養殖用マダイ稚魚の選別にロボット技術を導入 自動選別装置の実証実験を実施

マダイ稚魚自動選別装置
マダイ稚魚自動選別装置

近畿大学水産研究所(和歌山県白浜町)、水産養殖種苗センター(同)、生物理工学部(和歌山県紀の川市)、先端技術総合研究所(和歌山県海南市)によるプロジェクトチームは、これまで人手に頼ってきた養殖現場における稚魚の選別作業にロボット技術を導入し、自動選別装置を開発しました。選別作業は経験と技術に加え、高い集中力が必要な作業であるため、作業負担の軽減につながり、技術継承の期間も大きく短縮できます。

【本件のポイント】
●養殖用稚魚の選別のため、画像解析とロボット技術を駆使した自動選別装置を開発
●養殖現場の作業効率化と作業者の負担軽減をめざし、実証実験を実施
●近畿大学の学内横断プロジェクトとして、拠点を超えた共同研究により開発

【本件の内容】
近畿大学水産研究所では、これまでに近大マグロをはじめとする多くの魚種の養殖研究・生産を行ってきました。中でもマダイの養殖研究は歴史が深く、1960年代から優良品種の開発に取り組み、研究成果である稚魚を養殖現場に供給することで、国内のマダイ養殖普及に貢献してきました。現在も、近畿大学水産養殖種苗センターでマダイの稚魚を生産し、大学発ベンチャーの株式会社アーマリン近大を通じて全国の養殖業者に販売しており、その数は年間約1,500万尾にも上ります。
稚魚を出荷する際は、専門作業員による選別作業を行い、形態異常や生育不良個体を取り除くなど、基準を満たす魚だけを選り分けます。この作業は検査項目が多岐にわたるため、専門作業員が手作業で行っており、経験と集中力が高度に要求されることから、自動化が長年の課題となっていました。
今回開発した自動選別装置は、ポンプによってくみ上げられたマダイの稚魚がベルトコンベアで通過する際に撮影した画像を解析することにより、あらかじめ設定した選別基準の許容範囲から外れた場合に、形態異常=除外すべき個体と判定し、ロボットアームに伝達して除去することができます。

【養殖用マダイ稚魚選別に関するこれまでの技術開発】
稚魚の選別作業は、いけすからポンプで吸い上げた稚魚をベルトコンベアに乗せ、作業員の前を通過する間に、生育不良の個体を目視で見分けて行います。これら一連の作業について、作業員の負担軽減や品質向上を目的に、10年以上前から自動化やIT技術の導入について検討を重ねてきました。
平成30年(2018年)にポンプ制御の自動化の取り組みを開始し、いけすから魚を吸い上げるポンプの流量自動調節装置を開発しました。それまでは、ポンプで吸い上げる水量が多すぎると、コンベアを通過する稚魚が多すぎて選別作業が追いつかず、一方吸い上げる流量が少ないと、含まれる稚魚の数が少なすぎて全体の作業効率が落ちることから、担当者が非常に重要な役割を担っていました。これを改善するため、豊田通商株式会社、日本マイクロソフト株式会社と共にシステム開発を行い、コンベアに供給する一定区間の魚影面積とその隙間の面積を画像解析し、ポンプの流量調節作業を自動化するソフトウエアを試作しました。現在もこの装置の実証実験を継続し、データの収集・分析を行うととともに養殖現場で運用しながらさらに精度を高めています。

【関連リンク】
近畿大学水産研究所
https://www.flku.jp/
生物理工学部
https://www.kindai.ac.jp/bost/


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