連合調べ 理想の社会とは? 「長時間労働で高収入」より 「ワーク・ライフ・バランス」
~日本の社会と労働組合に関する調査2017~
日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津 里季生、組織人員:686万人)は、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け、働く者、生活者の立場から政策・制度について提言を行っています。今回は、働く人が持つ生活意識や社会の理想像を把握するため、今年4月21日~4月26日の6日間、「日本の社会と労働組合に関する調査」を、インターネットリサーチにより実施し、全国の15歳~64歳の働く人(自営業・フリーランス、役員・経営者を除く)1,036名の有効サンプルを集計しました。(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)
[調査結果]
現在の生活満足度と将来に対する不安
◆現在の生活満足度 「満足」54% 「不満」46%、満足度が最も低い世代は40代
◆将来に不安を「感じる」約8割、現在の生活満足度が低い層ほど不安を感じる傾向が顕著
まず、全回答者(1,036名)に、現在の生活に満足しているかどうかを聞いたところ、「とても満足」が8.9%、「やや満足」が45.2%で、合計した『満足(計)』は54.1%、「やや不満」が30.6%、「とても不満」が15.3%で、合計した『不満(計)』は45.9%になりました。現在の生活に対して“不満”という人は4割半と少なくないようです。
男女別に『満足(計)』をみると、男性では50.8%、女性では57.0%となり、女性のほうが現在の生活に満足している人が多いようです。また、世代別に『満足(計)』をみると、10代58.0%、20代56.4%、30代52.8%、40代49.0%と40代までは世代が上がるにつれ低くなる傾向がみられましたが、50代53.0%、60代60.6%と、一転して50代以上では世代が上がるにつれ高くなる傾向となりました。
次に、将来に不安を感じることがあるかどうかを聞いたところ、「非常に感じる」が38.2%、「やや感じる」が38.8%で、合計した『感じる(計)』は77.0%になりました。将来に不安を感じることがある人が大多数のようです。
男女別にみると、『感じる(計)』は、男性73.6%、女性80.1%となり、女性のほうが将来に不安を感じていることがわかりました。また、現在の生活満足度別にみると、満足度が下がるにつれ不安を感じる人の割合が高くなる傾向が顕著にあらわれました。
◆将来の不安はどこから?
「老後の生活」が最多、10代・20代の半数以上は「仕事の有無」と回答
◆将来の日本に関する予想
「3年後、日本は今より良くなっていない」4人に3人が悲観的
将来についての不安は、どこから来ているのでしょうか。
将来に不安を感じることがあると答えた人(798名)に、自身を不安にさせているものを聞いたところ、「老後の生活」が最も多く64.2%、次いで、「預貯金など資産の状況」が56.0%、「家計のやりくり」が52.4%、「自身の健康状態」が46.0%、「税金や社会保険料の負担」が43.7%、「仕事の有無」が41.5%と続きました。老後の生活や、家計の状況、雇用が不安の源泉になっている人が多いようです。
世代別にみると、「老後の生活」は世代が上がるにつれ高くなり、60代では82.0%と8割を超えました。他方、「仕事の有無」は若い世代ほど高く、10代では58.8%、20代では52.8%と20代以下の若者では半数以上となりました。
回答者の多くが自身の将来に不安を感じていますが、将来の日本に対する認識はどうでしょうか。
全回答者(1,036名)に、将来の日本(1年後、3年後、5年後、10年後、30年後)について聞いたところ、いずれにおいても、『良くなっている(計)』(「非常に良くなっている」と「ある程度良くなっている」の合計)は2割台にとどまり、7割以上が悲観的な見方であることがわかりました。特に、「全く良くなっていない」と回答した人の割合は、予想が3年後、5年後、10年後、30年後と未来になるほど高まっています。
理想とする社会のイメージ
◆理想の社会とは?
