SVPジャパン カーボンニュートラルの取り組みについて
地球の未来を守るためには、CO2排出量の削減が第一
SDGsの取り組みは、企業側にとって目標達成の一助になるだけではなく、企業価値や新たなビジネスを生み出すチャンスでもあり、長期的な経営を目指す上で、今や必要不可欠なものだ。そして、17項目あるSDGsの内、目標7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)に関するビジネス市場規模は、特に大きく最大800兆円(注1)にまで上る。本レポートでは、それらの市場に関わり、気象対策や環境問題活動について語る上で最も欠かせない、「カーボンニュートラル」について考察する。
参考:注1)SVPインサイトVol. 12(2022年10月27日)https://www.svpjapan.com/insight/download/report_20221027_01.pdf
■今、世界が一つになるとき
SDGsは、国や生活環境によって重要視する項目が異なるが、カーボンニュートラルの達成に向けた取り組みは今世界中で力を入れている。その背景に、2015年にパリで開催したCOP21で採択された「パリ協定」がある。これは、地球の平均気温上昇を産業革命以前と比較し、2℃より十分に低い水準を保ち、1.5℃以内に抑える努力をする、という世界共通の目標だ。我が国でも、2020年10月、菅前首相が2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする、 「2050年カーボンニュートラル宣言」をして以来、注目が一層高まっている。
■カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、直訳すると炭素を中立の状態にするという意味だ。つまり、温室効果ガスの排出量をできる限り削減しながら、植林などによる吸収量を差し引いて、実質的にゼロにすること。人類によって排出されたCO2を含む温室効果ガスの排出量は、日本では年間12億トン(注2)を超えていると言う。これらは地球温暖化や気候変動の原因ともされていて、SDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」そして、目標13「気候変動に具体的な対策を」などに関わりをもつ。
参考:注2)国の取組、脱炭素ポータル、環境省(2022年10月) https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/road-to-carbon-neutral/
■地球の未来を守るためには、CO2排出量の削減が第一
カーボンニュートラルと言えど、1人が「呼吸」で吐き出すCO2は年間320kgで、スギ23本分の年間吸収量が必要だ(注3)。また、一世帯の「生活」によるCO2排出量は年間6500kgで、この吸収量はスギ460本に匹敵するらしい(注4)。このように、 吸収にはコストと時間もかかることから、CO2排出量の削減が最前提にあると言える。また、温室効果ガスが排出される石油、天然ガス、ウラン、石炭などの化石燃料は将来的に枯渇する見込みだ。資源がなくなれば、人々の生活に困難が待ち受ける。このこともあり、今から化石燃料に代わるエネルギー資源を確保しなければならないのだ。
参考:注3・4)森林は二酸化炭素をどれくらい吸収しますか?、岡山県(2022年6月27)https://www.pref.okayama.jp/page/419837.html
参照:地球全体のCO₂の経年変化/気象庁 (2022年10月27日)https://www.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html
■企業が与える影響 (取り組むべき理由)
カーボンニュートラルの動きは、順調のように思えて、実際はまだ達成には程遠い。温室効果ガスの中で、約90%(注5)と高い割合を占めるのは CO2 である。よって、どれだけCO2を削減できるかが、カーボンニュートラル目標達成へのカギである。右図は、そのCO2の日本の部門別排出量を示している。ご覧の通り、企業活動による割合が圧倒的に高い。だからこそ、企業による抜本的な経営構造の改革に期待が募る。そして、企業が環境問題に取り組むことは、企業価値向上にもつながり、ESG観点からしても重要である。これは大企業に限った話ではなく、日本企業のうち99%(注6)以上を占める中小企業にも対応を求められる。サプライチェーン全体での取り組みが必要とされ、むしろ取り組まない方がリスクである。ビジネスチャンスと捉え、いち早く実行する企業は、この先も顧客・取引先から選ばれ続けるだろう。
参考:注5)日本の温室効果ガスの排出量の内訳、全国地球温暖化防止活動推進センター
https://www.jccca.org/global-warming/knowleadge05#
注6)中小企業・小規模事業者の数、中小企業庁(2018年11月30日)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chu_kigyocnt/2018/181130chukigyocnt.html
参照:日本の部門別のCO2排出量(2019 年度)/資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/ab out/whitepaper/2021/html/1-2- 3.html
