近畿大学 土壌の放射性セシウムを取り除く新技術を発明

近畿大学(大阪府東大阪市)薬学部准教授 石渡俊二らは、土壌から放射性セシウム※1を取り除く新しい技術を発明し、平成26年(2014年)9月22日(月)特許の申請を行いました。本発明では環境負荷が小さいクエン酸アンモニウム塩※2とイオン液体※3を用いるため、従来の環境負荷が大きいシュウ酸※4を用いる場合と比較すると、地球環境に優しい除染活動を行えるようになることが期待されます。なお今回の研究は、近畿大学が東日本大震災の復興支援として取り組んでいる「"オール近大"川俣町復興支援プロジェクト」の一環として行われました。


【本件のポイント】

●これまでより環境に優しい、異なる2種類の液体を順番に使用することで、高い放射性セシウムの回収率を実現
●近畿大学が推進してきた「"オール近大"川俣町復興支援プロジェクト」として、地球環境に優 しい除染活動を目指すことが可能に


【研究の概要】

これまでは土壌中の放射性セシウムを回収する方法として、シュウ酸を用いる方法が検討されていましたが、その酸性の強さなどから環境への負荷が懸念され、実用化にあたり問題視されていました。今回、近畿大学薬学部准教授の石渡らのグループは、放射性セシウムが吸着された土壌に対し、使用する液体や処理の順序を変えて実験を行った結果、最初にクエン酸アンモニウム塩で処理、続いてイオン液体にて処理を行うと、高い放射性セシウムの回収率を示すことを発見しました。


【今後の展望】

今回の発明を応用することで、従来型のシュウ酸によるものと比較し、地球に優しい方法にて汚染土壌の放射性セシウムを取り除けるようになることが期待されます。また、東日本大震災直後から近畿大学が全学を上げて推進している「"オール近大"川俣町復興支援プロジェクト」に関し、川俣町を中心とした除染作業に活用することを目指します。


【参考資料】

●用語説明
※1
放射性セシウム:東京電力福島第1原子力発電所の事故の際に放出された放射性同位元素。
半減期約2年のセシウム134と約30年のセシウム137がある。セシウムは土壌中の成分と強く結合する性質があり除染が難しいため、土壌中のセシウムを除去する方法が求められている。
※2
クエン酸アンモニウム塩:クエン酸とアンモニアが結合したもの。クエン酸は柑橘類などに含まれる酸味の成分の一つで、サプリメントや加工食品にも利用されている。アンモニアは土壌中で変化して、植物が成長する際に必要な窒素源となる。
※3
イオン液体:幅広い温度範囲で液体の状態で存在する塩(えん)。塩は酸由来の陰イオンと塩基由来の陽イオンが結合したもので、通常は固体のものが多い。
※4
シュウ酸:強い酸性を示す有機酸であり、還元性も併せ持つ。毒物及び劇物取締法で「劇物」、労働安全衛生法で「名称等を通知すべき危険物及び有害物」に指定されている。

●研究手法
土壌1gと溶液10mlを30℃下で24時間回転させた後、遠心分離機にて遠心し、上澄みを回収して放射性セシウム量を定量。連続して2回目の処理を行う場合は、沈殿している土壌に液体を加えて、先と同様な条件でセシウムを回収している。処理前の土壌に含まれる放射性セシウム量から、処理後の溶液に含まれる放射性セシウム量を引くことによって回収率を算出している。

●"オール近大"川俣町復興支援プロジェクトとは
近畿大学が、13学部48学科を擁する総合大学としての研究力を生かし、総力を挙げて東日本大震災に伴う原発事故により一部が避難指示区域に指定された川俣町の早期復興を支援するために立ち上げた学部横断プロジェクト。
地場農産業の活性化や教育・文化の育成などの「復興支援」と、除染や健康管理など被災からの「再生支援」の二面から、町の方の意見を取り入れながらサポートしている。

放射性セシウムの回収率(%)
放射性セシウムの回収率(%)

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