「長時間労働で高収入」より「ワーク・ライフ・バランス」、「活発に転職」より「定年まで同じ会社」が理想
成長よりも格差が小さいことを重視する人や低負担・低福祉より高負担・高福祉を志向する人が多い傾向
8割強が「ハイリスク・ハイリターンな社会」より「ローリスク・ローリターンな社会」を理想の社会として選択
それでは、理想の社会について、どのようなイメージが持たれているのでしょうか。
全回答者(1,036名)に、相対する社会のイメージを提示し、どちらが理想に近いか聞いたところ、労働環境に関しては、「収入はほどほどでも、仕事と生活が両立できる社会」(82.5%)や「定年まで同じ会社で働ける社会」(65.7%)、「労働者や消費者などの意見が尊重される社会」(81.8%)を理想とする回答が多くなりました。ワーク・ライフ・バランス重視、安定した雇用を志向する人が多いようです。
また、成長と格差、社会保障については、「緩やかな成長でも格差の小さい社会」(75.9%)や「税金などの負担は大きいが、社会保障が充実した社会」(64.5%)、「ローリスク・ローリターンな社会」(81.8%)が理想とする社会のイメージに近いと回答した人が多くなっています。
◆日本の安定的な成長・発展のために重要なこと
1位「安定した雇用」2位「労働環境の改善」
「安定した雇用」「医療・介護制度の充実」や「子育て・教育支援」が重要 女性に顕著
次に、全回答者(1,036名)に、日本が安定的に成長や発展をしていくために重要だと思うことを聞いたところ、「安定した雇用」が最も多く69.5%、次いで、「労働環境の改善」が52.3%、「医療や介護制度の充実」が41.3%、「子育てや教育に対する支援」が38.3%、「失敗してもやり直しがきく環境」が35.8%で続きました。日本の成長・発展のベースは安心して働ける環境と社会保障の充実だと考えている人が多いようです。
男女別にみると、「安定した雇用」(男性61.6%、女性76.6%)のほか、「医療や介護制度の充実」(男性33.1%、女性48.6%)や「子育てや教育に対する支援」(男性29.7%、女性46.1%)で、女性のほうが重要だと考える傾向が目立っています。
世代別にみると、「医療や介護制度の充実」は世代が上がるにつれ高くなり、50代で52.9%、60代では59.0%と50代以上の世代では半数以上の人が日本の成長・発展のために重要なこととして挙げました。
職場について
◆「現在の勤め先は働きがいを感じない」2割半、契約・嘱託・派遣社員では3割強
◆働きがいを左右すること
「仕事の内容」「賃金の水準」「労働時間・残業」「人間関係」「仕事に対する評価」
ここまで、現在の生活や将来の日本、理想の社会についての質問を行ってきましたが、自身の職場に関する質問も行いました。
まず、全回答者(1,036名)に、現在の勤め先は、働きがいのある職場だと思うか聞いたところ、「思う」が9.4%、「どちらかといえば思う」が31.3%で、合計した『思う(計)』は40.7%、「どちらともいえない」が34.3%となり、「どちらかといえば思わない」が14.3%、「思わない」が10.8%で、合計した『思わない(計)』は25.1%となりました。現在の勤め先で、働きがいを感じていない人は4人に1人と少なくないことがわかりました。
雇用形態別にみると、正社員・正職員(『思う(計)』43.4%、『思わない(計)』26.7%)とパート・アルバイト(『思う(計)』39.2%、『思わない(計)』19.1%)では働きがいを感じている人の割合のほうが高くなりましたが、契約・嘱託・派遣社員では、『思う(計)』が30.1%、『思わない(計)』が31.7%で、働きがいを感じている人と感じていない人の割合が拮抗する結果となりました。
それでは、どのようなことが働きがいに影響を与えているのでしょうか。
全回答者(1,036名)に、現在の勤め先の働きがいを評価するにあたって考慮したことを聞き、働きがい評価で「どちらともいえない」と回答した人を除いて集計したところ、「仕事の内容」が最も多く54.5%、次いで、「賃金の水準」が44.5%、「労働時間・残業」が36.6%、「職場の人間関係」が35.2%、「仕事に対する評価」が27.3%で続きました。
◆職場環境の実態 「有給休暇取得が困難」は31%、「パワハラやセクハラ」は15%、「残業代未払い」は16%が経験
◆男性は仕事の悩みをひとりで抱え込みがち?
3人に1人は「相談相手がいない」と回答
次に、全回答者(1,036名)に、残業代の未払いやパワハラ・セクハラなどの項目を提示し、職場で経験したことがあるものを聞いたところ、最も多かったのは「有給休暇がなかなかとれない」で30.6%でした。また、「仕事や給料が約束した内容と違う」が18.3%、「残業代が支払われない」が15.6%、「職場でパワハラやセクハラがある」が15.0%となり、仕事や給料が契約時と違ったことがあった人や、残業代の未払いを経験した人、職場でパワハラ・セクハラがあった人もいることが明らかになりました。
雇用形態別にみると、正社員・正職員では「有給休暇がなかなかとれない」(36.6%)のほか、「残業代が支払われない」(19.8%)でも他の雇用形態より高く、5人に1人の割合となりました。
また、仕事で悩みがあるときに、誰に相談するか聞いたところ、「同僚」が最も多く33.5%となり、「家族」が25.8%、「上司」と「職場外の友人」が22.3%で続きました。他方、「相談できる人はいない」が25.2%となりました。仕事の悩みを相談できる人がいないという人は4人に1人と少なくないようです。
男女別にみると、「同僚」(男性29.2%、女性37.3%)や「家族」(男性19.2%、女性31.6%)、「職場外の友人」(男性17.4%、女性26.7%)に相談するという人は、男性より女性のほうが高くなりました。また、「相談できる人はいない」は男性33.3%、女性17.9%と、男性のほうが高くなりました。
職場の人手不足について
◆「仕事をする中で人手不足を感じる」6割強、「これから職場で人手不足が深刻化すると思う」7割
◆人手不足対策として必要だと思うこと
1位「賃金や労働条件の引き上げ」2位「業務効率化」3位「業務量調整」
最近、様々な業界で人手不足の問題がクローズアップされています。そこで、全回答者(1,036名)に、職場の人手不足の状況や人手不足対策について聞きました。
まず、全回答者(1,036名)に、職場の人手不足の状況を聞いたところ、【仕事をする中で人手不足を実感することはあるか】では、「強く感じる」が20.3%、「ある程度感じる」が43.0%で、合計した『感じる(計)』は63.3%になり、【これから、職場で人手不足が深刻化すると思うか】では、「思う」が24.1%、「どちらかといえば思う」が45.2%で、合計した『思う(計)』は69.3%になりました。働いている中で人手不足を感じている人や今後人手不足が深刻化すると予想する人は多いようです。
次に、人手不足の対策として考えられている事柄を提示し、どの程度必要だと思うか聞いたところ、「とても必要」と「ある程度は必要」を合計した『必要(計)』が最も高くなったのは「賃金や労働条件の引き上げ」で77.8%となり、「業務の効率化」が77.0%、「業務量の調整」が71.8%で続いています。どの項目も回答率が高く、あらゆる対策が必要だと考えられているようです。
◆人手不足が理由のサービスや料金の見直しについてどう思う?
