子どもの認知能力レベルに合わせた文法指導に関する記事公開

「文法を使って意味を表そうとしているか」というプロセスを評価 

「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所」(※以下、IBS)ではグローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信しています。

英語教育を考えるうえで、学校の授業は欠かせませんが、日本の子どもたちのなかには「文法が難しい」という理由で、苦手に感じることが多いようです。そこで、IBSは学習者がどのように英語の文法を習得していくのか、日本人にとって難しい文法とは何か、どのような学習方法が効果的なのかについて、慶應義塾大学の中浜教授(応用言語学専門)にお話を伺い、記事として公開しました。  

「a/an」と「the」の使い分けなど、母語にない形式は習得が難しい

慶應義塾大学の中浜教授

 中浜教授によれば、第二言語習得分野の中で、言語間影響(crosslinguistic  influence)や言語転移(language transfer)という用語があり、言語間の特徴が違えば違うほど習得が難しいと言われています。
なかでも日本語と英語の場合、上級レベルになっても習得しづらいと言われているのが、冠詞です。あとに続くのが母音だと「an」、子音だと「a」という文法規則は使えるようになるのですが、どういうときに定冠詞(the)を使うのか、どういうときに冠詞(a / an)を使わないのか、という判断は難しいようです。日本語には、このような冠詞がないからだと言います。  

 知識を使えるものにするため「knowing what」から「knowing how」へ

 「近年は、認知的アプローチ(広義では機能主義を含む)の考え方により、言語学習も、ほかのいろいろなスキル学習と同じである、と捉えられている」と中浜教授。Anderson (1995)によると、メタ言語的知識として取り入れた文法は「宣言的知識」とみなされていて、「knowing what」(それについて知っている)と言われているそうです。
「例えば、英語の語順はこうだ、と知っていることは『宣言的知識』で、一方、物事の手順やスキルなど、ことばでは言い表されない知識は、『手続き的知識』と呼ばれます。これは「knowing how」(どのようにやるかを知っている)です。自転車に乗れるようになるのと同じで、乗り方を覚え(knowing what)、それを練習して身につける(knowing how)。すると、何も考えずにできるようになる」と中浜教授は言います。  

 教室でだけ英語を学ぶ場合、「意味あるパターン」を抜き出す機会が少ない

  中浜教授はまた、毎日英語にさらされるESL環境(第二言語として英語にふれる環境)の場合は、「どういうときにどの言語形式を使うか」という社会的な言語使用における意味も同時に身につけていくものだと指摘。ところが日本で学ぶ場合は、教室から一歩外に出たら、日本語の環境になってしまいます。つまり、日本のようなEFL環境(外国語として英語にふれる環境)にいるEFL学習者の場合は、ESL学習者に比べ、環境の刺激から意味あるパターンを抜き出す機会が断然少なく、そのための動機づけも少ない、ということです。  

英語でYouTube動画や映画を見る、英語で本や雑誌を読むなど、英語学習環境を増やす

 「やはり多くの(文脈のある)インプットと有意味な言語活動がカギとなるのではないかと思います。とにかく使う機会を増やすために発話行為を中心とした指導方法にしながら、明示的な説明も加える。私は、このような、明示的アプローチと暗示的なアプローチのハイブリッド型指導を実践しています」と中浜教授。
EFL環境においては明示的な指導も必要になってくるのを実感していて、第二言語習得の研究結果を見ても、明示的指導のほうが効果を出しやすい場合が多いと言います。これは日本では教室の外に出ると日本語が話されている環境で、学習者が日常的に英語でフィードバックを受ける機会が少ないからです。
このため英語でYouTube動画や映画を見る、英語で本や雑誌を読むなど、どんな方法でもいいので、英語環境下に身を置いて、自律的に英語学習を進めていけるようにする必要があると中浜教授は勧めます。    

第二言語にふれ始める年齢が早いこととその後のコミュニケーション能力の関係について

 「私は、特にコミュニケーション能力育成という意味では、小学校から英語教育を始めることには賛成です」と中浜教授。
「ピアジェの知力発達モデルをもって考えても、7〜11歳ぐらいがconcrete operational stage(具体的操作期)で、知的レベルの育成のピークは7歳ぐらいだそうです。ですから、そのような年齢から、ゲームや絵本の読み聞かせなどを通してでもよいので第二言語(英語)に接していく、ということはとても重要だと思っています。神経筋の可塑性(発音に使う筋肉の柔軟性)という面から考えても、小学校低学年や就学前から第二言語(英語)にふれておくと、発音の習得も大人になってから学習し始めるよりは大変ではないでしょう」。
 
 
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。  

文法を実際に使えるようになるためのプロセスを解明 

前編

後編

ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所

(World  Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所   長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
所 在 地:〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7 
     パシフィックマークス新宿パークサイド1階
設   立:2016年10 月
U R L:https://bilingualscience.com/

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