立山連峰の積雪中から採取した菌で開発した「納豆」の販売を開始 納豆の起源の定説を覆す!?中国大陸から飛来する微生物に着目した研究成果

2024-06-03 14:00
産学連携で開発した「やまなっとう」

近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)生命科学科教授 牧輝弥ゼミは、納豆メーカーの株式会社金城納豆食品(石川県白山市、以下 金城納豆食品)と共同で、富山県の立山連峰の積雪中から採取した納豆菌の一種「バチルス株」で大豆を発酵させ、納豆の開発に成功しました。納豆の起源を研究するなかで開発したもので、「やまなっとう」と命名して商品化し、令和6年(2024年)6月3日(月)から金城納豆食品のオンラインショップで販売を開始します。

【本件のポイント】
●納豆の起源や伝来についての研究に取り組む理工学部の牧ゼミが、金城納豆食品と共同で納豆を開発
●立山連峰の雪中から採取した納豆菌の一種「バチルス株」を用いた納豆の開発に成功
●富山県産の丸大豆や醤油を用いるなど、富山県産の素材にこだわり商品化

【本件の背景】
中国大陸の砂漠から飛来する黄砂は、鉱物粒子だけでなく、微生物も一緒に日本へ運んできます。運ばれてくる微生物は数百種にも及びますが、その中には納豆菌の一種である「バチルス株」が多く含まれています。近畿大学理工学部生命科学科教授 牧輝弥はその点に着目し、「黄砂によって納豆菌が運ばれ、東アジアに納豆食文化をもたらしたのでないか」という仮説を立て、立証するためのさまざまな研究に取り組んでいます。
これまでは、納豆文化は中国奥地から陸路で日本各地に伝播したという「一元起源説」が優勢であったものの、黄砂が納豆菌を運ぶとなると、納豆菌が飛来したそれぞれの地域で納豆文化が独自に発展したという「多元起源説」も有力になり得ます。納豆の起源や伝来について、黄砂による微生物飛来というこれまでにない発想と着眼点で、いままでの定説を覆すような研究に挑んでいます。

【本件の内容】
上記仮説について検証するべく、黄砂が多く飛来するエリアである立山連峰の積雪中の黄砂からバチルス株を採取して分離培養※ し、大豆を醗酵させる実験を行いました。その結果、納豆独特の「糸引き」現象がみられ、独特のにおいを醸し出す納豆が生成できました。これにより、納豆菌が立山連峰の積雪中に眠っていたことが示されるとともに、黄砂が納豆菌を運んでくる可能性が確認できました。
今回の実験において、分離培養できたバチルス株は約60個にのぼり、いずれの株からも納豆を生成することができました。また、分離培養したバチルス株から生成する納豆の美味しさを検証すべく、牧が指導する研究室の学生が中心となり、約60株の中からひときわよく粘る30株を選別し、納豆の試作品づくりを繰り返し行いました。苦いものや粘りの弱いもの、においのしないものなどさまざまであるなか、「美味しさ」の観点で検証と議論を繰り返し評価した結果、16番目に採取した「Ty-16i」と称した株が商品化に最も適しているとの結論に至りました。
この「Ty-16i」を用いた納豆の美味しさを、立山連峰の地元である富山県をはじめ北陸の皆さまへお届けしたいという思いと、立山連峰ゆかりの逸品を全国に知っていただきたいという目的のもと、金城納豆食品と共同で「やまなっとう」と命名して商品化し、販売します。「やまなっとう」には富山県産の丸大豆を使用しているほか、付属のタレにはトナミ醤油株式会社(富山県砺波市)が手掛ける富山県産「トナミ醤油」を使用するなど、富山県産の素材にこだわり仕上げました。
※ 自然界に混在する微生物の中から1種類だけを抽出し、人工的な環境で育てること。

【販売概要】
商品名 :「やまなっとう」
販売開始:令和6年(2024年)6月3日(月)10:00
価格  :129円(税込)
販売方法:金城納豆食品オンラインショップにて販売
     https://www.kinjyo710.com/shop
     ※ 今後、北陸地方のスーパーなどでも販売予定
お問合せ:株式会社金城納豆食品 TEL(076)274-9898

【株式会社金城納豆食品】
所在地   :石川県白山市宮永町2844
代表者   :代表取締役社長 和田重樹
事業内容  :納豆の製造・販売
設立    :昭和25年(1950年)
資本金   :66,000,000円
ホームページ:https://www.kinjyo710.com/

【研究者のコメント】
牧輝弥(まきてるや)
所属  :近畿大学理工学部 生命科学科
職位  :教授
学位  :博士(農学)
コメント:「空気」と「食」を結び付けた、新しい発想から生まれた発酵食品です。より良い納豆にするために学生たちが検証と議論を一生懸命に行い、その成果が実を結びました。空気中を浮遊するさまざまな菌を食品に生かす取り組みを通じて、日本の食文化を科学のチカラで支えることができれば嬉しいです。

【関連リンク】
理工学部 生命科学科 教授 牧輝弥(マキテルヤ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2457-maki-teruya.html

理工学部
https://www.kindai.ac.jp/science-engineering/

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