最多回答は「値上げもサービスの見直しもやむを得ない」
◆ネット通販の配送料は誰が負担するべき? 「消費者が負担すべき」が最多で約4割
昨今、運送業界をはじめとして、人手不足を理由としたサービスの見直しや料金値上げが話題となっています。全回答者(1,036名)に、この問題についてどう思うか聞いたところ、「料金の値上げもサービスの見直しも、やむを得ない」が最も多く29.4%、次いで、「料金は値上げしてもいいが、サービスは維持してほしい」が22.0%で続き、サービス見直しや料金の値上げを容認する人が多いことが明らかになりました。
また、ネット通販でかかる配送料は、誰が負担するべきだと思うか聞いたところ、最も多かったのは「消費者」で37.8%、「出店・出品者」が31.9%、「サイト運営者」が30.3%となりました。消費者が負担すべきという人が最も多いものの、出店・出品者やサイト運営者が負担するべきだと思っている人も少なくないようです。
労働組合について
◆これまでに労働組合の活動に参加したことが「ある」 約2割
◆労働組合は必要か 「必要」が5割半、「不要」の1割を大きく上回る
働く人が労働組合にどのようなことを期待しているのかを把握するための質問も行いました。
まず、全回答者(1,036名)に、勤め先に労働組合はあるか聞いたところ、「ある」が36.7%、「ない」が35.3%、「わからない」が27.9%となりました。
次に、全回答者(1,036名)に、これまでに労働組合の活動に参加したことはあるか聞いたところ、「ある」が18.1%、「ない」が72.2%、「わからない」が9.7%でした。
また、全回答者(1,036名)に、労働組合は必要だと思うか聞いたところ、「必要だ」が19.4%、「どちらかといえば必要だ」が34.1%で、合計した『必要(計)』は53.5%、「どちらともいえない」が36.0%となり、「どちらかといえば不要だ」が6.3%、「不要だ」が4.2%で、合計した『不要(計)』は10.5%となりました。労働組合を必要だと感じている人が多数であることがわかりました。
◆労働組合の活動で期待すること
1位「賃金の引き上げ」2位「労働時間の短縮」3位「非正規労働者の処遇改善」
それでは、労働組合には、どのようなことが期待されているのでしょうか。
労働組合を必要だと思っていると回答した人(554名)に、労働組合の活動で期待することを聞いたところ、「賃金の引き上げ」が最も多く68.2%、次いで、「労働時間の短縮(残業削減、年休取得向上)」が39.4%、「非正規雇用で働く人の処遇改善」が31.6%、「人手不足問題への対応」が28.2%で続きました。
雇用形態別にみると、契約・嘱託・派遣社員とパート・アルバイトでは「非正規雇用で働く人の処遇改善」がそれぞれ48.5%、51.9%と5割前後になりました。
◆連合の認知率 6割半、10代は3割、20代は約6割、30代は6割半、40代と50代は7割強、60代は8割強
◆連合への期待
1位「賃金・労働条件の改善」2位「非正規労働者の処遇改善」3位「中小企業で働く人の支援」
さらに、日本労働組合総連合会(略称:連合)についても質問を行いました。
まず、全回答者(1,036名)に、日本労働組合総連合会(連合)を知っているか聞いたところ、「活動の内容を含め知っている」が13.0%、「名前くらいは知っている」が53.4%で、合計した『認知(計)』は66.4%となり、「知らない」が33.6%でした。
男女別に認知率(『認知(計)』)をみると、男性73.9%、女性59.8%と男性のほうが高くなりました。
世代別に認知率をみると、世代が上がるにつれ高くなり、10代では30.0%でしたが、20代で57.2%と6割近くとなり、30代では64.5%と6割半、40代では70.8%、50代では73.4%と7割以上、60代では83.6%と8割を超えました。
次に、全回答者(1,036名)に、「連合」の主な活動について、どのようなことを期待するか聞いたところ、「賃金・労働条件の改善」が最も多く51.6%、次いで、「非正規雇用で働く人の処遇改善」が31.9%、「中小企業で働く人の支援」が27.7%、「雇用・労働にかかわる法制度の改善」が27.4%、「社会保障(医療・介護・年金・子育てなど)の改革」が22.0%で続きました。