日本初!大豆イソフラボンによるチョウザメの全メス化に成功 安全な方法で効率的なキャビア生産をめざす

2022-03-04 14:00
新宮実験場で飼育研究しているコチョウザメ

近畿大学水産研究所新宮実験場(和歌山県新宮市)准教授 稻野 俊直(いねの としなお)の研究グループは、大豆イソフラボンを用いたチョウザメ(コチョウザメ)の全メス化に、日本で初めて成功しました。
本研究では、大豆イソフラボンを含んだ飼料を与えるだけでメス化できるため、実用化することができれば、チョウザメ養殖において課題となる、キャビアの生産効率やオスの利活用の解決につながることが期待されます。

【本件のポイント】
●大豆イソフラボンを用いたチョウザメのメス化に日本で初めて成功
●大豆イソフラボンの成分であるゲニステインを配合した飼料を与えることでチョウザメをメス化
●メス化によって、養殖でのキャビア生産の効率化が可能に

【本件の背景】
コチョウザメ(Acipenser ruthenus)は、東ヨーロッパからロシアに広く分布する小型のチョウザメです。チョウザメ科の中では最も早く成熟し、メスの体重が1kgに達する3歳頃にはキャビアとなる卵を持つようになります。魚体が小さいためキャビアも小粒ですが、「スターレット」と呼ばれるたいへん希少な品種として珍重され、ナッツの風味が特徴的です。
チョウザメは、メスとオスが1:1の割合で生まれるため、養殖におけるキャビアの生産効率の悪さが課題となっています。近畿大学水産研究所新宮実験場では、メスの単性養殖のための技術開発を目的として、令和3年(2021年)5月から、大豆イソフラボンを用いたコチョウザメのメス化研究を行ってきました。

【本件の内容】
ふ化後2カ月のコチョウザメ稚魚を25尾ずつ4グループに分け、大豆イソフラボンの一種であるゲニステインを含んだ配合飼料を180日間与え続けて飼育しました。その後、ゲニステインを含まない一般的な配合飼料で約70日間飼育し、1グループあたり8尾前後を解剖して生殖腺を調べると同時に、体表粘液検査によって各個体の遺伝的性を特定しました。

1μg/g マイクログラムパーグラム 1μgは百万分の1g

その結果、卵巣を持つ個体の割合は、ゲニステイン含有量1000µg/gのグループでは8尾中8尾(100%)、女性ホルモンのグループでは7尾中5尾(71%)でした。
また、遺伝的にはオスであるが卵巣を持っていた個体の割合は、ゲニステイン含有量10µg/gのグループでは4尾中0尾(0%)、100µg/gのグループでは5尾中0尾(0%)でしたが、1000µg/gのグループでは5尾中5尾(100%)、女性ホルモンのグループでは3尾中2尾(67%)でした。
大豆イソフラボンは女性ホルモンと同様の作用を持つ植物エストロゲンと呼ばれる成分の一つで、サプリメントとして市販されています。新宮実験場では、先行研究においてナマズを大豆イソフラボン溶解水に浸漬することでメス化に成功していますが、チョウザメに大豆イソフラボンを経口投与して全メス化に成功したのは日本で初めてです。
大豆イソフラボンを含む配合飼料を用いたチョウザメのメス化に成功したことで、キャビア生産の効率化によるキャビアの量産化が期待できます。今後は、大豆由来の飼料原料によるチョウザメのメス化の研究にも取り組みたいと考えています。

【関連リンク】
水産研究所 准教授 稻野 俊直(イネノ トシナオ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2074-ineno-toshinao.html

近畿大学水産研究所
https://www.flku.jp/

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