脳の発達の仕組みから考える 英語への「親しみ」の重要性 ~「知的好奇心」から子どもの自主性を育む~

東北大学加齢医学研究所 瀧 靖之教授のインタビュー記事公開

グローバル化や小学校の英語教育などの影響により、乳幼児期から英語に親しませたいと考える親御さんは以前よりも増えてきました。脳の発達から考えると、小さいころから英語に触れさせることにはどのような意義があるのでしょうか。親はどのようなサポートができるのでしょうか。そこで今回は、幅広い年齢層の脳画像解析を行ってきた瀧教授(東北大学加齢医学研究所)にお話を伺い、「脳の発達」という視点から考える子どもの外国語学習について、公式サイトにて記事を公開しました。

東北大学加齢医学研究所 瀧教授

瀧 靖之教授

●感情と記憶には強い相関があるため、2歳~3歳の時期に遊びの一つとして英語に繰り返し触れると、英語への親しみが習得効果を高める可能性がある。
●8歳~10歳は効率的に英語を習得できる時期ではあるが、英語に親しみをもたせるという観点では、学校の授業で「嫌い」、「苦手」という感情が芽生える前から英語に触れる体験をすることが大切。
●学習効果を高めるために親ができることは、子どもの好奇心から生まれる主体性を大切にすること、そして、英語が将来の役に立つというポジティブなメッセージを伝えること。
●英語に触れる体験が短期間であっても、親しみが生まれていれば、将来、学習への抵抗感が少なくなる。

元々医師として脳の画像診断を行い、認知症予防などの分野に関わっていた瀧教授。様々な研究によって高齢者の方々にとって知的好奇心が重要であることがわかってきました。その知的好奇心は小さいころから伸ばしたほうがより幸せな人生を送ることができると考えるようになり、子どもの脳発達に関する研究により力を入れるようになったと言います。

脳の発達の観点から英語に「親しみ」をもたせるには

小さいころから英語などの外国語に触れさせたいと考える親の多くは、「親しみをもってほしい」、「好きになってほしい」という想いがありますが、こうした観点からすると、どれくらいの年齢から英語に触れさせ始めるとよいのでしょうか。瀧教授にお話しいただきました。

「小学校の授業は、やはり『勉強』になりますし、勉強はテストなどで評価されるものです。ですから、脳科学的な要因で、というよりも、このような社会的要因によって、「嫌い」、「苦手」という感情が生まれてしまうところはあると思います。英語に対する親しみを高めるという観点からは、そのようなネガティブな感情が芽生える前の未就学児のころから、『英語はコミュニケーションのツール』ということを伝えられる体験を少しずつさせることは大事なのではないかと思っています。」と瀧教授。

「だいたい2〜3歳くらいから自分と他者の区別がついてきて、外の世界にあるに興味をもつようになります。このような時期に、アウトドア体験や英語など、いろいろなことを遊びとして体験させてあげると、子どもの興味・関心はどんどん広がっていくと思います。心理学的には『単純接触効果』と呼ばれるのですが、ある物事や人、場面に触れる機会が多いと、その対象にだんだんと興味が湧いてきて親しみをもつようになります。」と話します。さらに、「脳科学の分野では、『好きになるとよく覚えられる』ということが言われています。」とのこと。
 
瀧教授によると、言語に関わる脳領域が発達のピークを迎える8歳〜10歳は効率的に英語を習得しやすい時期。ただし、「英語に親しみをもたせるという観点からすると、8歳〜10歳より早い時期から英語に触れ始めるのは良いと思いますし、あくまで「効率」という観点でのお話です。脳の可塑性、脳が変化する力は、何歳になっても保たれます。その意味では、30歳からでも70歳からでも第二言語や第三言語を習得することは可能です。ただし、加齢とともに、脳の可塑性は低くなっていくので、あるレベルに達するまでの学習時間がより多く必要となります。」と言っています。

親は、子どもの好奇心から生まれる主体性とポジティブなメッセージを大切に

はじめは「楽しんでほしい」という気持ちで子どもに英語に触れさせ始めたのにもかかわらず、だんだんと「〜しなさい」と勉強のように考えるようになってしまう親御さんもいるようです。子どもに興味をもたせるため、子どもが自主的に学習するようになるために親ができることについて伺いました。

「何かを学習するときには、主体性が高いほうが習得しやすいということはよく言われています。学習の主体性というのは、好奇心の高さが関係します。好奇心があるから、自分から『やってみたい』と思うわけですね。
親から『やりなさい』と言われると、子どもの学習の主体性は下がり、ネガティブな気持ちにもつながって記憶しにくくなる、ということは言えると思います。」と瀧教授。
また、「将来に役立つ、ということを伝えることが重要だと思います。『受験のため』という観点もありますが、英語をやらないと受験に受からないよ、というようなネガティブなメッセージではなく、『将来の人生のため』という観点でポジティブなメッセージが良いですね。いまの時代は、どんな仕事に就いても英語を使うことは避けて通れません。趣味の海外旅行であっても、現地の人と現地のことばで話せることはお互いの気持ちを通い合わせるためにとても重要です。」と言っています。

短期間の体験であっても「親しみ」が将来の学習に役立つ

また、一度興味をもったものを途中でやめた場合でも、脳の発達にとって良い影響は残ると瀧教授は言います。「英語に対する親しみができている以上は、また『やろう』と思ったときに、ポジティブな感情を伴って記憶に入りやすいと思います。まったくゼロの状態から始めるよりも、圧倒的にハードルが低いです。脳の可塑性もありますから、また英語に触れたときにネットワークも変化します。」とのこと。
さらに瀧教授は、「親しみをもつという観点からは、たとえ半年でも3カ月でもやったということが素晴らしいです。人間は、やはり初めて知る新規の情報は拒むということが起きる場合がありますが、元々知っている情報を聞いたときは、親しみがあるので頭に入ってきやすいです。ですから、子どものころにほんの少しずつでも豊かな経験をしておくと、中学生や高校生、大学生、大人になってもう一度それに触れたときに抵抗感が下がりますので、ものすごく素晴らしいことだと思います。」と言っています。

子どものころに芽生えた「英語への親しみ」は生涯の財産になる

瀧教授によると、脳科学的に、何かを学習するうえで「親しみ」や「楽しい」といったポジティブな感情がとても重要であることがわかっています。英語に触れ始めるべき年齢については、言語学的にも脳科学的にも絶対的な「正解」はありません。私たちは何歳であっても新しい物事に好奇心をもつことができますし、脳を環境に合わせて変化させることができるからです。脳発達の特徴は、効率的な英語教育を考えるうえで一つのヒントになりますが、「〜歳までに必ず〜をしなければいけない」と焦って子どもに何かを強制するのではなく、英語を含む豊かな体験を親子で楽しむ時期の目安、積極的に英語に触れる環境を用意してあげる時期の目安として考えるようにしたいものです。
英語を習得するためには、多くのインプットやアウトプットの機会が必要ですし、とても長い時間がかかるため、どのような英語教育が効果的なのかと途方に暮れてしまう親御さんは多いかもしれません。しかし、たとえ数年間、数カ月間、数日間であっても、英語に楽しく触れたことによる「親しみ」が生涯の財産となる、という考え方は、大きな希望の光となるのではないでしょうか。

詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。

<医師・医学博士 東北大学加齢医学研究所 瀧靖之 教授>インタビュー〜

前編:https://bit.ly/3ItYaAZ   後編:https://bit.ly/3fVarCr  

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(World Family's Institute Of Bilingual Science)
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設   立:2016年10 月  URL:https://bilingualscience.com/

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