猿沢池や周辺環境を調査・保全する「ひとななプロジェクト」始動 4月15日に猿沢池で生物の採集調査を実施

2021-04-13 15:00
墨書きした古瓦を設置する様子(令和2年実施)

近畿大学農学部(奈良県奈良市)環境管理学科准教授の北川 忠生と興福寺は、奈良県(奈良公園室・奈良公園管理事務所)と連携して、昨年度から奈良公園にある猿沢池やその周辺の環境調査・保全に取り組んできました。今年度からは北川研究室の学生が主体となる任意団体「灯と奈菜(ひとなな)」(代表:北川 忠生)を立ち上げ、「ひとななプロジェクト」と称して活動を継続します。今回、プロジェクトの主な取り組みとして、令和3年(2021年)4月15日(木)に生物の採集調査を行い、捕獲魚類から在来種と外来種を選別して、外来種は近畿大学農学部が引き取り、在来種は4月17日(土)の興福寺放生会で池に戻します。また、水質改善を目的とした在来種の棲み処となる瓦魚礁の設置と池の美化活動(ゴミ拾い)も併せて行います。
なお、これらの取り組みは、奈良公園を管理する奈良県(奈良公園室、奈良公園事務所)及び、近畿大学と興福寺が連携・協力して行っています。

【本件のポイント】
●近畿大学生が「ひとななプロジェクト」を立ち上げ、奈良県及び興福寺と猿沢池の水質改善と池の美化活動に力を入れ、猿沢池の魅力向上に取り組む
●採集調査で捕獲した魚類の中から特定外来種を近畿大学が引き取り、今後の調査に生かす
●活動を通して、学生は生態系の保全に関する知識を深める

【本件の内容】
興福寺は毎年4月17日に伝統行事である放生会を猿沢池で行っていますが、昨年は興福寺と奈良県と連携して、猿沢池の現状を把握する調査を近畿大学農学部が実施しました。
その結果、猿沢池やその周辺の環境調査・保全について、持続可能な形で地域とともに取り組んでいく必要があると考え、今年度から学生主体の任意団体「灯と奈菜(ひとなな)」を立ち上げ、「ひとななプロジェクト」と称して引き続き猿沢池の生物調査、興福寺南円堂の瓦の再活用による魚礁の設置、猿沢池の美化活動などに取り組みます。
今回、「ひとななプロジェクト」の最初の活動として、令和3年(2021年)4月15日(木)に猿沢池で生物の採集調査を行い、捕獲魚類から在来種と外来種の選別をして、外来種は近畿大学で引き取り、在来種については、興福寺の協力・賛同を得て、4月17日(土)の興福寺放生会で猿沢池に放ちます。伝統行事と一体で行うことにより、生態系保全への関心を高め、猿沢池をより良い環境にしていく取り組みの輪が拡がることを期待しています。

【実施概要】
日 時:(1)採集調査・美化活動
     令和3年(2021年)4月15日(木)14:30~16:00
    (2)在来種の放生(興福寺放生会)
     令和3年(2021年)4月17日(土)13:30~14:00
場 所:猿沢池
    (奈良県奈良市、JR奈良駅から徒歩20分・近鉄奈良駅から徒歩5分)
主催者:近畿大学農学部環境管理学科 学生 8人(「灯と奈菜」メンバー)
    近畿大学農学部環境管理学科 准教授 北川 忠生
    奈良県まちづくり推進局奈良公園室
    法相宗大本山 興福寺

【今年度の「ひとななプロジェクト」の活動内容】
猿沢池は奈良公園を代表する景観のひとつであり、歴史的・文化的な意義をもつとともに、人が自然を身近に感じられる場所でもあります。この周辺の環境、景観について人と自然が関わり合いながら持続的に改善していく仕組みを構築することを目標としています。猿沢池は伝統的な儀式やイベントが行われる場でもあり、これらを自然に配慮する形に変えるだけでなく、自然が良くなる働きかけを組み合わせながら、多くの方々との関わりを持ちながら実施していくことでこの目標は達成されると考えています。環境改善を一時的な方法によるのではなく、まずは、猿沢池周辺の生き物たちの種類や数を増やすことで健全な生態系を再構築して、自然の自浄作用を高め、持続的、自律的な水質の浄化と景観の向上を目指していきます。多くの人を巻き込みながらの取り組みは、地域への愛着と観光地としての魅力向上にも貢献できると考えています。

(1)猿沢池の継続的な生物・水質調査
令和3年(2021年)4月以降、猿沢池において月1回程度の生物相調査および水質調査を行います。昨年設置した古瓦魚礁の魚類による利用状況についても調査します。

(2)猿沢池の外来生物の除去
昨年度の調査から、猿沢池にはコイやミシシッピアカミミガメ以外にも、環境省が定める特定外来生物の魚類「カダヤシ」が定着していることがわかりました。本年度はカダヤシの除去に取り組み、その方法についても調査、研究を行います。駆除のために捕獲したカダヤシは、近畿大学および協力施設において飼育し、行動や繁殖の調査・研究を行います(環境省に特定外来生物「カダヤシ」飼養許可申請中)。協力施設である橿原市昆虫館での飼育、展示も検討しています。

(3)猿沢池の環境改善
生物調査のために猿沢池内に立ち入る際に、池内のゴミの除去を行います。昨年、在来生物の住処づくり、水質改善を目的に興福寺の南円堂の古瓦17枚を再利用した魚礁を3基設置しましたが、本年度中に5基を追加設置します(奈良市教育委員会 現状変更許可取得済み)。このうち1基については、4月17日(土)の興福寺放生会に合わせて設置します。

(4)猿沢池の魅力向上
猿沢池に愛着を持っていただくため、魚礁をつくる古瓦に多くの方から願いを込めた墨書きをしていただきます。また、猿沢池に生息する生物や改善する取り組みについての情報発信を行うとともに、猿沢池の美化活動(ゴミ拾い)を通して地域と共に猿沢池の魅力向上に取り組んでいきます。橿原市昆虫館での猿沢池に関する特設展示も検討中です。

【昨年の取り組み実績】
水生生物調査を複数回実施し、比較的多くの在来の生物が生息していることが明らかとなりました。一方で、従来から知られていたコイやミシシッピアカミミガメなどの外来生物に加えて、カダヤシという特定外来生物の淡水魚が繁殖していることが明らかとなりました。
従来、伝統行事である興福寺放生会では、外来種となるキンギョが放生されていましたが、近畿大学の調査で得られた在来種のみを選別して再放流する形に改めることになり、実施のお手伝いをしました。
また、猿沢池の在来生物の生息、繁殖場所を創出するため、興福寺南円堂の建て替えで出た古瓦を利用した魚礁設置を提案し、3基の魚礁の設置を行いました。魚礁設置1週間後の調査において、魚礁に在来種が住み着いている様子がビデオ撮影により観察されたとともに、魚礁設置エリアには他のエリアのおよそ倍の個体数の在来生物が生息していることが確認されました。

【関連リンク】
農学部 環境管理学科 准教授 北川 忠生(キタガワ タダオ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/890-kitagawa-tadao.html

農学部
https://www.kindai.ac.jp/agriculture/

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