおむつから下着に変えやすい、ご家族様もまさか病院ではおむつで寝たきりだったうちのおばあさんが下着でトイレに行けるようになるとは思わなかった、と感謝いただくことばが、何よりも私たちケア職にとって嬉しいし、自信となる、やる気を継続させてくれます」と語ってくださった。

排せつケアの自立支援をしたいと思いながら諸々の事情で実施できず、ケアを模索している高齢者施設はとても多い。だが、数年前この日本中でもっとも過酷な状況であった福島県双葉郡広野町にある特養で、最善のケアを行っているところがあること、決して人材不足だからケア不足にはならないことを立証している施設があることをお伝えしたい。

※1 (株)クララケア・サポート社製 左右開閉式パッドホルダーパンツ「LaSiQu(ラシク)」

http://claracare.strikingly.com/

※2 2018年度特養における排せつの支援加算全国実施率約3.7%
(平成30年度介護報酬改定の影響に関するアンケート)2018.11

左右開閉ができ、内部に市販用の紙製パッドを入れて使用します
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