■脱炭素経営の取り組み
脱炭素経営とは、温室効果ガスの排出量削減など脱炭素を考慮した経営戦略のことを言う。前段の通り、企業はこの「脱炭素経営」を進めていく必要がある。例えば、温室効果ガスを排出しない太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった、自然由来な再生可能エネルギーの導入を増やすこと。また、運輸部門ではガソリン車から電気自動車、燃料電池自動車の導入をすること。他には、使用する電気を極力減らす省エネルギーを図ることが挙げられる。
企業の脱炭素経営の取り組みは、世界基準である以下のイニシアティブによって状況を把握できる。
参考:脱炭素経営の広がり、脱炭素ポータル 環境省(2021年7月16日) https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20210716-topic-07.html
2022年現在、日本は上記3つ全てにおいて、世界ランキング3位以内に入っており、実は取り組みとしてはトップレベルである。しかし、日本はCO2排出量世界ランキング5位(注7)であり、まずは2030年の目標達成に向けて、さらに取り組みを加速しなければならない。次頁では、目標達成をするために、具体的に何をするべきなのか、業界部門別の行動シナリオについて言及する。
参考:注7)二酸化炭素排出量の多い国は?、全国地球温暖化防止活動推進センターhttps://www.jccca.org/faq/15921#
■現状把握 / 日本の課題と強み
日本は、再生エネルギー発電設備が容易ではないことを理由に、他の先進国と比べ、化石燃料への依存度が高い。また、人口過密な大都市を抱え、電気自動車(EV)や水素自動車の普及に要する、充電ステーションのインフラ設備の課題が存在。さらに、地理的な制約と沿岸の土地所有権をめぐる規制の欠如などにより風力発電や太陽光発電の設備整備にも限界がある。一方で、日本のエネルギー効率は米国や他の産業国と比べ高水準を維持し、一定のGDP生産に要するエネルギー消費量は少ない。また、鉄道インフラが整っており自動車を減らすには好都合である。建築物に関しては建て替えの回転率や改修頻度が高く、断熱構造の改善を行いやすい。このように、課題と強みを理解した上で、出来ることから行動に落とし込んでいきたい。
■脱炭素目標の達成に向けた取り組み
日本におけるCO2の排出量を部門別で見た場合、エネルギー転換部門と産業部門、運輸部門の順で大きくなっており、カーボンニュートラルに向けては、排出量の大半を占めているエネルギー転換部門における取り組みが最も重要であり、政府や内閣もそれについて方針を示している。日本が掲げる目標を達成するため、以下のような取り組みが推進されることになる。
参考:2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討、資源エネルギー庁、2020年11月17日、https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/033/033_004.pdfに基づく当社作成
上記を実行するには、取り組みのベースづくりのために、政府が直ちにCO2貯蓄地の調査及び決定をし、技術開発とインフラ整備の財務的支援をする必要がある。加えて、補助金交付、炭素税の導入、特別投資の施策を進めるなど、資金調達の支援も必要だ。日本がカーボンニュートラルを実現するには、莫大な投資と政府と連携しながら企業(各業界部門の活動)の変革、そして個人の行動変容を促す必要があるが、これらを乗り越えることで、グリーンテクノロジー部門で世界を牽引していくことにもなるだろう。
次回のSVPインサイトでは、大テーマである「SDGs」に話を戻し、消費者に焦点を当てて考察をする。
■ 終わりに
SVPジャパンでは、会員様向けサービスを通じて、日本国内のみならず、世界各国の経済指標や市場データ、事業環境や企業戦略、研究開発動向などをカスタマイズされた報告書にてご提供させていただいております。SDGsやカーボンニュートラルについての情報収集例もございます。是非ご活用ください。
■SVPジャパンについて
「成功に導くビジネスの知を、もっと身近に」をミッションとした、会員制ビジネス情報提供サービスプロバイダー。
会員企業には、ビジネス公開情報に基づくクイックリサーチ、カスタムメイド型プロジェクトリサーチを提供。日本は1974年に創業し、現在世界40カ国に渡るネットワークのメンバーとして、大手企業を中心とした会員企業の意思決定を情報力でサポートしています。
2021年には事業継承のため、経営体制を一新し、ガバナンスの強化、情報提供サービスの拡大、そして進化することを目指し、第二の創業をスタートしています。
《会社概要》
社名: 株式会社SVPジャパン
代表取締役: 橋本 雅
所在地: 東京都中央区日本橋蛎殻町1-38-9 宮前ビル2F
設立年月日: 1974年7月1日
事業内容: 会員制のビジネス情報提供サービス
URL: https://www.svpjapan.com/
《問い合わせ先》
株式会社SVPジャパン デジタルマーケティング部
mail : info@svpjapan.com