大阪大学公式クラウドファンディング(大阪大学×近畿大学 コラボプロジェクト) 腹部大動脈瘤の治療薬創出を目指して! ―「腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験」にご支援を―
【概要】
大阪大学医学部附属病院は、近畿大学農学部応用生命化学科と連携して、腹部大動脈瘤に対するヒト臨床試験の継続や規模の拡充に必要な費用に関して、支援を募るクラウドファンディングを9/9(月)9:00より開始しました。
このクラウドファンディングを通じて、腹部大動脈瘤の画期的な治療薬の創出を目指し、苦しむ患者さんを一人でも減らしたいと考えています。ぜひご周知のほどどうぞよろしくお願いいたします。
【クラウドファンディング実施の背景】
突然、命の危機に直面する腹部大動脈瘤。「名前は聞いたことがあるけど、どんな病気かよくわからない」という方々もいらっしゃるのではないでしょうか?この病気はお腹の最大の血管である腹部大動脈が、様々な原因でコブ状に膨れ無症状で進行し、ある時予兆なく破裂し命を奪います。直径が50mmを超えた場合に破裂を予防する手術を行うかが検討されますが、基本的にはそれ以下の小さい腹部大動脈瘤に対して予防的手術は行われません。また、進行を遅らせたり、瘤を小さくする有効な薬はありません。腹部大動脈瘤と診断された患者さんは、常に破裂による突然死の不安を抱えています。しかし、私たちはこの現状を変えるため、「栄養成分トリカプリン※1」に希望を見出し、『腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験:F-HAAAT試験』を開始いたしました(2024/5/31プレスリリース:「腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験を開始」)。
しかし、研究室の人員や資金はとても限られており、臨床試験を続けていくことや、研究の規模を大きくすることが難しい状況です。臨床試験を完遂し、試験の結果を公表し認められるためには、我々の力だけでは足りません。そこで、大阪大学医学部附属病院を主体としてクラウドファンディングを行うことにいたしました。腹部大動脈瘤の治療薬を作るための第1歩として、皆様一人ひとりのお力をお借りできませんか?
【クラウドファンディングプロジェクト概要】
タイトル:「腹部大動脈瘤の治療薬創出を目指して!
臨床研究の実施へ向けてご支援を」
URL :https://readyfor.jp/projects/F-HAAAT
目標金額:300万円
募集期間:2024年9月9日(月)9時~10月31日(木)23時
資金使途:F-HAAAT試験実施にあたり、
画像検査追加解析費用・臨床試験拡充費用などへと活用します。
形式 :寄付金控除型/All-or-Nothing方式
※All-or-Nothing方式は、期間内に集まった寄付総額が目標金額に到達した場合にのみ、実行者が寄付金を受け取れる仕組みです。なお、クラウドファンディング期間内に上記の目標金額を達成することができましたら、第二目標(500万円)、第三目標(800万円)を設定して、今後の研究の拡充へと活用いたします。本研究の完遂や、今後のより大規模な試験への発展が期待できます。
【腹部大動脈瘤とは】
腹部大動脈は通常直径20mm程度の管状の血管ですが、腹部大動脈瘤患者さんでは一部が直径30mm以上のコブ状に膨れていき、最終的に破裂する危険性があります。大きくなるペースは人により様々で、悪化を防ぐ薬はありません。直径が50mm*を超えると破裂を予防する手術を行うか検討されていますが、基本的にはそれ以下の小さい腹部大動脈瘤に対して予防的手術は行われません(*海外の臨床試験で、55mmより小さい腹部大動脈瘤に手術をしても予後が良くならないことが知られています。日本では欧米諸国に比して手術の死亡率が低く、50mmからの早期の手術が計画されます)。
腹部大動脈瘤は大きくなっても気づかず、破裂して初めて強い症状が出ることがあります。破裂時の死亡率は極めて高く、80%程度と考えられています。
【トリカプリンとは】
