国際研究チームとして海王星の新たな衛星を2つ発見! 海王星の衛星や太陽系の惑星形成の解明に貢献する研究成果

2024-03-25 14:00
海王星と衛星のイメージ図

近畿大学総合社会学部(大阪府東大阪市)総合社会学科社会・マスメディア系専攻准教授 ソフィア リカフィカ パトリックは、海王星の未知の衛星を探すために、カーネギー科学研究所、ハワイ大学、ノーザン・アリゾナ大学、アメリカ航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所から構成された国際研究チームに参加し、マゼラン望遠鏡とすばる望遠鏡を用いて、令和3年(2021年)から観測を行ってきました。この研究チームが、海王星の2つの衛星を発見したことを、令和6年(2024年)2月23日(金)に発表しました。
本研究成果は、海王星の衛星と太陽系の惑星が約46億年前からどのように形成され、進化してきたかを解明する際に、重要な手がかりとなると期待されます。

【本件のポイント】
●カーネギー科学研究所、ハワイ大学、ノーザン・アリゾナ大学、NASAジェット推進研究所との共同研究により、海王星の2つの衛星を新たに発見
●長期間かつ特殊な観測を行うことで、非常に暗い衛星の発見に成功
●本研究成果は、太陽系の惑星の形成を解明する際の重要な手がかりとなる

【本件の背景】
太陽系の4つの巨大惑星である木星、土星、天王星、海王星には、それぞれの周りを回る衛星が存在します。しかし、地球から遠い天王星や海王星は衛星の観測が困難なうえ、探査機での調査回数が過去一度しかなく、全ての衛星が発見されているわけではありません。これまでの長い観測の歴史のなかで、比較的大きな衛星はすでに発見されていますが、直径100km以下の小さな衛星は地球からは暗く見え辛いため、高性能な望遠鏡や周辺を飛行する探査機による観測が必要です。
海王星の衛星は、弘化3年(1846年)に発見された最も大きいトリトン(直径約2,700km)から、平成25年(2013年)に発見されたヒッポカンプ(直径約35km)まで、これまでに14個が見つかっていました。これらの衛星は2つのグループに分かれており、一つはトリトンを含む海王星に近い位置にある衛星、もう一つは海王星からかなり離れた位置にある衛星で、離れた衛星群は細長く傾いた軌道をとることが多いため、不規則衛星とも呼ばれています。

【本件の内容】
国際研究チームは、令和3年(2021年)からマゼラン望遠鏡とすばる望遠鏡を用いて海王星の衛星を観測し、令和6年(2024年)2月23日(金)に海王星の2つの新しい衛星を発見したと発表しました。今回の発見により、海王星の衛星は全16個となりました。2つの衛星は、直径が約23kmと約14km、海王星に対する公転周期は約9年と約27年で、「S/2002 N5」と「S/2021 N1」と仮称されました。非常に暗く、観測した画像を特別に処理することで発見に成功したもので、特に「S/2021 N1」は、これまで地上の望遠鏡で発見された最も暗い衛星です。
この2つの衛星は、遠くて細長い軌道を描いているため、不規則衛星に分類されます。これは、太陽系が誕生して間もない頃に、彗星や小惑星との衝突によって海王星の大きな原始衛星がバラバラになり、その破片が海王星の重力に捕らえられて衛星になったことを示唆しています。
木星、土星、天王星の周りにも類似した構造の不規則衛星が存在しており、こうした惑星から遠い位置にある衛星がどのようにして重力に捕らえられたかを理解することは、太陽系の巨大惑星の形成と進化過程について解明する鍵となります。

【研究の詳細】
「S/2002 N5」と「S/2021 N1」は、令和3年(2021年)9月にラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡(口径6.5m)と、国立天文台のすばる望遠鏡(口径8.2m)により最初に観測されました。令和3年(2021年)10月、令和4年(2022年)10~11月、令和5年(2023年)11月にすばる望遠鏡とマゼラン望遠鏡による2つの衛星の追跡観測が行われ、明るい方の「S/2002 N5」は海王星を周回していることが確認できました。暗い方の「S/2021 N1」は、さらにヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLT(口径8.2m)とジェミニ天文台の望遠鏡(口径8.1m)で追跡観測することで、海王星の回りの軌道を確認しました。
これらの衛星は非常に暗いため、発見のためには何日にもわたり3時間から4時間かけて5分間の露出を何十回も行う必要がありました。複数の露出を重ねることで、星や銀河は軌跡を描き、海王星と同じような動きをする天体は点光源として見え、背景ノイズの中から衛星が浮かび上がります。世界最大級の望遠鏡を使った時間集約的な観測技術により、これまでの海王星近辺の観測よりも深い画像を作り出し、衛星の発見に成功しました。
なお、海王星の衛星は、これまでギリシャ神話に登場する水の神々と水の生き物にちなんで名付けられており、「S/2002 N5」と「S/2021 N1」についても、今後、ギリシャ神話の海の女神ネレイド(ネーレーイス)にちなんで命名される予定です。

【研究者コメント】
ソフィア リカフィカ パトリック
所属  :近畿大学総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻
職位  :准教授
学位  :博士(学術)
コメント:太陽系にはまだ多くの謎が残されています。その中でも、海王星のような巨大惑星の成り立ちや、惑星の衛星系の誕生は、太陽系の起源や進化の過程を知る鍵となります。特に、近年発見された天王星と海王星の衛星は、まるでタイムカプセルのようです。衛星の特性を調べることで、天王星と海王星の誕生や進化の謎に迫ることが期待されています。これらの研究は、太陽系の歴史を理解するための重要な手掛かりとなるでしょう。太陽系の謎を解き明かすことは、私たちが住む星を含む宇宙に対する理解を深め、将来の宇宙探査にも役立ちます。

【関連リンク】
総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻 准教授 ソフィア リカフィカ パトリック(SOFIA LYKAWKA Patryk)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/275-sofia-lykawka-patryk.html

総合社会学部
https://www.kindai.ac.jp/sociology/

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