配合飼料のみで養成した近大マグロを8月から出荷 持続可能な水産業の確立に向けた第一歩

近畿大学水産研究所(本部:和歌山県白浜町)は、日清丸紅飼料株式会社(東京都中央区)の協力のもと、完全養殖クロマグロ「近大マグロ」の餌をサバなどの生餌から配合飼料に切り替えました。令和元年(2019年)8月から、配合飼料のみで養成した近大マグロの出荷を開始します。
今後さらに、配合飼料の主成分を魚粉から植物性たんぱく質などに置き換え、配合飼料の魚粉依存率を低減する研究を進め、よりサステナブル(持続可能)な水産業の確立をめざして取り組みます。

【本件のポイント】
●完全養殖クロマグロ「近大マグロ」の餌をサバなどの生餌から配合飼料に切り替え
●クロマグロに適した配合飼料を開発し、食いつきの悪さや成長の遅延という課題を克服
●今後は配合飼料の原料を植物性たんぱく質に置き換え、持続可能な水産業の確立をめざす

【本件の背景】
国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」に「海の豊かさを守ろう」という項目があるように、海洋資源を保全しつつ持続可能な形で利用することが世界的な課題となっています。
近畿大学の研究成果である「近大マグロ」は世界初の完全養殖クロマグロであり、天然資源に頼らない「完全養殖」は、持続可能な水産業を推進するうえで欠かせない技術です。しかしこれまで、マグロ養殖ではサバなどの生餌が主な餌となっており、持続可能な水産業を確立するためには、植物性たんぱく質を主成分とした配合飼料による養殖が求められています。

【本件の内容】
近畿大学水産研究所では、まだ完全養殖に成功する前の昭和60年(1985年)からクロマグロを配合飼料で養成する研究に取り組んできました。完全養殖に成功して人工種苗を扱うようになっても配合飼料の研究は続けていましたが、配合飼料で育てたクロマグロは生餌で育てたものと比較して餌の食いつきが悪く、成長が遅れるという課題がありました。
そこで、日清丸紅飼料株式会社と共同で、配合飼料にアミノ酸等を添加してクロマグロの好む味にしたり、原料を酵素処理魚粉にすることによってクロマグロ稚魚が消化しやすくしたり、さまざまな工夫によって課題を解決しました。平成27年(2015年)からは、養殖現場で生餌と配合飼料の比較飼育を行い、成長に差がないという結果が出ました。また、養殖魚専門料理店「近畿大学水産研究所」のお客様を対象にアンケート調査を実施し、その味等についても高い評価を得たことから、令和元年(2019年)8月から配合飼料で育てた近大マグロを出荷することを決定しました。

【配合飼料化の意義】
養殖魚の餌を生餌から配合飼料に切り替えることは、天然資源に頼ることのない持続可能な水産業を確立する上で意義のあることです。それ以外にも、栄養価調整や輸送・保管コストの面でもメリットが大きく、配合飼料化によって生産の効率化や品質の安定化が期待されます。
近畿大学水産研究所は、日清丸紅飼料株式会社の協力のもと、クロマグロに適した配合飼料の開発を進めてきました。
現在使用している配合飼料は、仔稚魚用の「鮪心(まごころ)」とヨコワ以降に与える「ジャイアントツナ」の2種類で、どちらも魚粉やビタミン剤が主な原料となっています。今後は、植物性たんぱく質などの利用によって魚粉の依存率を低減する研究をすすめ、さらに持続可能な水産業の確立をめざします。

【近畿大学水産研究所での配合飼料研究】
1970年 クロマグロ養殖研究開始(水産庁プロジェクト「マグロ類養殖技術開発試験」参画)
1985年 配合飼料(オレゴンペレット)による天然ヨコワの飼育試験実施
1992年 配合飼料(ソフトドライペレット)による天然ヨコワの養成試験実施
2002年 世界初のクロマグロ完全養殖達成
2008年 完全養殖クロマグロ中間育成用配合飼料の実用化試験実施
2013年 大阪梅田、東京銀座に養殖魚専門料理店「近畿大学水産研究所」出店
2015年 養殖現場で配合飼料と生餌による比較飼育開始
2018年 比較試験の結果良好につき、本格的に配合飼料給餌に切り替える
2019年 配合飼料給餌クロマグロ(奄美大島2016年産)を出荷開始

試食アンケートの結果(令和元年(2019年)5月16日~18日、養殖魚専門料理店「近畿大学水産研究所」のお客様248名を対象に実施)
試食アンケートの結果(令和元年(2019年)5月16日~18日、養殖魚専門料理店「近畿大学水産研究所」のお客様248名を対象に実施)
配合飼料「ジャイアントツナ」
配合飼料「ジャイアントツナ」

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