炭素(C)の数が10個の脂肪酸で構成される中性脂肪(TG)の一種で、C10-TGと表記されることもある。トリカプリンは母乳にも含まれている栄養成分で、中性脂肪の一種です。近畿大学農学部応用生命化学科 財満信宏教授ら(写真1)と大阪大学大学院医学系研究科 平野賢一特任教授(常勤)の研究チームは、このトリカプリンがラットの腹部大動脈瘤を縮小させる効果((腹部大動脈瘤の発症を抑制し、縮小させる成分を発見-ResOU(osaka-u.ac.jp))、写真2)を発見しました。
この画期的な発見を基に、大阪大学大学院医学系研究科・中性脂肪学共同研究講座 樺敬人特任研究員(常勤)、平野賢一特任教授(常勤)、同 循環器内科学講座、心臓血管外科学講座、放射線統合医学講座の研究グループは、【腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験:F-HAAAT試験】を開始しました(臨床研究等提出・公開システム(niph.go.jp))。
【臨床試験(F-HAAAT試験)の内容】
この試験では、10人の腹部大動脈瘤患者さんを対象に、1年間毎日、高純度のトリカプリンカプセルを服用して頂き、安全に服用できるか、ヒトでも腹部大動脈瘤が退縮するかを検証します。
本試験によりトリカプリンの腹部大動脈瘤に対する良い効果が観察されれば、現状では手術適応のサイズ(直径50mm以上)になるまで待つしかない腹部大動脈瘤に対する全く新しい治療法開発の第1歩となり得ます。(2024/5/31プレスリリース:「腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験を開始」)
【皆さまのご支援が必要です】
本研究チームは、阪大病院の大勢のスタッフに支えて頂いておりますが、メインで研究を進めていく当研究室の人員や資金はとても限られており、今後も臨床試験を続けていくことや、研究の規模を発展させていくことが難しい状況です。
皆様からのご支援があれば、今後の臨床試験に参加できる人数を増やす、規模を広げる、プラセボ(有効成分を含まない偽薬)を飲む方を試験に含めてデータの質を高める等ができます。また、血液の詳細な分析を行ったり、より専門的・先進的な画像解析を外部に委託して質の高いデータを取ることにより、試験の結果次第では創薬へのスピードを加速させ、腹部大動脈瘤で苦しむ患者さん達の治療により早く結び付けることができるかもしれません。他にもこの試験に関する論文投稿費用や研究用機材の調達、研究に関する情報発信にも資金が必要です。必要な金額300万円を目標にご寄付を募集させて頂きます。クラウドファンディング実施期間は2024年9月9日(月)~10月31日(木)の8週間です。
我々の力だけではこの研究を大きく育てることはできません。皆さまの一人一人のご寄付が、この研究に大きな進展をもたらし、腹部大動脈瘤で苦しむ多くの患者さんを救う力となる可能性があります。
【研究責任医師からのメッセージ】
樺敬人(かんばたかひと) 大阪大学医学部附属病院 循環器内科/中性脂肪学共同研究講座
腹部大動脈瘤は、患者さんにとっても医療従事者にとっても厄介な病気です。私は臨床で腹部大動脈瘤患者さんを診察する度に、内科医としてできることがあまりに少なくずっと歯がゆさを感じていました。偶然出会ったトリカプリンの動物実験で腹部大動脈瘤が縮んでいるのを見て、とても衝撃を受けたことを良く覚えています。これがヒトにも同じ効果があれば、患者さん達は破裂の恐怖から少しでも解放され安心できるのではないかと思い、この研究を計画しました。動物実験の結果とヒトの結果が異なることはよく経験されますが、この研究のモデルとなった動物実験の腹部大動脈瘤は、ヒト腹部大動脈瘤と組織学的によく似ていることも、効果を期待させる要因の1つです。この研究を達成・発展させるために、皆様のご支援を何卒宜しくお願い申し上げます。皆様のご支援が、この夢を実現する力になります。
【共同研究者からのメッセージ】
財満信宏(ざいまのぶひろ) 近畿大学農学部応用生命化学科 応用細胞生物学研究室 教授
これまで、腹部大動脈瘤の予防・治療法の確立を目指した基礎研究を行う中で、様々な成分の効果を研究してきましたが、トリカプリンは別格のレベルの効果が観察され、腹部大動脈瘤の進行抑制や治療効果が示されました。基礎研究と同じ結果がそのままヒトでも示されるかどうかはわかりませんが、この疾患で悩んでおられる方のご不安が少しでも和らぐような結果になることを祈っております。
