南部鉄器を日本の文化として持続的に製造するために鉄の溶解にバイオリサイクル燃料「バイオコークス」の導入をめざす
1848年創業の南部鉄器工房である株式会社及富(岩手県奥州市)は、近畿大学(大阪府東大阪市)の技術協力のもと、南部鉄器の製造工程で鋳鉄の溶解に燃料として使用している石炭コークス※ の一部を、近畿大学開発のバイオリサイクル燃料「バイオコークス」に置き換える試験を計画しています。環境に配慮し、CO2を削減することでSDGs達成にも貢献しながら、岩手県の伝統的工芸品であり日本が誇る文化である南部鉄器を持続的に後世に残すことをめざして取り組んでいます。
令和4年(2022年)4月15日(金)、株式会社及富の工房において、燃料の一部をバイオコークスに置き換えて鉄を溶解し、南部鉄器を製造する実証試験を実施します。
※ コークス:石炭を高温で乾溜させた燃料
【本件のポイント】
●南部鉄器の製造工程で鋳鉄を溶かす際にバイオリサイクル燃料「バイオコークス」の使用を検討
●環境に配慮し、CO2削減でSDGs達成にも貢献しながら、南部鉄器を持続的に後世に残すことをめざす
●南部鉄器の工房でバイオコークスを使用した鋳造の実証試験を実施
【本件の内容】
南部鉄器の製造工程では、鋳鉄をコシキ炉(小規模キュポラ)で溶かす燃料として、石炭を高温で乾溜させた「コークス」を用いています。南部鉄器業界においても、環境への配慮、SDGs達成への貢献が課題となっており、CO2排出削減に取り組む必要性を感じていますが、電気炉など設備の入れ替えにはコストがかかり、なかなか実現できない現状があります。
株式会社及富では、バイオコークスのキュポラ溶解の経験があり、岩手大学名誉教授で水沢鋳物工業協同組合技術アドバイザーでもある堀江 皓氏に監修・指導を依頼し、この課題に取り組んできました。今回、近畿大学が開発した「バイオコークス」を石炭コークスの代替燃料として導入するためのコシキ炉実証試験を検討しています。
バイオコークスは、カーボンニュートラルな次世代エネルギーとして注目されており、今回の実証試験では、「リンゴの絞りかす」と「樹皮」を1:9の割合で原料として日本砿研株式会社(青森県黒石市)が製造したものを使用します。コシキ炉に入れる燃料の10%をバイオコークスに置き換え、溶かした鋳鉄で急須の蓋を鋳造する予定です。バイオコークスを使用することで、CO2排出量の削減と硫黄の減少による不良低減効果のほか、鋳鉄の高強度化、薄肉軽量化も期待されます。
【実証実験 実施概要】
日 時:令和4年(2022年)4月15日(金)12:50~15:00
場 所:株式会社及富(奥州市水沢羽田町宝生57)
監修・指導 :岩手大学名誉教授・水沢鋳物工業協同組合技術アドバイザー
堀江 皓 氏
サポート協力:近畿大学バイオコークス研究所、株式会社ナニワ炉機研究所
【南部鉄器】
南部鉄器の歴史は、平安時代、近江の国(滋賀県)より時の藤原氏が鋳物師を招いたのが始まりとされ、おおよそ950年前にさかのぼります。江戸時代には伊達藩の保護も受け、昭和34年(1959年)、盛岡と奥州水沢とが南部鉄器のブランドを確立しました。その後、岩手県の伝統的工芸品に指定され、現在に至ります。
【バイオコークス】
リンゴ搾りかす、樹皮、稲わら、もみがら、間伐林、お茶かす、コーヒーかすなどのバイオマス(再生可能な生物由来の有機性資源。化石燃料を除く)を原料として製造する固形燃料。近畿大学バイオコークス研究所所長の井田 民男が、平成17年(2005年)に開発に成功しました。光合成を行う植物資源等を原料にしているため、CO2排出量がゼロカウントとなるカーボンニュートラルな次世代エネルギーとして期待されています。
【株式会社及富】
所在地 :岩手県奥州市水沢羽田町宝生57
代表者 :代表取締役社長 及川 一郎
事業内容:南部鉄器製造販売
創 業:嘉永元年(1848年)
社員数 :20名
URL :https://oitomi.jp/
【関連リンク】
バイオコークス研究所 教授 井田 民男(イダ タミオ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/933-ida-tamio.html
バイオコークス研究所
https://www.kindai.ac.jp/bio-coke/