ソフトウエア技術者の能力と加齢との関係を明らかに 中高年労働力の活用促進に期待

2020-09-17 00:00
ソフトウエア技術者の能力と加齢との関係

近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)情報学科准教授の角田 雅照らの研究グループは、ソフトウエア技術者の能力と加齢との関係について調査し、加齢による記憶力の低下によって、特定のプログラムでは理解により多くの時間を要することを明らかにしました。ソフトウエア開発技術者の人員不足が問題となる中で、加齢による能力低下を補うソフトが開発できれば、中高年労働力の活用促進につながります。
本件に関する論文が、令和2年(2020年)9月17日(木)AM0:00(日本時間)、電子情報通信学会が発行する英文論文誌“IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E104-D No.1”掲載予定論文としてオンライン公開されました。

【本件のポイント】
●技術者の能力のうち、特にプログラムを理解する能力について、加齢の影響を分析
●加齢による記憶能力の低下が、特定のプログラムの理解時間に影響する可能性を提示
●記憶能力の低下を補うソフトを開発することで、中高年労働力の有効活用が期待できる

【本件の背景】
近年、ソフトウエア開発の人員不足が指摘されており、いかにして技術者を確保するかが重要な課題となっています。高齢化社会の進展を考慮すれば、中高年技術者の活用が一つの解決策となり得ますが、程度の差こそあれ、加齢に従って人間の認知能力は低下することが問題となります。そこで、加齢による能力の低下を補うソフトウエアを開発することができれば、能力低下の影響を抑えて中高年技術者の労働力を活用できると期待されます。

【本件の内容】
本研究では、認知能力の一つとして技術者の記憶能力に着目し、加齢による記憶能力の低下が、プログラムを理解する時間にどのように影響するかを実験により分析しました。ソフトウエア開発においては、「保守」と呼ばれる、プログラムを修正する作業の割合が非常に高く、保守を行うためにはそのプログラムを理解する必要があるため、プログラムの理解に時間がかかるほど保守の作業効率が低下します。
実験では、「記憶能力の高低が理解時間に影響しにくいプログラム」と「記憶能力の高低が理解時間に影響しやすいプログラム」を用意し、被験者を若年グループ(22歳から24歳の24人)と中高年グループ(33歳から64歳の8人)に分けて、それぞれのプログラムの理解にかかる時間を計測しました。
その結果、「記憶能力の高低が理解時間に影響しにくいプログラム」では、若年グループと中高年グループの理解時間にほとんど差はありませんでした。一方で、「記憶能力の高低が理解時間に影響しやすいプログラム」では、中高年グループの理解時間が長くなるという結果が出ました。このことから、中高年グループは常に理解時間が長いわけではなく、記憶能力を必要とする場合のみ長くなる傾向があるといえます。

【今後の課題・展望】
今回の研究結果から、中高年技術者の記憶能力低下を補うソフトウエアの開発が望まれます。例えば、「記憶能力の高低が理解時間に影響しやすいプログラム」は、理解のために記憶すべき事項が多い傾向があるため、記憶すべき事項を自動的に記録して技術者が随時参照できるようなソフトウエアがあれば、理解速度の低下を防ぐことができると期待されます。

【論文掲載】
掲載誌:“IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E104-D No.1“
    (発行:電子情報通信学会)(インパクトファクター: 0.866)
論文名:Relationship between Code Reading Speed and Programmers’ Age
    (ソースコード読解速度とプログラマーの年齢との関係)
著 者:近畿大学大学院総合理工学研究科博士前期2年(当時) 村上 優佳紗
    近畿大学理工学部情報学科准教授 角田 雅照
    神戸大学大学院システム情報学研究科准教授 中村 匡秀氏

【関連リンク】
理工学部 情報学科 角田 雅照 (ツノダ マサテル)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/469-tsunoda-masateru.html

理工学部
https://www.kindai.ac.jp/science-engineering/

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