潤沢に予算があるわけではない綱渡りのような状態の中で、様々な方々のご協力をいただいて研究をなんとか進めている状況です。今後の研究を安定的に進めるために、皆様のご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。
【研究を進めてきた学生からのメッセージ】
近畿大学農学部応用生命化学科 応用細胞生物学研究室 学生一同
トリカプリンが腹部大動脈瘤の進展抑制だけでなく、退縮効果を示すことを動物実験で観察した時には大きな衝撃と同時に、治療薬となりうる可能性に希望を持ちました。
基礎研究を行っている私たちは、実際に患者さんと接する機会はほぼありません。ただ、私たちにできることで患者の方々の不安を少しでも希望に変えたい、救いになりたいという思いをもって日々研究を続けています。研究を継続させるためには、皆様のご支援が不可欠です。ご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます(東原真代 代表執筆)。
【特記事項】
本臨床試験は、2024年5月17日(金)より大阪大学医学部附属病院 循環器内科で開始しました。
研究課題名 :"腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験"
英語名 :First-in-Human Abdominal Aortic Aneurysms trial
with Tricaprin(F-HAAAT)
臨床試験登録番号:jRCTs051240036
研究責任医師 :樺敬人
所属 :大阪大学医学部附属病院
循環器内科/大阪大学大学院医学系研究科
中性脂肪学共同研究講座
本研究は大阪大学医学部附属病院・臨床研究支援プロジェクトの一環として行われ、近畿大学 農学部応用生命化学科 財満信宏教授、本学医学系研究科 循環器内科学 坂田泰史教授、心臓血管外科 宮川繁教授、放射線統合医学講座 放射線医学教室 富山憲幸教授、医学部附属病院 未来医療開発部らと協力して進めて参ります。
【用語説明】
※1 トリカプリン
体内ですぐにエネルギー源として使用されるため、摂取しても血中の中性脂肪値や血糖値の悪化が起こりづらい。母乳やココナッツミルク、チーズ等に含まれるが、その含有量はごくわずかで腹部大動脈瘤に対して効果が期待できる量が入っていないため、動物実験にはトリカプリンを精製して純度を高めたものが使用された。
【参考URL】
(1)READYFOR腹部大動脈瘤の治療薬創出を目指して!クラウドファンディング
https://readyfor.jp/projects/F-HAAAT
(2)腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験を開始-ResOU(osaka-u.ac.jp)
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240531_2
(3)腹部大動脈瘤の発症を抑制し、縮小させる成分を発見-ResOU(osaka-u.ac.jp)
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230203_4
【本件に関する問い合わせ先】
<研究・プロジェクトに関すること>
樺敬人(かんばたかひと)
大阪大学医学部附属病院 循環器内科、大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座 特任研究員
(他、腹部大動脈瘤クラウドファンディングチームメンバー)
TEL(070)3102-5599(平日9:00-15:00)
E-mail:aaa.crowdfunding@gmail.com
【関連リンク】
農学部 応用生命化学科 教授 財満信宏(ザイマノブヒロ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/811-zaima-nobuhiro.html
医学部
https://www.kindai.ac.jp/medicine/
医学部附属病院
https://www.med.kindai.ac.jp/
農学部
https://www.kindai.ac.jp/agriculture/